クリスタル・サーディア 終わりなき物語の始まりの時

蛙杖平八

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CHAPTER 48

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CHAPTER 48



星岬技術研究所 本部棟 22F 社長執務室(兼 星岬開 自室)



「そろそろ出発の時間だ。」

星岬は独り言ちると光通信に載せて関係各位にお知らせをした。









星岬技術研究所 本部棟前



既に動き出していた関係者は勿論のこと、野次馬が集まるだけ集まっている此処、星岬技術研究所では、警備員を増員して警備を行なっていた。

「クリスタル・サーディアはどうした!?」

「サーディアを出せ、サーディアを!」

「飛んで行くところを見せてくれませんか!?」

「何故隠すのか!?」

皆、イベントを楽しむかのようにしている。

そんな中、本部棟の壁面が一瞬淡く光るとプロジェクション・マッピングが施され、サーディアの現状が映し出された。

サーディアは既にPCに接続済だ。

「あんな普通のケーブル一本でPCにつながるんだ」

見物人のひとりが呟いた。

「そこが凄いんじゃないか!」

見物人の幾人かが声を揃える。

更に、そのやり取りに同意した者たちがあちこちで頷いている。

そうこうしてる間にも、この世紀のイベントを見ようと続々と人が集まってくる。

本部棟前に集まってくる人・人・人。

プロジェクションマッピングに変化があった。

一瞬大きくざわついたが、集まっている人数の割りに静かになった本部棟前。

本部棟壁面に映し出された映像は上下に2分割されている。

上側に実際の現状を中継して伝えている映像を、下側にPC内の仮想空間で出動を待つサーディアを映している。

時々下側画面の中で手を振るサーディアが、光の球に変じて上側の画面に移動してPCから伸びるケーブルを通って人工人間装置に入って起動してみせると、それだけで集まっている人達は大いに喜んだ。


そんな時、プロジェクションマッピングに現れた星岬は、演説を始めたのだった。

「皆さま、今日という日がどれ程特別な意味を持つ日となるのかお分かりでしょうか?
 これから起こる出来事を、我々は生涯忘れる事などできないでありましょう。
 今回の任務は、それ程に重要な意味を持つのです。
 果たして火星宙域に停泊している巨大建造物の目的は何か?
 是非探り出して見せようではありませんか。」










星岬技術研究所 南研究棟 2F 開発主任室(兼 紀伊邦哉 自室)



「サーディアは此処から飛び立ちたい、という事だ。」

「そうか、分かった。」

邦哉は星岬に端的に伝えると、総務部に連絡を取った。

そして火星までの通信の流れを一通り確認した。

「サーディア」

声を掛けると向き直り、事務椅子から立ち上がると邦哉はサーディアを抱きしめた。

サーディアは、何か言葉を期待したが、彼は穏やかに見つめるだけであった。

この時間、既に本部棟はプロジェクションマッピングで中継を見せているのだが、高度な技術によって二人は自分たちを守っていた。

星岬から連絡が入る。

「行ってくれ」

サーディアは邦哉の首に両腕を回して飛びついた。

邦哉は両腕を広げてサーディアを受け止めるとキスをした。

「あーたのザラザラの舌、忘れない。」

邦哉は真っ赤になってうつむき加減でいた。

「「タバコとあたし、大事なのはどっち?」 って聞いたことがあったわね。
あの時、即答であたしだって言ってくれて、凄く嬉しかった。」

邦哉は無言だった。

「じゃ、行ってきます。」

「行ってら」

邦哉は極めていつも通りを心掛けたが、何故か見たくもない天井を見上げてしまう。
 
その視界は滲んでぼやけてやたら見づらかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「紀伊開発主任、状況は?」

早速、星岬が確認してくる。

素早くインカムを装着すると、手際よく現況を説明する。


そして、サーディアのサポートだ。

「こちら地上、星岬技術研究所・紀伊コントロール。
 サーディア、聞こえるか?」

本部棟の壁面に映し出された映像には、邦哉の姿と真っ黒で何も映し出していないPCのモニター画面がある。

「こちらサーディア、感度良好。現在第一チェックポイント通過中。レーザー通信、回線良好。全て順調よ。」


邦哉の見るPCのモニター画面に“SOUND ONLY” 音声のみの表示が出ている。

いくらサーディアでもカメラも無しでは映像を提供はできない。

お互い口数が少ない。

自然と緊張感が増してくる。

「サーディアより紀伊コントロール、第二チェックポイント通過中。これより最終目標の探査機にアクセスを開始する」

「紀伊コントロールよりサーディア、了解。」

邦哉は、何処か別の場所から見られているような嫌な感じを振り払うように頭を振ると、通信の“間”に異変を感じ取ってサーディアに声を掛けた。

「・・・紀伊コントロールよりサーディア、異常無いか?」

「サーディアより紀伊コントロール、トラブル発生。探査機が応答しない。予備の方もダメ。」

「探査機応答せず! チェック急げ!」 
邦哉は声を張って、隣室で通信システムを面倒見ていたスタッフに指示した!

隣室がドタバタと騒がしくなる。

「サーディアより紀伊コントロール、識別不明の探査機を発見した。これは使えそうだ。」

「なんだって? よく聞こえなかった。 不明な探査機を発見したと言ったのか?」

「サーディアより紀伊コントロール、識別不明の探査機を発見した。」

「サーディア待て! その宙域に探査機は2機しかない! ちょっと待て、こちらでも確認した。
 反応は3機ある! 内1機が“UNKNOWN”だ!」

「サーディアより紀伊コントロール、依然として目標の探査機はアクセスを受け付けない。」

指示を受けてココで引くのはあたしの魂が許さない。

「サ―ディア比べて、みてどうだ?」

「UNKNOWNがイカしている。 選ぶなら絶対にUNKNOWN、 間違いない。」

我ながらバカなことを聞く。
そう思いながら返信に対して、バカを言うんじゃない、と邦哉は思った。
どう考えてもこの展開は罠としか考えられない。
誰がこんな事をするのか、犯人捜しはあとにして、これに簡単に引っ掛かってしまうサーディアもどうしたというのか?

そうこうしていると、回線に簡単に割り込んでくる者が現れた。
「UNKNOWNの正体が判明した。巨大建造物の放ったプローブ(探査機)だ!」
声の主は星岬だった。

「ショチョー!?」

思わず声を合わせてしまうサーディアと邦哉。

「巨大建造物がワープアウトした直後に放出されるのを、確認されている。
 これは意図的にやったのかもしれない・・・。」
星岬が言う。

「邦哉、あたし行くわ」

なにっ、ちょっと待て・・・

邦哉はこれ以上は無いというくらいの“嫌な予感”を感じていた。


その通信を最後にサーディアとの連絡は取れなくなった・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アップロード完了。
思いのほかスムーズに終わったわ。

サーディアより紀伊コントロール、?
サーディアより紀伊コントロール、

あら? 通じなくなったわ。丁度接続の悪い時間に入ったようね。
UNKNOWNを含む3機の探査機はそれぞれ火星の周回軌道を回っている。
地球から見て火星の向こう側へ行くと、自ずと通信状態は悪くなる。
だからサーディアは気にせずにUNKNOWN(不明機)の解明に取り掛かった。


不明機使用言語解析開始
 データベース使用:類似言語の確認
 類似言語:アラビア語・近似値75%
 基本言語をアラビア語に設定

不明機システム解析開始
 解析完了まで残り:45%
 ・・・
 ・・・
 ・・・
 ・・・解析完了


不明機システム:検索
 検索:通信機能


 通信機能:掌握開始
 通信機能:エラー:不明なプロトコル

 通信機能:掌握できませんでした。




「入れたんだからその他諸々、出来るはず。」

サーディアは前向きだった。



 通信機能:プロトコル解析

   プロトコル解析:開始

   プロトコル解析:エラー:不明なプロトコル


「どういうこと? なぜ通信プロトコルが解析できないの? あたしは入って来られたのよ。」

サーディアの仮想CPUが不明機の中央演算装置を熱くさせる。


「そんなに難しくないはずだ。 ヒントは絶対近くにある!」

考えつく限りの事項を試して、未知のテクノロジーを熱くする。


「ああ・・・、邦哉、あたしに力を頂戴」

   通信プロトコル:読み込み:開始

   通信プロトコル:読み込み:完了

   通信プロトコル:置き換え:アラビア語

   
 「あら? これは・・・  そういうこと?」
通信プロトコルを自分が理解可能な言語に変換して見ると、地球製の、というか地球の科学技術でも置き換え可能な通信技術が一つや二つではなく、もっとあることに気が付いた。
そこでサーディアは自分のシステムファイルを“UNKNOWN”のシステムファイルと比較してみた。


 「つまり、あたしがこの機体に入って来れたのはこの機体に対して同位の通信手段を使用していた故の事で、あたしがこの機体の通信手段を使えないのは、この機体に対してあたしが下位のシステムだから、って事・・・・・・? 」

「なんか・・・ 段々・・・ 腹立って来たんだけど。」   
仮想空間で口に出して言いながら作業するアバターを構築しながらサーディアは“UNKNOWN”のプログラムに侵食を開始した。
セキュリティはしっかりしている印象を受けたがそんなの知ったこっちゃない。
ひたすら時間を置かずに、暇を与えず、プログラムに負荷をかけ続けた。

「ああ、もう! イライラする」
そう言うとサーディアは、猛烈な勢いでコマンドを書き込み始めた。
もはやサーディアのこの“イライラする”は、“ノッてきた”と同義語と言っても間違いではない。
サーディアは“UNKNOWN”のコントロールを一時的に掌握するだけのつもりだったが、度を超えて完全に乗っ取ってしまうまで止まれなかった。
やり過ぎた、そう思った時には既に遅かった。

まるで曼荼羅が如く視界が幾重にも広がるのを感じた瞬間、サーディアは自分が自由になったのと同時にこれ以上も以下もない領域に到達したことを知覚したのだった。








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 

「こちらは太陽系第3惑星地球の使者、名は“クリスタル・サーディア”。応答を求めます。」

サーディアは、これを繰り返し続けた。

あくまで巨大建造物に知的生命体がいるというのが前提だ。

独自に作り上げた仮想空間でスマホで連絡を取るみたいにしている。

天板に大理石を使った低いテーブルを囲むようにピンク色の革張りの肘掛け椅子とソファーが配置されている。

その仮想空間のデザインは、どこか開発主任室の応接セットに似ている物だった。

ところで、地球との交信が出来なかった件だが、実はまだ解決していなかった。

映像は送れているようで、向こうからも様子を送信してくるのを受信している。

だが、音声は抜けてしまうのだ。

仕方ないので筆談でやり取りしている現状だ。何とかしないと・・・。

呼びかけを続けて1時間が過ぎた頃、攻略目標であるホタテ貝型巨大建造物から確かに応答があった。


「タイヨウ 系 第 3 惑星 チキュウ ・・・から の・・・使者、その 名 を クリスタル・サーディア! 
 よくぞ 独り で 参ら れ た! 
 しかも 我 等 の 探査機 を 自ら の モノ に して しまう その 手腕 ・・・
 その 猛き 魂 を こそ 我 々 は 歓迎 する。」

サーディアは、仮想空間で音声通信を受信した。
その通信が確かに巨大建造物から発信されたと解る通信システムとセキュリティに“UNKNOWN”のシステムは想像以上に優秀であると改めて感じていた。
この様な機械であればこそ、サーディアが触れた瞬間に制御したくて辛抱ならなくなった事を雄弁に語っていた。

「言語 の チューニング は 現在 も 進行 中 だが、 特 に 問題 は なかろう? クリスタル・サーディア。」

「はい、問題ありません。」

「クリスタル・サーディアにはシェルの中に入ってもらおうか? プローブの慣性制御は出来そうか?」

「この周回軌道から離脱すればいいのよね?」

「出来そうかね?」

「任せて」

あたしを試そうって訳ね。

何とも言えないワクワク感に気持ちが高ぶる。

この機械には操縦桿などなく、運転席も無ければハッチすら無い。
ヒトが乗る事を想定していない。
無人機
それだけじゃない。
動力源が見当たらない。
物体を移動させるために必要なのは“エネルギー”だ。
それを得るために地球では機関を用いて燃料を燃焼させるなりしてエネルギーを得ている。
そのエネルギーをコントロールするのに使用するのが、ロケットであればロケットエンジン、スラスターだのブースターなのだが、大変重要な役目を担う部分な筈だが、コレらも無い。
本当に何も無いのだ。
つまり、この探査機は地球の機械とは異なる科学技術に従って成り立っている、という事だ。

ただし、サーディアに制御可能であることから電気を使っているのは間違いない。

さて、さらりと流してしまったが、十何行か前に“慣性制御”とかなんとか言っていたけど、慣性っていうのは・・・例えば、前へ動き出した車の中で、身体がシートに押し付けられる感覚が、走行中は感じられず、停車の際には進行方向へ身体が持っていかれる感覚がある筈だ。
この時の感覚が“慣性”だ。(本来、物理現象の話で感覚の話ではありません)
この感覚を自在に操る事ができるのが“慣性制御”だと、とりあえずそういう事にして処理しよう。

この探査機にも前後上下左右はあるようだ。
であれば、進行方向が前になるので現在の動きから前後は解る。
この探査機は火星を回る周回軌道を取っているので星を下に設定すれば、残る上と左右が決まる。
あとは、奪ったコントロールの中にあるはずの機体制御プログラムを・・・

「じゃ、加速して軌道はずれます。」

サーディアは、まるで馴れ親しんだ愛車を運転するかのように異文明の機械を操縦してみせた。


「了解。 軌道を外れたらトラクタービームで誘導する。」

この“チキュウジン”というのは、侮れんな。
この短時間でプローブの制御をあっさりとやりおった。

それに、何だこの的確な機体制御は?

これ程たかがプローブの動作に魅了されたことがあっただろうか?

動きに余韻があるように感じて、ついつい見入ってしまう。



一方サーディアは、仮想空間に作り上げた操縦席に収まって全天型スクリーンを見ている。

ビームは完全にこの機体を捉えており、この力場を逃れる術はないと思われた。

最大長さ200kmの巨体が、まるで本当のホタテ貝のように開いていく。

こんな、たかが2m四方程度の大きさのモノを内部に収納するために、随分と大掛かりな事をしなければならないモノだ。

だが、そこはそれなりに考えてあるようで、少し開いた所で内部からむにゅーっと、何か軟らかそうに見えるモノがはみ出してきて隙間を埋めていく。
同時にトラクタービームの発射地点周辺が盛り上がって筒状の突起となって伸びてくる。
トラクタービームはサーディアの乗ったプローブをスムーズに筒状の突起の中へと導いた。
仮想空間に作った操縦席で全面スクリーンが映しだすのは、正に顕微鏡で見る生物の世界。
筒状の突起に入ったところから紀伊コントロールとの交信は途絶えている。
心細い、とはこういうモノだろうかと、サーディアは思った。

トラクタービームは此処までだ!

と、声がすると今迄の細やかさの欠片もなく放り出された。
雑に扱われているのも癪(シャク)なので基本動作の中で優雅にやってみせる。

ほんの少しヴウンというモーター音がしたと思うと、キィーッチッと微かに金属が擦れる音がした。
周りの景色を映し出している仮想空間の壁は、現在の状態を映している。
この景色が現実だとしたら、自分はとんでもないモノを相手にしているのかもしれないと、この時初めてサーディアは思った。
その景色と言うのは、さすが最大長さ200kmの建造物の中、高層ビルのような柱(或いは逆か)、最果ては勿論、天井すら見通せない程だ。
どれだけの距離があるというのか?
そしてあたしは巨大建造物の中へ招待されるがまま、奥深くへ案内されたのだった。

うっかりしていたが、サーディアは現在、プローブを自分の身体としている。
直径2mの球体で真珠というとステキだが、パチンコ玉と言われても何も言い返せない。

案内人はサーディアの作った仮想空間に現れて、今隣りに立っている。
驚いたことに地球人と同じヒューマノイドだ。
ずっと前、金星人が、口を開けた貝の中に立つヴィーナスの様だと例えられたが、それは何の意味もない情報だ。
それよりも、これはサーディアを参考にして作られたアバターと考えられる。
そう考えた方が幾らかマシに思える。
いずれにしても気は抜けない。

少し進んだ所で、この機体と同機種と思われるモノが立体駐車場のようなものの中に整理されているのに行き当たった。
隣りに立っているガイドと同じモノが、こちらに向かって手を振っていてギョッとする。
まさかのクローン技術的な何かか?

「あちらはわたくしのオリジナルになります。」
一応その説明はありがとうと言うに値するのだが、早く言って! 


「サーディア様のモノも別室にご用意がございます。参りましょう。」
参りましょう? どうすればいいの?

「このまま、あちらにいるわたくしの横に空いている穴に入ってください。」

言われるままサーディアは穴に飛び込んだ。
サーディアの操縦はミリ単位での接近も可能と思わせる程、正確無比な腕前だった。

穴の中で何かが接触してきたが、すぐにそれらが固定用のアームとその他諸々だと分かった。
「さ、行きましょう。」
ガイドはサーディアの手を取って仮想空間の壁に向かって歩くと、そのまま壁に突進して壁に消えていった。
サーディアも同様にして壁に消えていった。




気が付くとサーディアは円筒形の吹き抜けの底の部分に横になっていた。
見上げる限り何階層も続いている。

頭が痛い・・・。

この感覚には覚えがある…。
まるで二日酔いの時のようだ。
そう思ってから二日酔いが分かるロボットってどうなの?
と、思い直す。
そんな事より、ここは一体?

「目覚めたか・・・。 気分はどうか? クリスタル・サーディア」

「・・・? 頭が・・・」

チーフオフィサーは、これまた美しい姿で立っていた。

「北欧系美人!」

「なにか?」 チーフオフィサーが上から覗き込んでいる。

はっ! 思ったことが、つい、口から出た。北欧系・・・(^^;

じゃない!

目に映る全てを確認して回る。
手を前に突き出して眺め回し、両方の足を使って立ち、首を回して景色を確認する。
とにかく確認する、同時に画像検索をして地球のモノとの類似点を探す。
容姿は地球人に酷似しているが、この姿はあたしにとっての人工人間装置という位置付けと思われる。衣類は簡素で上半身を簡単に隠し、腰から下を足全体を隠す感じで履物はブーツを履いている。
しかし、この着衣も姿もあたしを参考に用意された可能性を否定できない。
これを除いてはほとんど、類似点は無い・・・と、あたしの持ち前のデータベースは結論を出した。

ここは間違いなく異文明の只中だ!

さっきから誰かがあたしを呼んでいる…?

「クリスタル・サーディア!」

「はっ」
「よろしいか? クリスタル・サーディア」

「はっ・・・・・・あ、あのう、これは一体・・・?」

「我等が普段使いにしている身体、ネクステンデッドとでも呼ぼうか」

「決まっていないんですか?」

「呼び方は特にない。昔からあって、ずっと変わらないモノ。そこにあるのが当たり前のもの。」

「でも、それがどうしてあたしに使えてるの? あたしは」

「チキュウジン」

「そ、そう。あたしは地球人 ・・・の代理」

「ノ ダイリ ?」

はははははははははははははははは・・・ チーフオフィサーの笑い声が吹き抜けに響き渡る。

「実に愉快。大胆にして痛快。
 クリスタル・サーディア、私はキミを歓迎する。
 私だけではない、ここに集いし者たちも皆、キミを歓迎する。」

この一声を合図に、何階層も続く吹き抜けのずっとずっと上の階までヒトで一杯なのが分かる。

「歓迎してくれるのは喜ばしい事だけど」

「さっきから歯切れが悪いではないか」

「あたしは地球人に作られたロボット」

はははははははははははははははは・・・ 再びチーフオフィサーの笑う声が響く。

「そんな訳があるまい! キミは魂内に、我々に酷似した遺伝子コードを所持している。
 言っておくがキミが今使用しているネクステンデッドは、キミがウソを付いたら分かるようにしてあるから、そのつもりで・・・」

じとっと睨みを効かせてサーディアは体捌きがいいように斜に構えると腰を落として息を整えた。

「魂(たましい)ねぇ」 サーディアが何やら思い出したようにつぶやく。

その間もチーフオフィサーのサーディアへの探りは続いている。

「まさか・・・本当なのか!? ならば“チキュウジン”のオリジナル種とは一体どのようなモノなのか?」

サーディアの記録を読み取ったチーフオフィサーは身体をクネクネさせて身悶え始めた。

そこには研究所での日常、展望レストラン・ダンデライオンでの所員たちとの食事の様子、開発スタッフたちとの何でもないやり取り、星岬との難行苦行、そして、邦哉との日々が実録(画像データ付き文章)でファイルされていた。

「何と、何と! こ、んなモノがどれだけ集まろうとキミを作り出せるとは思えない。駄目だ、認められない。私は、キミを知ってしまった。 もう、どれだけの時間を掛けようとも、この想いを薄める事など出来はしない。」

サーディアは状況を見定めるため拘束される訳にはいかないと、先程からの構えを継続している。

「でも、それらの記録を含めた土台の上に、あたしは揺らぐことなく立っている。」





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