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異世界転移

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鏡から出たリーナ。
雑に置かれた雑誌の山に、脱ぎ散らかした衣服。机に無造作に置かれた腕時計にノートパソコン。
リーナはソウダがいた元の世界のソウダの一人暮らしの賃貸マンションに来た。


周囲を見回した後、カーテンを開ける。高さ25階。高すぎてカーテンを閉めた。
壁にドアがあるが、押しても開かない。

ピンポーン!

突然音がしたと思うとドアが開いた。

「あれ?鍵が空いてる!先輩大丈夫っすか?2日も出勤してこないから、流石に心配しま……」

突然ドアを開けて入ってきた男とリーナは目が合った。


「誰っすか?」

「お前こそ誰だ」

「俺っすか?先輩の後輩の佐藤です」

「サトウか」

「え?はい。えーっと……先輩の彼女っすか?」

佐藤は首を傾げた。

「先輩に彼女なんていたかなー?それに無茶苦茶美人だし!なんすか?この衣装?コスプレっすか?」

リーナは黒いワンピースの裾が切り刻まれ、汚れている。足も素足で泥で汚れている。

「っすか、すか、うるさい!滅びろ、デスブロー」

デスブロー。この技はリーナの最終奥義。嫌な相手を瞬殺する呪いの拳。
リーナの小さな拳が佐藤の胸にぺチンと音を立てて当たった。

「ん?」
「え?なんすか?その掛け声。やっぱりアニメとかコスプレ好きの人っすか?」

(完全にデスブローは当たった。今まで当たった人は一瞬で体に風穴が空くぐらい強力な技なのに、なんという鋼の肉体!サトウとはこの国の王か?)

「先輩は何処ですか?」

「私のデスブローは痛くないか?」

「え?さっきのパンチ?少し痛いけど、全く効かないっすね」

(やはりサトウは恐ろしい。下手なことを言って逆鱗に触れないよう注意しないと)

「先輩は何処に?」

「わ、私、リーナが預かっています。サトウ様は強いのですね」

ニコッと笑うリーナに佐藤も笑う。
しかしリーナには佐藤の笑いが不気味に見えた。

「ジムでエキササイズでシャドーボクシングとかしてるっす」

(聞いたことない技ばかり……)

「先輩預かってるなら、帰ります。よろしくっす」

「ちょっと待って。サトウ様はこれから何処に?」

「腹減ったからファミレスで昼飯っす」

「付いて行っていいですか?」

「えー。先輩の彼女さんですよね?」

「違うわ。親族よ」

「そうなんっすか?なら一緒に出歩いても問題ないっすね」

リーナは裸足で外に出ようとした。
すると佐藤は慌ててソウダの家にあったサンダルを履かせた。

ファミレスに着くとテーブル席に座った。

「さっき通った自動で動くドアに服や床に机に至るまで職人の技術は高い」

「それに窓から見える鉄の塊が動く荷車の中に人が乗り動いている。高度な魔法が存在する」

「さっきからリーナさんは何ぶつぶつ呟いているっすか?」

「いえ、佐藤様は気になさらずに」

佐藤はメニューを開いて渡した。
リーナはカラーで写真付きのメニューをじっくり見回した。

「決まりましたか?どれがいいっすか?俺はゴロゴロステーキにするっす」

「私も同じものを」

しばらくしてリーナの前に熱々のステーキが出てきた。
肉汁が飛び散り、肉のいい匂いが食欲をそそる。

リーナら佐藤と同じようにホークとナイフで肉を切り頬張った。
その瞬間、頭に雷が落ちたかと思うぐらいの衝撃が走った。

(なんだこの舌から鼻に抜ける美味は!各地の食を食べてきた私でさえ、こんな美味しい肉は食べたことがない!感動。100年ぶりに涙が出そう)

リーナは一気に頬張ると更に2皿食べて佐藤とリーナはファミレスを出た。
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