薄明かりの下で君は笑う

ひいらぎ

文字の大きさ
上 下
7 / 94

*

しおりを挟む
「志野っていまなにやってんの?  仕事」

「仕事はしてない」

「は!?  やめたの」

「ああ、2年前に」

「2年前って……ニートじゃん。にしては金持ちすぎない?」


自宅は豪邸、出てくる料理も安物ではない。
それに志野からプレゼントされる服はいつもハイブランドなものばかり。
おかしい。
そんな裕福なニートがいるとしたら、親のスネかじりではないか。


「意外~……じゃあなに、親が大富豪とか?」

「ネットで収入を得てんだよ」

「ん??  ネット?  え、ネットってお金もらえるの?」

「本当に知らないんだな……」


知るわけがない。
スマホの存在は知っていても所持していないうえに親から持たされたこともない。
いまの時代、ネットを通じて収入を得ている人間がいるのか。


「なにしたらお金もらえるんだ……」

「色々ある。動画投稿でもモデル活動でも慈善活動でも、いまはネットさえあればやりたい放題だ」

「へーすご。おれの知らないあいだに世の中は周り回ってるんだなぁ」

「……お前もそうすればいい」

「なーんか難しそう」

「やり方ならいくらでも教える。だから男娼なんてもうやめろ」

「……」


どうして心配そうに言うのか、おれは志野に少し腹が立った。
赤の他人なのに。


「やめらんないかなー、趣味みたいなもんだし」

「ならやめなくてもいい。でも安売りはするな、傷を増やされたらこっちが面倒なんだ」

「そんなイヤなら、志野が抱いてくれればいいのに。そうしたら傷は増やさないし、ヤバそうな男に声をかけないよ」

「……」


おれはクズ野郎だ。
志野の良心を利用して自分の虚しさを埋めようとしている。
この男はおれと性行為がしたくて近づいてきたわけじゃない。
単純に良心で人助けをしただけだろう。


「後悔しても知らねえぞ、くそガキ」

「ガキじゃないし。そんな年齢変わんないじゃん、お兄さん」

「キモい呼び方やめろ」

「みるみるモンモ~ン」

「薬でもやってんのか、お前は……」

「あはは~、1回薬誘われたけどなんか怖くて逃げたよ」

「そういうことを笑顔でいうな、バカ野郎」


子どもに囲まれたみるモンと目が合った気がして手を振ると、彼も振り返してきた。


「あれ絶対おれのこと好きじゃん~」

「すぐちょっかい出すな淫乱。ビュッフェだから元が取れるようにたくさん食えよ」

「びゅ、なんて?  びゅ、ふえ?」

「ビュッフェ。セルフってわかるか?」

「わかる」

「セルフで食べたいもんを選べるのがビュッフェな」

「食べ放題ってこと!」

「ああ」


食べ放題のレストランに行ったことはない。
志野はおれに初めてを教えてくれる。
未成年でもないが、おれが初めて知るものは多い。


「食べ放題……」

「よだれを垂らすな」

「志野は毎日ビューなんとかってのを食べてるのか!  羨ましいんだけどっ」

「毎日なわけあるか。あんたが世の中を知らなすぎるから連れてきたんだよ」

「おれは闇の覇者だから」

「うっせー」


返しに笑いながら歩いているとき突然、志野の腕につよく抱き寄せられた。
一瞬のことで困惑するおれをよそに、背後から見覚えのない男がすれ違う。


「っ」

「あっぶねえ……怪我してないか」

「うん……」


いま、変だった。
おれの鼓動、壊れてる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

君を独占したい。

檮木 蓮
BL
性奴隷として売られたユト 売られる前は、平凡な日を送っていたが 父の倒産をきっかけに人生が 変わった。 そんな、ユトを買ったのは…。

調教生活

ri.k
BL
ドMの人が送る調教生活。アブノーマルを詰め込んだ作品。 ※過激な表現あり。(鞭打ち・蝋燭・失禁など) 初登校なので至らない部分もありますが暖かいめで見てくれると嬉しいです。🙇‍♀️

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

初めての鬼畜緊縛・第一章

拷鬼ヨシオ
BL
※実話です。 バイでドMの私は、平凡で在り来たりなSM生活を送ってました。 平凡すぎる縛りや責めに正直いつも満足してませんでした。 動けば縄が緩む・痛がれば相手は止めてしまう、、、 いつか麻縄で息をすることさえ出来ない、関節が悲鳴を上げるくらいの鬼畜かつ 拷問的な緊縛をされたい、私の人格・人権など無視して拷問されたい、と思ってました。 意を決してとある掲示板に私の思いを書き込みました。 「鬼畜な緊縛を施して私の人権を無視して拷問にかけてください」と。 すると、ある男性から返事がありました。 「私はドS拷問マニアです。縛りも縄師の方に数年ついていたので大丈夫です。 逆海老吊り縛り等で緊縛して、貴方を徹底的に拷問にかけたい。耐えれますか?」 私はすごく悩みましたが、下半身の答えは1つでした(笑) 日時やNGプレイ等のやり取りをしばらく行った上でいよいよお相手の方とプレイする事に。 それは私の想像をはるかに超えた鬼畜緊縛拷問プレイでした。 私は今後、どうなってしまうんだろうか・・・

無垢な少年

雫@月曜から更新開始
BL
無垢な少年がおじさんに調教されていつのまにかMになっている話を長編で書こうと思います。出てくる玩具とかは俺と犬と似ているところはありますが、少年そして最初はMじゃないので反抗的な部分が違うところなので見てみてくださると嬉しいです。

全部欲しい満足

nano ひにゃ
BL
とあるバーで出会った二人が、性的な嗜好と恋愛との兼ね合いを探っていく。ソフトSとドMの恋愛模様。 激しくはないと思いますが、SM行為があり。 ただ道具を使ってプレイしてるだけの話……と言えなくもないです。 あまあまカップル。

処理中です...