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タクマの決心
少しだけ手助け
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プロックたち三人は個別の報酬を受け取り後、そのまま宿へと送って貰えるという事なので少し安心しているようだ。人生経験の豊富な彼らでも長時間城に滞在するのは避けたかったと苦笑いを浮かべながら去っていった。三人を見送ったタクマはパミルと共に執務室へと移動する。
執務室へと到着しソファーへ座ると、使用人は流れるようにお茶を用意してくれた。
「ご苦労。ここからはタクマ殿とゆっくり話したい。外してくれるか」
パミルは使用人たちに退室を命じ人払いをする。使用人たちが部屋を出ると、パミルは深いため息を吐いてからゆっくりと口を開く。
「……さて……こうして二人で話す機会を貰ったのは他でもない。トリスたちの事だ」
タクマとナビの予想通り、パミルの話と言うのは湖畔で預かっている王妃たちの事だった。
「タクマ殿には迷惑をかけている。それでその……四人がどうしているか聞かせてくれないだろうか」
基本的にパミルは家族をとても愛している。妻たちがいない生活に相当参っているようだ。
家族を気にする言葉に、タクマはパミルが本当に反省しているのが分かった。
「そうですね。皆さん家ではゆったりとした時間を過ごしていますね」
その言葉にパミルは少し表情を和らげた。タクマは四人の様子を細かに説明しながら湖畔にいる夕夏へ念話を送る。
(タクマ?どうしたの?今って謁見中じゃなかった?)
(ああ、とりあえず謁見自体は終わったんだが、パミル様と話すことになったんだ。トリス様達が家出したのが随分と堪えているみたいだ)
タクマの言葉に夕夏はすぐに察する。
(そろそろ皆さんに帰るようにって言った方が良いかしら?トリスさんとスージーさんを説得した方が良い?)
(さすが夕夏。パミル様も今回ばかりは相当に反省している様に感じるし、それをしっかりと行動にも反映させている様に感じるんだ。だからちょっとだけ手助けをしようかと思って。ウチとしてはいくらでも居てくれて構わないが、意地を張り過ぎて溝が深まってしまったら困るしさ)
冷静になる為に離れるというのは良い判断だと思い受け入れたが、あまりに離れるのが長くなって気持ちが冷めてしまうのは最悪だからと言うと、夕夏も同意してくれた。
(そうね、分かったわ。今から二人と話してみるわね。ちょっと待ってて)
(ありがとう。慌てなくても良いから、ゆっくりと話をしてみてくれ。)
夕夏がすぐに動いてくれることに感謝して念話を終わらせらた。
「マギー様とショーン様はウチの子たちと元気に過ごしています。そしてトリス様とスージー様も夕夏やウチの女性陣と仲良くしています」
「そうか……四人はそちらの生活を楽しんでいるのだな……」
自分の妻や子供たちが元気にしている事を聞けたパミルは嬉しそうに頷く。しかしその表情には寂しさも滲んでいた。
「我は彼女たちをガッカリさせてしまった……今更我が何を言っても彼女たちの意思は変わらんのは分かっている。しかしその……」
自らが悪いという事を認めるパミルはそう言って俯く。
「……」
俯くパミルにタクマは黙って次の句を待つ。
「……戻ってきてほしいのだ。我がこれまで情けない姿ばかり見せていたのは認める。これからは夫として、父として頼られるような存在になってみせる。だから……」
「ちょっと待ってください。それは俺に言うべき事じゃないでしょう」
パミルの宣言を遮り、タクマは自分に向けて言う言葉ではないだろうと諭す。王を諭すなどあり得ない事なのは自由なタクマにも分かっている。しかし、パミルの意思表明は自分にするものではない。
「その意思表明は当事者同士でするべきです。俺に意志表明をしても仕方のない事だから。ただ、パミル様の変化は俺も感じています。だからその言葉が直接王妃様へと言ってください」
そうパミルに言いながら、自分たちのいるところへと近づく複数の気配を感じていた。その気配が到着する時間を計算しつつ続ける。
「あなたが変わるつもりなのは俺にも分かります。そして家族を大切に思っている事も。だから……その言葉は家族に向けて表明するべきです」
「タクマ殿……そうだな…‥確かにその通りだ。だが妻たちは……」
タクマの言いたい事はしっかりとパミルにも分かってもらえた。しかしこの場に王妃たちは居ない。やり切れない気持ちも抱くパミルにタクマは笑いかける。
「確かにこの場にいないから言えないですよね。だから、ちょっとだけ手助けを。しっかりと話し合ってくださいね」
タクマの言葉と共に執務室にノックの音が響く。
「パミル様。王妃様がタクマ様の奥様と共にお戻りになりました。入室の許可を頂きたく」
「!!入ってくれ!」
その言葉に驚愕の表情に変わったパミルはすぐに部屋へ入るよう大きな声を上げる。
ゆっくりと執務室の扉が開くと、そこには王妃二人と夕夏の姿があった。
「トリス……スージー……」
王妃二人に同行した夕夏はタクマの所に移動し三人の様子を窺う。互いに何か気まずそうにしているが、タクマと夕夏は静観する。ここからは三人が話し合うべき事なのだから。
執務室へと到着しソファーへ座ると、使用人は流れるようにお茶を用意してくれた。
「ご苦労。ここからはタクマ殿とゆっくり話したい。外してくれるか」
パミルは使用人たちに退室を命じ人払いをする。使用人たちが部屋を出ると、パミルは深いため息を吐いてからゆっくりと口を開く。
「……さて……こうして二人で話す機会を貰ったのは他でもない。トリスたちの事だ」
タクマとナビの予想通り、パミルの話と言うのは湖畔で預かっている王妃たちの事だった。
「タクマ殿には迷惑をかけている。それでその……四人がどうしているか聞かせてくれないだろうか」
基本的にパミルは家族をとても愛している。妻たちがいない生活に相当参っているようだ。
家族を気にする言葉に、タクマはパミルが本当に反省しているのが分かった。
「そうですね。皆さん家ではゆったりとした時間を過ごしていますね」
その言葉にパミルは少し表情を和らげた。タクマは四人の様子を細かに説明しながら湖畔にいる夕夏へ念話を送る。
(タクマ?どうしたの?今って謁見中じゃなかった?)
(ああ、とりあえず謁見自体は終わったんだが、パミル様と話すことになったんだ。トリス様達が家出したのが随分と堪えているみたいだ)
タクマの言葉に夕夏はすぐに察する。
(そろそろ皆さんに帰るようにって言った方が良いかしら?トリスさんとスージーさんを説得した方が良い?)
(さすが夕夏。パミル様も今回ばかりは相当に反省している様に感じるし、それをしっかりと行動にも反映させている様に感じるんだ。だからちょっとだけ手助けをしようかと思って。ウチとしてはいくらでも居てくれて構わないが、意地を張り過ぎて溝が深まってしまったら困るしさ)
冷静になる為に離れるというのは良い判断だと思い受け入れたが、あまりに離れるのが長くなって気持ちが冷めてしまうのは最悪だからと言うと、夕夏も同意してくれた。
(そうね、分かったわ。今から二人と話してみるわね。ちょっと待ってて)
(ありがとう。慌てなくても良いから、ゆっくりと話をしてみてくれ。)
夕夏がすぐに動いてくれることに感謝して念話を終わらせらた。
「マギー様とショーン様はウチの子たちと元気に過ごしています。そしてトリス様とスージー様も夕夏やウチの女性陣と仲良くしています」
「そうか……四人はそちらの生活を楽しんでいるのだな……」
自分の妻や子供たちが元気にしている事を聞けたパミルは嬉しそうに頷く。しかしその表情には寂しさも滲んでいた。
「我は彼女たちをガッカリさせてしまった……今更我が何を言っても彼女たちの意思は変わらんのは分かっている。しかしその……」
自らが悪いという事を認めるパミルはそう言って俯く。
「……」
俯くパミルにタクマは黙って次の句を待つ。
「……戻ってきてほしいのだ。我がこれまで情けない姿ばかり見せていたのは認める。これからは夫として、父として頼られるような存在になってみせる。だから……」
「ちょっと待ってください。それは俺に言うべき事じゃないでしょう」
パミルの宣言を遮り、タクマは自分に向けて言う言葉ではないだろうと諭す。王を諭すなどあり得ない事なのは自由なタクマにも分かっている。しかし、パミルの意思表明は自分にするものではない。
「その意思表明は当事者同士でするべきです。俺に意志表明をしても仕方のない事だから。ただ、パミル様の変化は俺も感じています。だからその言葉が直接王妃様へと言ってください」
そうパミルに言いながら、自分たちのいるところへと近づく複数の気配を感じていた。その気配が到着する時間を計算しつつ続ける。
「あなたが変わるつもりなのは俺にも分かります。そして家族を大切に思っている事も。だから……その言葉は家族に向けて表明するべきです」
「タクマ殿……そうだな…‥確かにその通りだ。だが妻たちは……」
タクマの言いたい事はしっかりとパミルにも分かってもらえた。しかしこの場に王妃たちは居ない。やり切れない気持ちも抱くパミルにタクマは笑いかける。
「確かにこの場にいないから言えないですよね。だから、ちょっとだけ手助けを。しっかりと話し合ってくださいね」
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「パミル様。王妃様がタクマ様の奥様と共にお戻りになりました。入室の許可を頂きたく」
「!!入ってくれ!」
その言葉に驚愕の表情に変わったパミルはすぐに部屋へ入るよう大きな声を上げる。
ゆっくりと執務室の扉が開くと、そこには王妃二人と夕夏の姿があった。
「トリス……スージー……」
王妃二人に同行した夕夏はタクマの所に移動し三人の様子を窺う。互いに何か気まずそうにしているが、タクマと夕夏は静観する。ここからは三人が話し合うべき事なのだから。
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