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第十四話 何やってるの
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「こちらになります」
食堂に案内されると豪勢な食事の数々がテーブルの上に列を為していた。
確かにお腹が空いたとは言ったが、ここまでのご馳走を用意されるとは思わなかった。
だって食べ放題? って思う位に料理が並べられんだもん。流石に驚く。
あと一つ気になる点がある。
「で、なんで貴方達もいるんですか?」
「え、いいじゃないかお嬢ちゃん! 俺たちがいなかったらワイバーンは倒せなかっただろ?」
「弟の言う通りだ。もう少し丁重に扱ってもらおうか」
ボク達が食事来るより前に冒険者兄弟が居たらしく、飲み食いを始めていた。
貴方たち二人がいなくても正直何とかなったと言いたかったが言葉を飲み込む。
「ノエルお姉さん、食べてもいいんでしょうか!? 凄く美味しそうですよ!」
「ん、いいんじゃないですか?」
「どうぞどうぞ、お召し上がりください」
目を輝かせたルアさんに、村長が是非食べるように促す。
あまりまともな食事を取れていなかったルアさんにとって、天国の様な光景なのだろう。
口いっぱいに頬張って食べていて微笑ましい。
さて、問題はまだこっちですよね。
「リオーネさん?」
「あっ、いやっ⋯⋯!」
「落ち着いて下さい。深呼吸」
先程メンタルを抉り取ってきた村長が目の前にいるせいか、リオーネさんの情緒がおかしい。
仕方ないのでリオーネさんの背中を「落ち着け」という意味合いを込めて、後ろからさすってあげる。
実質ワイバーン長年の歴史がちょっと毒舌な村長に完敗した瞬間だった。
「なんだワイバーン、お前も腹が減ってるのか」
「い、いやっ! 我は断じて腹が減っている訳では無い!」
村長の問いかけにリオーネさんは首を降った。
しかし美味しそうな匂いを嗅いでお腹が減ったのか、腹の音が食堂に響き渡る。
お腹空いたしボクは先に食べちゃお。
「いや腹の音が鳴ってるが」
「そんな事は断じてない! 気の所為だ村長さん!」
「食べたかったら食べてもいいんだぞ」
「し、しかし⋯⋯我にお腹が空いているという事実は!」
いや何故強がるのか。
食べても良いと言われてるんだから素直に食べればいいのに。
そんなことを思いつつ、ボクは既に三つ目のクロワッサンに手を伸ばす。
あ、このクロワッサン美味しい。
「見ろ! 勇者ノエル様なんてもう三つ目のクロワッサンだぞ! それに飯を食わないと仕事ができないだろ?」
え、何故ボクに飛び火した。もぐもぐ。
「村長さん⋯⋯我を許してくれるのか?」
「ふんっ、しっかり奪った酒分働いてくれればな」
「村長さん⋯⋯!!」
「だからしっかり飯を食って、体調を崩さないようにな」
そう言って村長はリオーネさんの黄金色の髪をした頭を撫でた。
リオーネさんも「村長さん!!」なんて涙ぐんでいる。
え、めちゃくちゃいい展開になってるんですけど。
ボク一応「憎きワイバーンを倒してくれ」的な感じでこの村に来たのに。どゆこと。
「まあ、寝首を搔くよりかは随分マシなエンドですね」
悟りきったように言いつつボクはクロワッサンを口に含んだ。
⚫
「ノエルお姉さん、リオーネさんと村長さん良い感じですね」
「まあ、そうですね。それよりボクは村長さんの人の変わり用に驚きましたけど」
「あはは、アレは私もビックリしました」
食堂でお腹を一杯に満たした後、ボク達はまた村の宿泊施設にお世話になる事にした。
現在の時刻は月明かりだけが頼りの真夜中。
眠い目をこすりながら、ボクとルアさんはベッドで今日あった事を話している。
「リオーネさん、もっと凶悪な見た目だと思ってたけど可愛くてビックリしました!」
「まあ、顔は良いですよね」
ルアさんは獣耳をぴょこぴょことさせて話している。大体ルアさんの獣耳が揺れ動いている時は決まってテンションの高い時だということを最近気付いた。
そしてボクもルアさんと同じ感想を抱いている。
てっきり巨大ドラゴンなんかが来ると思ったが、蓋を開けて見れば黄金色の髪をしたツインテール少女だった。
服装はボロ布を纏っているだけで粗末な格好だったが、吸い込まれるような緋色の瞳に可愛らしい顔立ちをしていたし、ボクの次に可愛いと言っても過言ではない。
「ノエルお姉さん、今ボクの次に可愛いと言っても過言ではないとか思ってましたよね?」
「一言一句間違ってないですし、バッチリ思ってました。なんで当てられたのか分からなくて怖いです」
「ノエルお姉さん、定期的にしたり顔になる時があるから⋯⋯考えている事が分かりやすいんですよ」
そう言ってルアさんは勝ち誇った様に笑った。
今のルアさんこそ、まさにしたり顔全開だとは言わないでおく。
「もう、何時までも喋ってないで寝ますよ」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみです⋯⋯」
ボク達の夜はいつもこうして更けていく。
大体ボクが先に眠くなって、「もう寝ますよ!」と会話を打ち切ることが多い。
そして今夜もボクがルアさんより先に瞼を閉じる。
良い感じの疲弊感が、ボクを手招いて夢の世界へと誘ってくる。
これ、逆らえない⋯⋯。
⚫
鳥の鳴き声で、ボクは夢の世界から現実世界へと連れ戻される。
窓の外を見ると既にあんなに暗かった夜は朝日が眩しいと感じる位に明るくなっていた。
横にはスヤスヤと寝息を立て心地良さそうに眠っているルアさんがいる。
「起きて下さい。朝ですよ」
「んーんー! あと五十年は寝ていたいです!」
「しわしわのおばあちゃんになる気ですか? ボクお腹すいたので朝ご飯食べたいんですけど」
「朝ご飯!?」
朝ご飯というワードに釣られ、ルアさんは飛び起きる。
基本ボクの朝はローテンションスタートだが、ルアさんはハイテンションスタートだ。
なので大きい声を出されると「静かにしてー」と軽く注意をする事になる。
毎朝の恒例行事だ。
「じゃ、行きますよ」
「今日の朝ご飯はなんですよか?」
「さあ、食堂についてみないと分かりません」
「というか朝ご飯出してもらう前提ですけど、私たちの分あるんでしょうか」
ルアさんは首を傾げて尋ねてくる。
「さあ、朝食がなかったら作らせるまでですよ」
「ノエルお姉さん厚かましいですね」
「冒険者は収入が安定しませんから、タダ飯が食べられる時は食べた方が良いんですよ。覚えていて下さい」
この数日間、冒険者としての収入は未だに入ってきていない。
今後旅を続けていく上で金欠は避けられないだろうし、節約はしておいて損は無い。
厚かましいと言うより、現実を見据えた崇高な判断と言って欲しい限りだ。
「厚かましいと思うなら食べなかったらいいじゃないですか?」
「あ、ノエルお姉さん根に持ってます?」
「いえ、別にー?」
「あはは、ちょっとこっち向いて下さい!」
ルアさんにこっちを向けと言われたので、なんの気なしにルアさんを見ようとすると、頬に何かが触れた。
そしてそれがルアさんの人差し指だとすぐに分かった。
要するに、ハメられた。
「へへへ、引っ掛かりましたね!」
「むぅ⋯⋯何なんですか」
「怒ってるのかなと思いまして、頬を突いてやろうかと!」
「なるほど、火に油を注ぐ気ですか」
怒らせてしまったと思ったのなら、素直に謝るべきなのでは。
相手が相手ならおちょくっていると怒られても仕方ない案件だ。
「違いますよ。気が紛れるかと思いまして」
「あの、そもそもボク別に怒ってないですから」
「へ? てっきり厚かましい奴扱いされて内心怒り心頭なのかと」
「それくらいじゃ怒りませんよ」
まあ、言ったのがルアさんじゃなくて全くもって見ず知らずの赤の他人なら、多少怒りは顕にしていたかもしれないが。
そんな事を思っている内に食堂へと辿り着いた。
「何してるんですか⋯⋯リオーネさん」
食堂に着くとテーブルには朝食の割には気合いの入ったガッツリとした食事が並んでいた。
何より驚いたのはリオーネさんがボロ布から給仕服に身を包んで立っていた事だ。
「な、なんだノエル! 我の格好が何か変か!」
「そういうのは本人が気にしている時に言う台詞ですよ」
「うぐっ」
「ボクは似合っていると思いますよ? それより何故給仕服を着ることになったのか経緯が気になりますねぇ」
「む、それはだな⋯⋯」
ボクの問い掛けに、リオーネさんはゆっくりと時系列を昨日に遡って語り始めた。
酒飲み対決が終わって以降のリオーネさんの壮絶な物語の幕開けだった事を、ボクは軽い気持ちで聞いたため知らなかった。
食堂に案内されると豪勢な食事の数々がテーブルの上に列を為していた。
確かにお腹が空いたとは言ったが、ここまでのご馳走を用意されるとは思わなかった。
だって食べ放題? って思う位に料理が並べられんだもん。流石に驚く。
あと一つ気になる点がある。
「で、なんで貴方達もいるんですか?」
「え、いいじゃないかお嬢ちゃん! 俺たちがいなかったらワイバーンは倒せなかっただろ?」
「弟の言う通りだ。もう少し丁重に扱ってもらおうか」
ボク達が食事来るより前に冒険者兄弟が居たらしく、飲み食いを始めていた。
貴方たち二人がいなくても正直何とかなったと言いたかったが言葉を飲み込む。
「ノエルお姉さん、食べてもいいんでしょうか!? 凄く美味しそうですよ!」
「ん、いいんじゃないですか?」
「どうぞどうぞ、お召し上がりください」
目を輝かせたルアさんに、村長が是非食べるように促す。
あまりまともな食事を取れていなかったルアさんにとって、天国の様な光景なのだろう。
口いっぱいに頬張って食べていて微笑ましい。
さて、問題はまだこっちですよね。
「リオーネさん?」
「あっ、いやっ⋯⋯!」
「落ち着いて下さい。深呼吸」
先程メンタルを抉り取ってきた村長が目の前にいるせいか、リオーネさんの情緒がおかしい。
仕方ないのでリオーネさんの背中を「落ち着け」という意味合いを込めて、後ろからさすってあげる。
実質ワイバーン長年の歴史がちょっと毒舌な村長に完敗した瞬間だった。
「なんだワイバーン、お前も腹が減ってるのか」
「い、いやっ! 我は断じて腹が減っている訳では無い!」
村長の問いかけにリオーネさんは首を降った。
しかし美味しそうな匂いを嗅いでお腹が減ったのか、腹の音が食堂に響き渡る。
お腹空いたしボクは先に食べちゃお。
「いや腹の音が鳴ってるが」
「そんな事は断じてない! 気の所為だ村長さん!」
「食べたかったら食べてもいいんだぞ」
「し、しかし⋯⋯我にお腹が空いているという事実は!」
いや何故強がるのか。
食べても良いと言われてるんだから素直に食べればいいのに。
そんなことを思いつつ、ボクは既に三つ目のクロワッサンに手を伸ばす。
あ、このクロワッサン美味しい。
「見ろ! 勇者ノエル様なんてもう三つ目のクロワッサンだぞ! それに飯を食わないと仕事ができないだろ?」
え、何故ボクに飛び火した。もぐもぐ。
「村長さん⋯⋯我を許してくれるのか?」
「ふんっ、しっかり奪った酒分働いてくれればな」
「村長さん⋯⋯!!」
「だからしっかり飯を食って、体調を崩さないようにな」
そう言って村長はリオーネさんの黄金色の髪をした頭を撫でた。
リオーネさんも「村長さん!!」なんて涙ぐんでいる。
え、めちゃくちゃいい展開になってるんですけど。
ボク一応「憎きワイバーンを倒してくれ」的な感じでこの村に来たのに。どゆこと。
「まあ、寝首を搔くよりかは随分マシなエンドですね」
悟りきったように言いつつボクはクロワッサンを口に含んだ。
⚫
「ノエルお姉さん、リオーネさんと村長さん良い感じですね」
「まあ、そうですね。それよりボクは村長さんの人の変わり用に驚きましたけど」
「あはは、アレは私もビックリしました」
食堂でお腹を一杯に満たした後、ボク達はまた村の宿泊施設にお世話になる事にした。
現在の時刻は月明かりだけが頼りの真夜中。
眠い目をこすりながら、ボクとルアさんはベッドで今日あった事を話している。
「リオーネさん、もっと凶悪な見た目だと思ってたけど可愛くてビックリしました!」
「まあ、顔は良いですよね」
ルアさんは獣耳をぴょこぴょことさせて話している。大体ルアさんの獣耳が揺れ動いている時は決まってテンションの高い時だということを最近気付いた。
そしてボクもルアさんと同じ感想を抱いている。
てっきり巨大ドラゴンなんかが来ると思ったが、蓋を開けて見れば黄金色の髪をしたツインテール少女だった。
服装はボロ布を纏っているだけで粗末な格好だったが、吸い込まれるような緋色の瞳に可愛らしい顔立ちをしていたし、ボクの次に可愛いと言っても過言ではない。
「ノエルお姉さん、今ボクの次に可愛いと言っても過言ではないとか思ってましたよね?」
「一言一句間違ってないですし、バッチリ思ってました。なんで当てられたのか分からなくて怖いです」
「ノエルお姉さん、定期的にしたり顔になる時があるから⋯⋯考えている事が分かりやすいんですよ」
そう言ってルアさんは勝ち誇った様に笑った。
今のルアさんこそ、まさにしたり顔全開だとは言わないでおく。
「もう、何時までも喋ってないで寝ますよ」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみです⋯⋯」
ボク達の夜はいつもこうして更けていく。
大体ボクが先に眠くなって、「もう寝ますよ!」と会話を打ち切ることが多い。
そして今夜もボクがルアさんより先に瞼を閉じる。
良い感じの疲弊感が、ボクを手招いて夢の世界へと誘ってくる。
これ、逆らえない⋯⋯。
⚫
鳥の鳴き声で、ボクは夢の世界から現実世界へと連れ戻される。
窓の外を見ると既にあんなに暗かった夜は朝日が眩しいと感じる位に明るくなっていた。
横にはスヤスヤと寝息を立て心地良さそうに眠っているルアさんがいる。
「起きて下さい。朝ですよ」
「んーんー! あと五十年は寝ていたいです!」
「しわしわのおばあちゃんになる気ですか? ボクお腹すいたので朝ご飯食べたいんですけど」
「朝ご飯!?」
朝ご飯というワードに釣られ、ルアさんは飛び起きる。
基本ボクの朝はローテンションスタートだが、ルアさんはハイテンションスタートだ。
なので大きい声を出されると「静かにしてー」と軽く注意をする事になる。
毎朝の恒例行事だ。
「じゃ、行きますよ」
「今日の朝ご飯はなんですよか?」
「さあ、食堂についてみないと分かりません」
「というか朝ご飯出してもらう前提ですけど、私たちの分あるんでしょうか」
ルアさんは首を傾げて尋ねてくる。
「さあ、朝食がなかったら作らせるまでですよ」
「ノエルお姉さん厚かましいですね」
「冒険者は収入が安定しませんから、タダ飯が食べられる時は食べた方が良いんですよ。覚えていて下さい」
この数日間、冒険者としての収入は未だに入ってきていない。
今後旅を続けていく上で金欠は避けられないだろうし、節約はしておいて損は無い。
厚かましいと言うより、現実を見据えた崇高な判断と言って欲しい限りだ。
「厚かましいと思うなら食べなかったらいいじゃないですか?」
「あ、ノエルお姉さん根に持ってます?」
「いえ、別にー?」
「あはは、ちょっとこっち向いて下さい!」
ルアさんにこっちを向けと言われたので、なんの気なしにルアさんを見ようとすると、頬に何かが触れた。
そしてそれがルアさんの人差し指だとすぐに分かった。
要するに、ハメられた。
「へへへ、引っ掛かりましたね!」
「むぅ⋯⋯何なんですか」
「怒ってるのかなと思いまして、頬を突いてやろうかと!」
「なるほど、火に油を注ぐ気ですか」
怒らせてしまったと思ったのなら、素直に謝るべきなのでは。
相手が相手ならおちょくっていると怒られても仕方ない案件だ。
「違いますよ。気が紛れるかと思いまして」
「あの、そもそもボク別に怒ってないですから」
「へ? てっきり厚かましい奴扱いされて内心怒り心頭なのかと」
「それくらいじゃ怒りませんよ」
まあ、言ったのがルアさんじゃなくて全くもって見ず知らずの赤の他人なら、多少怒りは顕にしていたかもしれないが。
そんな事を思っている内に食堂へと辿り着いた。
「何してるんですか⋯⋯リオーネさん」
食堂に着くとテーブルには朝食の割には気合いの入ったガッツリとした食事が並んでいた。
何より驚いたのはリオーネさんがボロ布から給仕服に身を包んで立っていた事だ。
「な、なんだノエル! 我の格好が何か変か!」
「そういうのは本人が気にしている時に言う台詞ですよ」
「うぐっ」
「ボクは似合っていると思いますよ? それより何故給仕服を着ることになったのか経緯が気になりますねぇ」
「む、それはだな⋯⋯」
ボクの問い掛けに、リオーネさんはゆっくりと時系列を昨日に遡って語り始めた。
酒飲み対決が終わって以降のリオーネさんの壮絶な物語の幕開けだった事を、ボクは軽い気持ちで聞いたため知らなかった。
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