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第二章 世界旅行

人間に恋した天使(後編)

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「私ね、とてもモテたのよ」

「はぁ⋯⋯」

    ガブエルさんは、まるで当たり前に息を吐くように言う。
    確かに、顔立ちは整っている。

「それでね、たまたま助けた人間が私に恋しちゃって、最初は人間と結ばれるなんてありえないと思ったの」

「まあそうなりますよね」

「でも彼しつこくて、結局私折れちゃったのよ。まあ彼からプロポーズされた時にはもう私も好きになってたんだけど」

    まるで最近の事かのように、ガブエルさんは頬を染めています。まるで付き合いたてのカップルの様ですね。

「まあ、意外と恋に落ちるのなんて簡単なのよね。貴女ももしかしたらそうなるかも」

「ふっ、私が恋に落ちるなんて有り得ませんよ」

     私は強くそう言い返す。恋愛なんて、私の柄ではないですからね。

「そう?  まあ、いい報告があったら教えてね」

「まあ、期待しないで待っていてください。それでは」

「あら、もう行くの?  夕食でも食べていったら?」

「ここには困っている人はいなさそうですから。貴女もいる事ですし、私のやることはありません」

     私は救済の旅の身ですから、困り人無きところに私なしです。長居は無用という所で、腰掛けていた椅子から立ち、家を出ようとします。

「んー、もう行くのかぁ。大天使の加護があらんことをー」

「随分適当ですね⋯⋯」

「まあ、元だからね。緩く行くよ」

     私は「そうですか」、とだけ相槌を打ち、翼を広げて村を出た。


「人間と天使が恋に落ちるなんて事もあるんですね⋯⋯」

    なんというか、この世界は可能性に満ちているんだなと思います。
     私の常識は、私の中の常識なだけで、他者の常識は全く別のものなんでしょう。人間界に来てからそういった事で驚く事ばかりです。


「んーなんというか退屈しませんね。まだまだ旅を続けられそうです」

     救済の旅ですが、個人的に楽しんでしまっているのかもしれません。
    まあ、それならお互いに利があるということでいいでしょう。

「明日はどんな人と出会うのでしょうか。悪人以外なら大歓迎です」

    私は、少しだけ高鳴る胸を抑えて大空を舞った。


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