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タクマの決心

社会科見学?

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 しばらく案内されるまま付いて行くと、視線の先にアークスの姿が見えた。

「タクマ様。お疲れ様です」
「ああ、アークスもお疲れ。俺たちは何も分からないまま案内されているんだが、アークスは聞いているか?」

 主人であるタクマに明かしていない以上、アークスも聞いては居ないだろうが一応確認する。

「いえ、私も聞いておりません。ただ、危険ではないとだけ聞いておりますので同席させて頂くのを条件に同意したのです」
「なるほど。じゃあ、アークスも合流した事ですしお聞きしてもいいですか」

 アークスの答えを聞いたタクマはそう言ってノートンへと顔を向ける。

「そうだな。ただ私にも答えられることは多くないのだ。見てもらう物は触ったり調べたりしても被害は出たこともない」
「?調べられたのなら俺に見てくれと言う真意がわからないのですが」

 調べられるものならば自分に見ろと言うのは理解できないというタクマに、ノートンはため息を吐いて答える。

「そうだな。だが我々が調べたり触れたりすることが出来たのはあくまでも箱のみなのだ。中身に関しては一切分からなかった。なぜなら開けることもできなければ壊すこともできないからな」
「……嫌な予感しかしないのですが……」

 要は中身の分からない物をタクマに調べてもらおうと考えているのだ。王国はかつて邪神のアイテムによって危機を味わっている。不用意に弄り回す位なら、強大な力を持っているタクマに依頼しようとなったらしい。ただ、箱自体には危険性はないらしく、これまで宝物庫で死蔵していたそうだ。
 そんなことを話していると城の地下へと到着する。タクマが邪神のアイテムを見つけた保管室とは全く違い、厳重管理が必要な国宝と呼ばれるアイテムを仕舞う場所だそうだ。

「さて、ここがパミル城の最深部、宝物庫だ」

 誇らしげに紹介された目の前には装飾が施された大きな扉がある。両側には兵たちが控えとても厳重に護られている。

(マスター。この扉には魔法が付与されているようです。恐らく入室を制限する魔導具なのでしょう)
(まあ国宝を保管する所を人だけで護るのはリスクが高いだろうし当然だよな)

 ナビはすぐに扉を調べ、タクマもそれは想像が出来ていた。このファンタジーな世界で重要な物を護る為にはこうした魔導具も必要だ。
 扉の前でそんな念話をしていると、夕夏がタクマの袖を引いて耳元で囁く。

「ねえタクマ?あなたがここに連れてこられるのはなんとなく分かるのだけど、私がここに居ても良いのかしら…」

 タクマが夕夏の方に振り向くと、言葉を返す前にノートンが代わりに答える。

「夕夏様、ご心配なく。タクマ殿の奥様ならば問題ありません。それにタクマ殿が同行を認めたという事は問題ないという事なのでしょう?」
「そうですね。ノートン様がなにも言わないという事は王国側は同行に関して認めていると思いました。それに城には危険が無いと分かっていますから」

 夕夏もタクマといる以上、危険の心配はしていない。大口真神からもタクマといれば危険の心配はないと言ってくれているからだ。国宝を保管する宝物庫に一般人である自分が居て良いのかだけが不安だったのだが、王国側は全く気にしていないようだった。

「そ、それなら良いのですけど……」
「せっかくの機会です。宝物庫の見学など例がありませんから、是非楽しんでください」

 まるで社会科見学して行ってというような感じでノートンが言うので、夕夏は苦笑いを浮かべながら頷いた。

「さて早速中へ参りましょう」

 そう言ってノートンは扉の目の前まで歩みを進める。その間タクマ達は少し引いた場所で待つ。

「タクマ様、夕夏様。何もないとは思いますが、私が前に出ます」

 アークスは万が一のことを考えて二人の前に立つ。タクマに危険が及ぶ可能性はないのは分かっているが、臣下としての当然の動きだ。

 アークスの背中越しにノートンを見ると、懐から何かアイテムを取り出すのが見えた。

「ん?あれはコインか?」

 取り出したのは銀色のコインに見える。しかしコインには薄らと魔力を帯びているので、それがキーになるのだろうと想像できた。
 ノートンがコインを扉に差し込んだ瞬間。大きな扉に施されている装飾が青く光り出した。

「すごい綺麗……」
「そうだな……なんというか幻想的だな」

 幻想的な光を放つ扉は自動的にゆっくりと天井方向に上がり宝物庫が開け放たれる。そしてノートンはタクマ達の方に向き直り口を開いた。

「ようこそパミル王国の宝物へ!どうぞ中へどうぞ」

 言われるがままタクマ達は宝物庫の中へと入る。そして中は宝物庫の名の通り様々な宝飾品や書物、武器などが整然と並べられていた。そんな光景に圧倒されるタクマ達をノートンは更に奥へと案内していく。

「ん?なんかあそこだけ浮いているな……」

 奥に来ると一際異彩を放つ物があるのに気が付いた。ここまで目に入った如何にも貴重品という保管品の数々とは違い、大きな空間にポツンと置かれる何の変哲もない木箱が一つ。まるで奉納されるかのように置かれていたのだ。

「あれがタクマ殿に見て欲しいものだ。誰にも開けられない、壊せない木箱だ」
 
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