親友の代わり?

あいうえお

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冷たい彼氏

caramel

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ある日遥が恋人との行為の話をしてきた。
遥の事情を知っているのは俺と梓音だけだし、かと言って梓音にそんな行為の話をする訳にも行かず、俺に話を聞けと上から言ってきたのだ。

「大人の人ってやっぱり素敵でさ、俺みたいなガキが相手にされるなんて…って思ったりもするんだけど。挿れただけでイッちゃうのが俺で感じてくれてるみたいで可愛くてさ。」

「うへー、親友の性事情とかききたくねー…。てか、お前って挿れるほうだったんだ」

「案外梓音もそうかもよ?」

その遥の言葉に思わず「違う」と言いそうになるも面倒なことになるのは分かっていたので口を噤んだ。梓音のあの乱れた姿を想像するだけで体が熱くなるが、すぐに頭の中から消して誤魔化すように話を続けた。

「てか、そんなに嬉しいもんなんだ」

確かに梓音との行為中は好きな人を抱いているのもあって快感はあった。可愛らしい梓音を見て興奮もした。しかし、遥が言ってるのとはとは何か違う感じがして疑問に思った。

「行為中はやっぱり素直になるのかもね、好きだって普段言わないのに凄く言ってくれるし、俺も実際心の声とか漏れちゃうし」

その言葉を聞いて梓音との情事を思い出すが、そこでふと俺は彼に1度も好きだと言われたことがないことに気づいた。

「…もし、言われなかったらどうする?」

「なに?もうそんな事まで考えてんの?そうだなー…俺とこういうとこすら似てるなら梓音は好きな人にはちゃんと言葉で伝えるんじゃない?」

その言葉にガツンと頭を殴られたような感覚に襲われた。
つまりこいつの話的に、梓音は俺のこと好きでは無いのだろうか。
いや、本当は分かっていた。
無理矢理襲って恋人にされた梓音が俺を好きになるわけないと。

それでも期待してしまうのだ。
偶に頭をそっと撫でてくれたり、本人が俺を求めるように抱きしめたりする事があるから。

それならどうせならもはや俺といれば気持ちいい事ができると思ってもらうことにした。

それからは遥が恋人と会うために居ない時にはすぐ様梓音を家に呼んで激しく抱いた。
どれだけ抱いても梓音は俺に好きの一言すら言わず、もはや俺が家に呼ぶ度に顔が引き攣るようになった。

バックから挿れる度に一番最初の行為を思い出して興奮した。そしてそれ以上に、正面から梓音を抱く勇気がなかった。
これで嫌な表情をしていたら、最初の時のように辛そうな顔をされたら立ち直れないからだ。

何度も何度も行為に及んでも、梓音が俺を好きな素振りは見えなかったし、それどころかその行為が終わればすぐに適当な理由をつけて帰るようになってしまった。
それが俺には辛くて、そして苛立ちを隠せずにいた。

遥の惚気話を聞く度に俺と梓音は本当の恋人じゃないみたいで、イライラした。あいつは悪気はないんだろうけど、デート前に言われる惚気話は俺の怒りを刺激していた。



ずっとこのままの関係になるかもしれないと感じていたある日、いきなりガラリと状況が変わったのだ。

遥が前触れもなく訪ねてきた。昔から鍵はかけておらず不用心なこの家にズカズカと入ってくる遥だったが、今回はまずい。

まだ、梓音が部屋にいるのだから。


「おい、そっちには行くな」

「いいじゃん別に、何怒ってんだよ~…って、は?梓音?お前、その格好…」

驚く遥の瞳には白い肌をむき出しにしてベットにいる梓音。
梓音と遥がお互いを見つめ、驚いたまま動かなくなった。
遥の瞳に梓音のいやらしい体が目に入ったと思うと不快で仕方なかった。


「ちっ、おい、来い。」

すぐ様梓音から目線を外すようにと腕を引っ張れば遥は反抗する。

「はっ?!いや、待てよ、って痛った!ちょっと!?」

遥を連れていく際、梓音見ればまだぽかんとしている様子だった。なんでそんな油断した可愛い顔を遥にまで見せてんだよ。と思い、理不尽にも睨んでしまう。

違う部屋に移動して直ぐに遥が口を開いた。

「っお前もしかして」

「一旦待って。説明するから。梓音に服持ってく。」

そう言えば遥は梓音のためと1度口を閉じた。
とりあえず直ぐにでも説明しなければ梓音を連れて部屋に立てこもるぐらいの勢いの遥を待たせる訳には行かないと準備した服を梓音の居る部屋にさっと投げ込んだ。

「俺遥と話してくるから」

──それまでここにいろよ
そんな風に告げ、俺は遥の元へと戻った。


「で?無理矢理やったわけ?」

「いや、ちげーよ…」

「じゃあなんであんな梓音は疲れきったようになってんだよ」

その言葉にムッときて遂、声をあらあげてしまう。

「だから無理矢理したわけじゃねーんだって!」

そう、最初の行為以外はちゃんと梓音の同意の元事に及んでいたのだから無理矢理ではない…はずだ。
そんな俺を信じていないのか、遥は「ホントかよ」と見透かしたようにそう言った。

「だから違うって言ってんだろ?別に遥が考えてるような事はしてねぇよ」

「いや、お前ならやりかねねーよ!!何年親友やって来たと思ってんの?」

苛立ちが抑えられない俺に問い詰めるように声を荒あげる遥。

「付き合ってんだよ。俺達ちゃんと。」

「は?いつから?なんで言わないわけ?」

「最初は無理矢理襲って、それから付き合ったから…それ知ったらお前怒んだろ」

「当たり前だろ!梓音は俺とにて…というより俺より繊細なんだぞ…。とりあえず梓音も呼んでお前は謝れ。」

「そろそろ着替えもしただろうし」とそう言って俺を無視して梓音の元へと向かう遥。こうなったら土下座なりなんなりして、梓音にこれからも付き合って欲しいと言うしかない。
遥がいる前でやるのは癪だがこの際それも言ってられない。

そして梓音の居るはず部屋に行けばそこには誰もいなかった。
きっと遥にバレたから帰ってしまったのだ。
迂闊な事をしたと反省してももう遅い。連絡を取ろうとしても電話にもメッセージにも反応はなかった。

「梓音俺のにも連絡返してこない。」

ショックを受けている遥を無視して俺は酷く後悔をしていた。
俺の事を好きじゃなかった上に遥にこの関係がバレたからきっと逃げたのだ。

「お前このままだと別れることになるぞ」

「嫌だ、別れたくない」

遥の不吉なその言葉に俺の不安はどんどん強くなっていく。
とりあえず遥に落ち着かせられて、明日学校に来た際に話し合おうと言われた。

俺もそれで納得した。

しかし、梓音は学校を休み、冬休みに入ってしまったのだった。
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