59 / 94
*
しおりを挟む
「諭吉くんだ」
「その金、支払いに必要だから無くすなよ?」
温めておいたミルクココアをカップに注いでミニテーブルへ置いた。
「そういうことは知ってんのな」
「諭吉くん? だってお金は大事だよ」
「まぁな。いまはさして不便しないだろ」
「不便……じゃないけど。どこまで遠慮しなくていいのかわかんないし、どこまでしたいのかもよくわからないから、難しい……」
「周りに肇の敵はいない。もしわからないことがあったらすぐ誰かに聞け。それができれば大したもんだ」
「ウン、ワカッタ!」
抱えていたペンギンのぬいぐるみの手を動かしながら裏声を出した肇の額を小突く。
本当にわかってるのか、こいつは。
「先が思いやられる……」
「志野もぺん太パジャマいる?」
「うるさいぞ、3歳児」
「わーっ」
肇の肩を押してベッドへ倒すと、また体調の悪そうな顔でこちらを見上げてきた。
「志野ー……」
「っ、いいから寝ろ。看病してやるから」
病人だというのに、うっかり手を出してしまいそうな自分を抑制するのは大変だ。
ましてや、なにも自覚のない3歳児は俺の手を抱いて安心しようとしている。
このバカ、少しはこっちの身にもなりやがれ……
「志野の手、ゴツゴツしてるね……あったかい」
「肇はぶよぶよだ。肉しかねえ」
「ぶふっ、お肉たぷたぷだよ~。あ、今日ね、亮雅とおそろいコーデしたんだ」
「昨日だろ」
「そうそう、昨日だった。丸いメガネのレンズがオレンジ色でね、亮雅は青色のやつ」
「肇がえらんだのか?」
「ううん、亮雅だよ。おれが選んだらセンスないって」
間違いねえ……
亮雅はよくわかっているらしい。
今度、肇のプロデュースをあいつに任せるか。
「あとバケットハットってやつ、白いのおれに合うんだって」
「肇は暗い色より白や暖色が似合うからな」
「似合う色って本当にあるんだ。亮雅がテキトーに言ってるのかと思ってた」
「おい……一番の友人だっつってなかったか。疑ってやんなよ」
「だって亮雅はおれのこと子どもみたいに扱うんだよ。ちょっとおれより背が高いからってすぐからかってくる」
……背は関係ないだろ。
肇の言動はいちいち保護欲をかき立てられる。
たとえ友人であっても、からかいたくなる気持ちはわからなくもない。
「でも亮雅と優斗くんは悪い人じゃないから、怖い顔したらダメだよ」
「あいつらはふしぎと信用できる。肇の体目当てなやつは下心丸出しなんだよ」
「……」
なにかショックを受けたように肇は視線を下げた。
出会ったばかりの頃、さびしさを埋めるように誰彼かまわず誘っていたが、本当はセックスへの恐怖心を持っている。
痛みを与えられることが生きがいだと思い込み、相手に痛いセックスを要求。
そして抑制の聞かない相手の頼みを断ればなにをされるかわからない恐怖が肇の頭を占領し、まるで奴隷になる。
だが、俺と出会ってからの肇は、痛みにひどく敏感になった。
もっともそれを感じるのは、やりたくない、怖いという感情が顔に出るようになったことだ。
「ぺんぺんぺん太~……んふふ、かわいいぃぃ……」
「肇、朝ごはんは何がいい」
「ヨーグルトとサンドイッチが食べたい」
「わかった」
肇なりに成長しているのが目に見えてわかると、俺も安心だ。
「その金、支払いに必要だから無くすなよ?」
温めておいたミルクココアをカップに注いでミニテーブルへ置いた。
「そういうことは知ってんのな」
「諭吉くん? だってお金は大事だよ」
「まぁな。いまはさして不便しないだろ」
「不便……じゃないけど。どこまで遠慮しなくていいのかわかんないし、どこまでしたいのかもよくわからないから、難しい……」
「周りに肇の敵はいない。もしわからないことがあったらすぐ誰かに聞け。それができれば大したもんだ」
「ウン、ワカッタ!」
抱えていたペンギンのぬいぐるみの手を動かしながら裏声を出した肇の額を小突く。
本当にわかってるのか、こいつは。
「先が思いやられる……」
「志野もぺん太パジャマいる?」
「うるさいぞ、3歳児」
「わーっ」
肇の肩を押してベッドへ倒すと、また体調の悪そうな顔でこちらを見上げてきた。
「志野ー……」
「っ、いいから寝ろ。看病してやるから」
病人だというのに、うっかり手を出してしまいそうな自分を抑制するのは大変だ。
ましてや、なにも自覚のない3歳児は俺の手を抱いて安心しようとしている。
このバカ、少しはこっちの身にもなりやがれ……
「志野の手、ゴツゴツしてるね……あったかい」
「肇はぶよぶよだ。肉しかねえ」
「ぶふっ、お肉たぷたぷだよ~。あ、今日ね、亮雅とおそろいコーデしたんだ」
「昨日だろ」
「そうそう、昨日だった。丸いメガネのレンズがオレンジ色でね、亮雅は青色のやつ」
「肇がえらんだのか?」
「ううん、亮雅だよ。おれが選んだらセンスないって」
間違いねえ……
亮雅はよくわかっているらしい。
今度、肇のプロデュースをあいつに任せるか。
「あとバケットハットってやつ、白いのおれに合うんだって」
「肇は暗い色より白や暖色が似合うからな」
「似合う色って本当にあるんだ。亮雅がテキトーに言ってるのかと思ってた」
「おい……一番の友人だっつってなかったか。疑ってやんなよ」
「だって亮雅はおれのこと子どもみたいに扱うんだよ。ちょっとおれより背が高いからってすぐからかってくる」
……背は関係ないだろ。
肇の言動はいちいち保護欲をかき立てられる。
たとえ友人であっても、からかいたくなる気持ちはわからなくもない。
「でも亮雅と優斗くんは悪い人じゃないから、怖い顔したらダメだよ」
「あいつらはふしぎと信用できる。肇の体目当てなやつは下心丸出しなんだよ」
「……」
なにかショックを受けたように肇は視線を下げた。
出会ったばかりの頃、さびしさを埋めるように誰彼かまわず誘っていたが、本当はセックスへの恐怖心を持っている。
痛みを与えられることが生きがいだと思い込み、相手に痛いセックスを要求。
そして抑制の聞かない相手の頼みを断ればなにをされるかわからない恐怖が肇の頭を占領し、まるで奴隷になる。
だが、俺と出会ってからの肇は、痛みにひどく敏感になった。
もっともそれを感じるのは、やりたくない、怖いという感情が顔に出るようになったことだ。
「ぺんぺんぺん太~……んふふ、かわいいぃぃ……」
「肇、朝ごはんは何がいい」
「ヨーグルトとサンドイッチが食べたい」
「わかった」
肇なりに成長しているのが目に見えてわかると、俺も安心だ。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
調教生活
ri.k
BL
ドMの人が送る調教生活。アブノーマルを詰め込んだ作品。
※過激な表現あり。(鞭打ち・蝋燭・失禁など)
初登校なので至らない部分もありますが暖かいめで見てくれると嬉しいです。🙇♀️
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
初めての鬼畜緊縛・第一章
拷鬼ヨシオ
BL
※実話です。
バイでドMの私は、平凡で在り来たりなSM生活を送ってました。
平凡すぎる縛りや責めに正直いつも満足してませんでした。
動けば縄が緩む・痛がれば相手は止めてしまう、、、
いつか麻縄で息をすることさえ出来ない、関節が悲鳴を上げるくらいの鬼畜かつ
拷問的な緊縛をされたい、私の人格・人権など無視して拷問されたい、と思ってました。
意を決してとある掲示板に私の思いを書き込みました。
「鬼畜な緊縛を施して私の人権を無視して拷問にかけてください」と。
すると、ある男性から返事がありました。
「私はドS拷問マニアです。縛りも縄師の方に数年ついていたので大丈夫です。
逆海老吊り縛り等で緊縛して、貴方を徹底的に拷問にかけたい。耐えれますか?」
私はすごく悩みましたが、下半身の答えは1つでした(笑)
日時やNGプレイ等のやり取りをしばらく行った上でいよいよお相手の方とプレイする事に。
それは私の想像をはるかに超えた鬼畜緊縛拷問プレイでした。
私は今後、どうなってしまうんだろうか・・・
無垢な少年
雫@月曜から更新開始
BL
無垢な少年がおじさんに調教されていつのまにかMになっている話を長編で書こうと思います。出てくる玩具とかは俺と犬と似ているところはありますが、少年そして最初はMじゃないので反抗的な部分が違うところなので見てみてくださると嬉しいです。
全部欲しい満足
nano ひにゃ
BL
とあるバーで出会った二人が、性的な嗜好と恋愛との兼ね合いを探っていく。ソフトSとドMの恋愛模様。
激しくはないと思いますが、SM行為があり。
ただ道具を使ってプレイしてるだけの話……と言えなくもないです。
あまあまカップル。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる