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レオside

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俺はレオナルド・ホワード
今日は勝手に騎士団に来てた。

俺の父上はこの騎士団の第四騎士団 団長だ。
最近忙しくてもう3週間も会えてない。
ずっと会いたいのを我慢して来たけど、どうしても顔が見たくなって騎士団に忍び込んだ。

と言っても俺が団長の息子だってことは
大体の隊員は知ってるからすんなり中に入れた。

ここからどうしようかな。
入ったのはいいけど、あんまり1人でうろうろしてたら家に連絡されてしまう。
でもちゃんと言い訳は考えて来た。

今日は礼儀と作法の練習がある日だ。
俺が礼儀と作法の練習が苦手なのは父上
も母上も知ってるから、もしバレたら練習から逃げて来たってことにする予定だ。
父上に会いたいなんて恥ずかしいから。

一眼でいいから父上をみたい!そう思って俺は騎士団の庭に来た。
前に、空いてる時間に騎士団の庭で新人の訓練を見ることがあるって聞いたことがあるから。

残念ながら今日はまだ誰もいない。
だけど訓練場にはいけないよね。
すぐに連れ戻されてしまう。
しばらくここで待ってみよう。

俺は茂みに隠れて父上が来るのを待つことにした。

しばらくしたら「なに!?」という声が聞こえた。
俺は眠っていたらしい。
茂みの影で寝ていたはずなのに、誰かに見られてる視線を感じる。
こういう時は寝たふりだ。
騎士団に侵入者がいるとは考えにくいから、新人の人かな?
こういう時は騒がず相手が何をしてくるか待つのがいいと教えられた気がする。

・・・何もしてこない。
少しずつ目を開けてみる。
目の前にはとても可愛い女の子がしゃがんでた。
赤い髪の毛で金色の瞳。
髪の毛はキラキラと光ってるみたいで、とても艶があって綺麗だ。

「だれ?」
俺は思わず聞いてしまった。
名前はエマというらしい。
孤児院に住んでいて、今日は孤児院で働くスタッフの面接の付き添いで騎士団にいるのか。

にしても俺が「助けて」って言ったのに「やだ」って言われて、
理由を聞いたら「めんどくさそう」って言われた事には驚いた。

俺は初めて異性と仲良くなりたいって思った。
もっとエマのことが知りたい。
でも何を話せばいいか分かんないな。
そうだ!俺のことを話そう。
自分で言うのもなんだが俺は割とモテると思う。

もちろん父上が団長をしているって言うのもあるが、パーティーではよく女の子から話しかけられるし、かっこいいって言ってるのを聞いたこともある。
婚約者は15歳の時に決めることになってるが、今から縁談の話もあるみたいだし。

「なんか僕に聞きたいことはない?」
これで俺に質問しない子はいないだろう。
「ない」

えっ?俺に質問する事がない?
そんなことある?
例えば名前とか、どこの子とか、なんでここにいるのとか、好きな食べ物とか沢山あるじゃん!!
俺はここで初めて自惚れてたことに気付かされた。

それから俺はもっとエマと一緒にいたくなったから、なんとか一緒にいれる方法を探した。
しばらくやり取りをすると
「じゃあ着いて来てぇ~」
とエマが言った。
俺は思わず喜んでしまった。

ところで俺はどこに連れてかれるんだろう?

エマが俺を連れて来た場所は孤児院の新しいスタッフを決める面接会場だった。
まずい。
ルカ団長とキリト団長がいる。

もう遅かった。
それからは緊張してあんまり覚えてない。
気付いたらエマの手を握ってた。
俺は恥ずかしくてエマにぶっきらぼうな感じで話しかけてしまった。

でもエマは笑って話をしてくれた。
笑顔がまた可愛いな。
そこからエマと色々な話をした。

エマは俺が騎士団 団長の息子だと知っても態度を変えないで接してくれた。
皆んなおれが団長の息子だと知ると媚び売ってくるのにエマは変わらなかった。

思わず仲良くなりたいって言ってしまった時は焦ったけど、エマも否定して来なかったし、普通に話を返して来たときは嬉しさ半分、残念が半分って感じだった。

「レオっ」
父上の声だ!
俺は思わず父上に駆け寄る。

そこから父上には怒られてしまった。当たり前か。俺が悪いもんな。
悪いことをしてるのは分かってるけど父上は俺に会っても嬉しそうじゃない。
寂しかったのは俺だけか。

そこから父上の説教は止まらなかった。
分かってるけどなんか泣きそうだ。
この時は周りに誰がいるかとか気にすることもできなかった。

すると急にエマの声が聞こえた。
そこからエマと父上が話をしていた。
俺はエマにカッコ悪いところを見せてしまった事が恥ずかしくて、2人の会話はあんまり耳に入って来なかった。
はぁ。
もうエマに嫌われたかも。
そんな風に思って勝手に1人で落ち込んだ。

でもエマが
「おそらくレオナルド様はゴウ団長にお会いしたく、このような形で言い訳をわざわざつくって会いに来たのだと思います。
レオナルド様はまだ6歳です。お父様と会えない日々はとても寂しかったのではないでしょうか。」
と俺の気持ちを代弁してくれたのはしっかりと聞こえていた。

なんで分かるんだ?俺は思わずエマを見た。
他の皆んなもびっくりした顔でエマを見ている。

父上はエマが言ったことが本当なのか確かめて来た。
俺は思わず本当は父上に会いたかったことを話してしまっていた。

父上は俺に謝ってくれた。もう少し待ってくれるか?と聞いてくれた。
今まで父上が家を空ける時、俺にこんな風に接してくれた事はなかった。
些細なことがとても嬉しかった。
俺は気付いたら泣いてた。
これからはちゃんと家で父上を待っていようと思った。

エマには感謝しかない。
俺はこの出会いを大切にしようと思う。





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