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第4章 魔法学校実技試験
第37話 専属護衛は吸血姫?
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「……はむっ」
「えーと……美味しい?」
「……はむはむぅ?」
「そ、そう。それは良かったね」
たぶん、「まぁまぁ?」と言ったグリムを見ながら、困惑する私。
ここでは話辛いというグリムに連れられ、向かった場所は密談の定番である屋上とかではなく、まさかの学食。
しかも本人はサンドイッチを爆食いし始めた上に……
「あの、貴女たち、授業は……」
「……はむむはむむ。はむむむはむ、はむむはむむはむむむむはむ」
「えっと、何を言ってるか分からな……」
「はひぃ! 家畜として、馬の如くどこへでも走らせていただきヒヒィィン!」
「分かりましヒヒィーン!」
「あ、あ~……」
色々な意味で、やりたい放題状態だ。
あの四つん這いで馬のマネしながら、学食担当の言葉から察するに、グリムは「……消えろ家畜。馬の様にどこへでも走りだせ」と言ったのではないだろうか。
ちなみに、私たちに話しかけてきた人は全員こうなっており……
「砂糖……甘い……チロチロ」
「私は料理を作るだけの存在。さあ、今日の料理はシチューです……ひたすら作るのです……」
学食は今、ちょっとした地獄絵図になっている。
(ただ、これでさっき先生が……その、倫理的にアウトな状態になっていたのは、グリムの仕業だったのが分かったかな)
何か、催眠や暗示のような魔法を使えるのだろう。
本来ならすぐにでもやめさせたいのだが、これなら話辛い事をどこででも話せそうなので、今は止めないでおく。
「ヒヒィィン! もう一周してくるヒヒィィィン!」
「ふふっ……今日のお肉も一段と美しい……ちゃーんと、奇麗に斬ってあげるからねぇ……♪」
……本当に地獄絵図だが。
「……えーと、グリム。そろそろお話を聞かせてほしいのだけ……ど?」
私が話を切り出した瞬間に、私の前に何かを突き出してくる。
「これって……スマホ?」
アオイさんが、仲間にだけ配っているスマホで、会話と録音、あと最近アップデートして、メモ帳や、マップ機能も追加された。
なんかもう、その内ネットとかも普通に繋がりそうで怖い。
『この子は、私が雇っている貴女の護衛よ』
「え……アオイさん?」
よく見るとテレビ電話を繋げていたようで、アオイさんが話しかけてくる。
『今回の組み分けのように、貴女から護衛が外れる瞬間があるわ。だから、常に張り付ける護衛が欲しくて、ヴラドに、吸血鬼の一族で私たちに協力してくれる子を紹介してもらったというわけ』
「吸血鬼の一族を?」
『吸血鬼の固有魔法にある、催眠魔法の遣い手がほしかったの。催眠魔法があれば、何かトラブルが起きて授業から離れても、誰かさんが錯乱して地面に穴を開けても、誤魔化せるというわけよ』
「あ~……」
ちなみにだが、ヤサクニ装着状態、つまりは魔王モードで放った巨大アポカリプスの威力は凄まじく、ちょっとした池が作れそうな大穴になっていた。
「その子は特に、一族の中でも催眠のエキスパートらしいわ。スコール相手でも時間稼ぎはできるぐらい、攻撃魔法も使えるし、護衛として適任という事で雇わせてもらったというわけ」
「……グリム、とても凄い。むふー」
超絶ドヤ顔する美少女グリム。
なんというか、ただひたすら可愛い。
「でも、グリムって傭兵なの?」
「……魔導具の工房経営者。報酬は、アオイの作ったいくつかの魔道具の専売権利」
渋い顔をしているアオイさんを見るに、結構吹っ掛けられたようだ。
『貴女に力を見せるようにと伝えておいたのだけど、どうだった?』
「えーと……まだ力を隠してそうなんでなんとも言えずですが、とにかく強かったです」
『それなら、本契約で問題ないわね。授業が終わるまで、そこで休んでなさい。私は一応、最後までこの面倒な授業に付き合うわ。それにここは、魔法実技試験会場にもなるから、色々と調べておきたいし』
「あ、はい、分かりました」
テレビ電話が切れ、そのまま食事を再開するグリム。
相変わらず、ひたすら料理……今日のメニューらしいシチューと、何か焼かれた肉やらサラダやらを食べ続けているのだが……
「……はむぅ」
どうにも味に納得いっていないようで、お腹空いているからしょうがなく食べている感が強い。
「えーと、ちょっと貰っていい?」
「……はむむ」
たぶん、「どうぞ」と言っているので、シチューを食べてみる。
「あ~……」
成程、グリムの言いたい事が分かった。
まさに上流階級向けの上品な味付け、バランスの取れた贖罪、相変わらず塩味が足りないが、まあ普通に美味しい部類だろう。
だが! 運動の後はもう少しガッツリしたものを食べたくなるものなのだ! 一応、JKの胃袋なめるな!
「グリム、もう少しこう、食べたー♪ って気になるものべたくな……」
「……食べたい!」
食い気味かつ、一瞬で今あるものを食べきって返事をするグリム。
「よし。それじゃあ、ちょっと作ってくるね。一通り材料は揃ってるみたいだし、醤油を使わなくても美味しい、塩唐揚げとか、ハンバーグを……」
そう思って立ち上がると、グリムも立ち上がって、とてとて歩きながら付いてくる。
「……行こ?」
あまりにも可愛すぎる専属護衛を軽く抱きしめてから、厨房へと向かうのであった。
///////////////////
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
そして、新年ということで、前々から葵は普通の女子高生ではないのでは? と思っていたので、ちょっとタイトル変えてみました!
今年も頑張って更新していくので、宜しければ見てやってくださいm(_ _)m
「えーと……美味しい?」
「……はむはむぅ?」
「そ、そう。それは良かったね」
たぶん、「まぁまぁ?」と言ったグリムを見ながら、困惑する私。
ここでは話辛いというグリムに連れられ、向かった場所は密談の定番である屋上とかではなく、まさかの学食。
しかも本人はサンドイッチを爆食いし始めた上に……
「あの、貴女たち、授業は……」
「……はむむはむむ。はむむむはむ、はむむはむむはむむむむはむ」
「えっと、何を言ってるか分からな……」
「はひぃ! 家畜として、馬の如くどこへでも走らせていただきヒヒィィン!」
「分かりましヒヒィーン!」
「あ、あ~……」
色々な意味で、やりたい放題状態だ。
あの四つん這いで馬のマネしながら、学食担当の言葉から察するに、グリムは「……消えろ家畜。馬の様にどこへでも走りだせ」と言ったのではないだろうか。
ちなみに、私たちに話しかけてきた人は全員こうなっており……
「砂糖……甘い……チロチロ」
「私は料理を作るだけの存在。さあ、今日の料理はシチューです……ひたすら作るのです……」
学食は今、ちょっとした地獄絵図になっている。
(ただ、これでさっき先生が……その、倫理的にアウトな状態になっていたのは、グリムの仕業だったのが分かったかな)
何か、催眠や暗示のような魔法を使えるのだろう。
本来ならすぐにでもやめさせたいのだが、これなら話辛い事をどこででも話せそうなので、今は止めないでおく。
「ヒヒィィン! もう一周してくるヒヒィィィン!」
「ふふっ……今日のお肉も一段と美しい……ちゃーんと、奇麗に斬ってあげるからねぇ……♪」
……本当に地獄絵図だが。
「……えーと、グリム。そろそろお話を聞かせてほしいのだけ……ど?」
私が話を切り出した瞬間に、私の前に何かを突き出してくる。
「これって……スマホ?」
アオイさんが、仲間にだけ配っているスマホで、会話と録音、あと最近アップデートして、メモ帳や、マップ機能も追加された。
なんかもう、その内ネットとかも普通に繋がりそうで怖い。
『この子は、私が雇っている貴女の護衛よ』
「え……アオイさん?」
よく見るとテレビ電話を繋げていたようで、アオイさんが話しかけてくる。
『今回の組み分けのように、貴女から護衛が外れる瞬間があるわ。だから、常に張り付ける護衛が欲しくて、ヴラドに、吸血鬼の一族で私たちに協力してくれる子を紹介してもらったというわけ』
「吸血鬼の一族を?」
『吸血鬼の固有魔法にある、催眠魔法の遣い手がほしかったの。催眠魔法があれば、何かトラブルが起きて授業から離れても、誰かさんが錯乱して地面に穴を開けても、誤魔化せるというわけよ』
「あ~……」
ちなみにだが、ヤサクニ装着状態、つまりは魔王モードで放った巨大アポカリプスの威力は凄まじく、ちょっとした池が作れそうな大穴になっていた。
「その子は特に、一族の中でも催眠のエキスパートらしいわ。スコール相手でも時間稼ぎはできるぐらい、攻撃魔法も使えるし、護衛として適任という事で雇わせてもらったというわけ」
「……グリム、とても凄い。むふー」
超絶ドヤ顔する美少女グリム。
なんというか、ただひたすら可愛い。
「でも、グリムって傭兵なの?」
「……魔導具の工房経営者。報酬は、アオイの作ったいくつかの魔道具の専売権利」
渋い顔をしているアオイさんを見るに、結構吹っ掛けられたようだ。
『貴女に力を見せるようにと伝えておいたのだけど、どうだった?』
「えーと……まだ力を隠してそうなんでなんとも言えずですが、とにかく強かったです」
『それなら、本契約で問題ないわね。授業が終わるまで、そこで休んでなさい。私は一応、最後までこの面倒な授業に付き合うわ。それにここは、魔法実技試験会場にもなるから、色々と調べておきたいし』
「あ、はい、分かりました」
テレビ電話が切れ、そのまま食事を再開するグリム。
相変わらず、ひたすら料理……今日のメニューらしいシチューと、何か焼かれた肉やらサラダやらを食べ続けているのだが……
「……はむぅ」
どうにも味に納得いっていないようで、お腹空いているからしょうがなく食べている感が強い。
「えーと、ちょっと貰っていい?」
「……はむむ」
たぶん、「どうぞ」と言っているので、シチューを食べてみる。
「あ~……」
成程、グリムの言いたい事が分かった。
まさに上流階級向けの上品な味付け、バランスの取れた贖罪、相変わらず塩味が足りないが、まあ普通に美味しい部類だろう。
だが! 運動の後はもう少しガッツリしたものを食べたくなるものなのだ! 一応、JKの胃袋なめるな!
「グリム、もう少しこう、食べたー♪ って気になるものべたくな……」
「……食べたい!」
食い気味かつ、一瞬で今あるものを食べきって返事をするグリム。
「よし。それじゃあ、ちょっと作ってくるね。一通り材料は揃ってるみたいだし、醤油を使わなくても美味しい、塩唐揚げとか、ハンバーグを……」
そう思って立ち上がると、グリムも立ち上がって、とてとて歩きながら付いてくる。
「……行こ?」
あまりにも可愛すぎる専属護衛を軽く抱きしめてから、厨房へと向かうのであった。
///////////////////
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
そして、新年ということで、前々から葵は普通の女子高生ではないのでは? と思っていたので、ちょっとタイトル変えてみました!
今年も頑張って更新していくので、宜しければ見てやってくださいm(_ _)m
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