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本編
1話 猫に呪いをかけられました
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私の名前は真野めいこ、高校2年生、17歳。
ただ今、バイトの帰り道。道端で喋る猫と出会っていよいよ頭がおかしくなってしまったのかと人生を儚んでいるところです。
「この前はマグロ缶をありがとーにゃ。君は優しい人間だにゃ。恩返しがしたいにゃ」
私は猫に特別詳しいわけではないが、全身真っ白で丸顔の耳が折れた猫は恐らくスコスコなんとか……って種類だったと思う。たぶん。
「君の名は?」
いつかどこぞの通りがかりのイケメンに言われてみたいセリフを猫に言われてしまった……!ここで答えてしまったら猫との甘酸っぱい感動青春物語が始まってしまうのだろうか。
「ワタシ、ノ、ナマエハ、マノ、メイコ……」
恐る恐る答えたらちょっとカタコトになった。
「ふーん。マノ?メイコ?かにゃ?よし!メイコ!今から君に祝福を与えるにゃー!愛され女子待ったなしにゃ!」
スコスコなんとかという猫はそう言って私に近付いて来た。ふわふわな毛並みが気持ち良さそうである。
目の前に喋る猫がいるというのは気のせいかもしれない。気が触れたアタオカ発言をしている猫なんていない。
ただの可愛い猫ちゃんが私に近付いて来ただけなのだ……。そう思わなきゃ自我を保っていられない。
そんな事を考えていたら当の猫は私の足元まで来ており、そしてごく自然な流れでシャーーッ!とオシッコをかけてきた。
「……は?はあぁっっ?!ちょ!!何突然オシッコしてくるの?!がっつりかかってるし!!!」
「これで祝福は完了にゃ。優しいメイコには愛されモテライフが似合うにゃ。青春を存分に謳歌すると良いにゃ」
どこかスッキリとした表情の猫はそう答え、どこかへ走り去っていった。
「ちょ、待って!!意味分かんない!何なのよーーっ!!……ってくっさ!!!」
猫のオシッコはすごく臭かった。
パニックになりながらも、ふと先週の出来事が頭の中を過ぎった。
確かあれは三日前だったか__。
*
私は放課後、ファミレスのバイトをしている。高校の最寄り駅から徒歩3分の好立地にあるチェーン店。平日と土日合わせて週4日、平日は17時から20時まで働いている。
その日もウエイトレスとして働いていた。比較的客足は落ち着いており、定時で上がる事ができた。
駅から自宅の最寄り駅までは電車で15分弱。そこから歩いて10分の閑静な住宅街に私の家がある。
今日は21時前には帰れそう!そう思いながら家路を急いでいたところ、道端に何かの塊が見えた。
気になって近付くと、白い毛並みで垂れ耳の猫が道の端っこで丸まりぐったりとしていた。
(だいぶ弱ってるみたい。近くに動物病院はないし、家に連れて帰ったらお母さんに怒られる)
お母さんは大の猫嫌いだ。アレルギーはないらしいが、生理的に好きではないと言っていた。
(このまま放置して明日通りがかって死んでいたら後味悪いし……)
そう思うと居ても立っても居られずコンビニへ向かっていた。
猫の事は詳しくない。とりあえず缶詰でも買えば良いか。
目に付いた猫用の缶詰を手に取り、会計を済ませて猫の元へ走った。
「食べられる?栄養つけて元気になって」
蓋を開けた缶詰を顔の近くに置いてやると、猫はよろよろとした動きで起き上がり、くんと匂いを嗅いで中身を食べだした。
(良かった。全部食べられそう)
食事を摂るだけの元気はあるようだし、これ以上居ても自分に出来る事はないと思いその場を後にした。
*
「あの猫が恩返しに来たの?……オシッコがお礼って事?……は?」
三日前の出来事を思い出し、道端で私は困惑した。
とりあえず今は速攻でお風呂に入りたい!早く帰ろう!少し冷静になった私は足早に自宅へ向かう。
猫のオシッコで靴下は左右ともびっしょりだ。スカートも少しだけかかっていると思う。触りたくないからかかり具合が分からないけれど、何かスカートも臭い気がするから間違いない。
「替えの制服あったよね?とりあえず明日はそれ着よう……」
なお、自宅に着いたら速攻でお母さんにバレた。烈火の如く怒られた。
*
「何なのよあの猫!」
とんでもない目に遭ってしまった。今日は厄日に違いない。
靴下はビニール袋に入れてゴミ箱へ投げ捨てた。制服はクリーニングに出す事になった。クリーニング代はバイト代から出すと申し出ると、お母さんの怒りは少しだけ収まった。
もう忘れよう__。自室のベッドで毛布に包まりそう思う。
眠りに落ちる前に猫が言っていた言葉がぼんやり蘇る__。
「愛され女子……?モテライフ……?」
ただ今、バイトの帰り道。道端で喋る猫と出会っていよいよ頭がおかしくなってしまったのかと人生を儚んでいるところです。
「この前はマグロ缶をありがとーにゃ。君は優しい人間だにゃ。恩返しがしたいにゃ」
私は猫に特別詳しいわけではないが、全身真っ白で丸顔の耳が折れた猫は恐らくスコスコなんとか……って種類だったと思う。たぶん。
「君の名は?」
いつかどこぞの通りがかりのイケメンに言われてみたいセリフを猫に言われてしまった……!ここで答えてしまったら猫との甘酸っぱい感動青春物語が始まってしまうのだろうか。
「ワタシ、ノ、ナマエハ、マノ、メイコ……」
恐る恐る答えたらちょっとカタコトになった。
「ふーん。マノ?メイコ?かにゃ?よし!メイコ!今から君に祝福を与えるにゃー!愛され女子待ったなしにゃ!」
スコスコなんとかという猫はそう言って私に近付いて来た。ふわふわな毛並みが気持ち良さそうである。
目の前に喋る猫がいるというのは気のせいかもしれない。気が触れたアタオカ発言をしている猫なんていない。
ただの可愛い猫ちゃんが私に近付いて来ただけなのだ……。そう思わなきゃ自我を保っていられない。
そんな事を考えていたら当の猫は私の足元まで来ており、そしてごく自然な流れでシャーーッ!とオシッコをかけてきた。
「……は?はあぁっっ?!ちょ!!何突然オシッコしてくるの?!がっつりかかってるし!!!」
「これで祝福は完了にゃ。優しいメイコには愛されモテライフが似合うにゃ。青春を存分に謳歌すると良いにゃ」
どこかスッキリとした表情の猫はそう答え、どこかへ走り去っていった。
「ちょ、待って!!意味分かんない!何なのよーーっ!!……ってくっさ!!!」
猫のオシッコはすごく臭かった。
パニックになりながらも、ふと先週の出来事が頭の中を過ぎった。
確かあれは三日前だったか__。
*
私は放課後、ファミレスのバイトをしている。高校の最寄り駅から徒歩3分の好立地にあるチェーン店。平日と土日合わせて週4日、平日は17時から20時まで働いている。
その日もウエイトレスとして働いていた。比較的客足は落ち着いており、定時で上がる事ができた。
駅から自宅の最寄り駅までは電車で15分弱。そこから歩いて10分の閑静な住宅街に私の家がある。
今日は21時前には帰れそう!そう思いながら家路を急いでいたところ、道端に何かの塊が見えた。
気になって近付くと、白い毛並みで垂れ耳の猫が道の端っこで丸まりぐったりとしていた。
(だいぶ弱ってるみたい。近くに動物病院はないし、家に連れて帰ったらお母さんに怒られる)
お母さんは大の猫嫌いだ。アレルギーはないらしいが、生理的に好きではないと言っていた。
(このまま放置して明日通りがかって死んでいたら後味悪いし……)
そう思うと居ても立っても居られずコンビニへ向かっていた。
猫の事は詳しくない。とりあえず缶詰でも買えば良いか。
目に付いた猫用の缶詰を手に取り、会計を済ませて猫の元へ走った。
「食べられる?栄養つけて元気になって」
蓋を開けた缶詰を顔の近くに置いてやると、猫はよろよろとした動きで起き上がり、くんと匂いを嗅いで中身を食べだした。
(良かった。全部食べられそう)
食事を摂るだけの元気はあるようだし、これ以上居ても自分に出来る事はないと思いその場を後にした。
*
「あの猫が恩返しに来たの?……オシッコがお礼って事?……は?」
三日前の出来事を思い出し、道端で私は困惑した。
とりあえず今は速攻でお風呂に入りたい!早く帰ろう!少し冷静になった私は足早に自宅へ向かう。
猫のオシッコで靴下は左右ともびっしょりだ。スカートも少しだけかかっていると思う。触りたくないからかかり具合が分からないけれど、何かスカートも臭い気がするから間違いない。
「替えの制服あったよね?とりあえず明日はそれ着よう……」
なお、自宅に着いたら速攻でお母さんにバレた。烈火の如く怒られた。
*
「何なのよあの猫!」
とんでもない目に遭ってしまった。今日は厄日に違いない。
靴下はビニール袋に入れてゴミ箱へ投げ捨てた。制服はクリーニングに出す事になった。クリーニング代はバイト代から出すと申し出ると、お母さんの怒りは少しだけ収まった。
もう忘れよう__。自室のベッドで毛布に包まりそう思う。
眠りに落ちる前に猫が言っていた言葉がぼんやり蘇る__。
「愛され女子……?モテライフ……?」
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