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草原の2人組
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新人の冒険者は一目で分かる。剣士なら、剣に木の盾。
弓使いなら、矢が10本と短弓が支給される。
稀に盗賊だと短刀を持った冒険者が街から一番近い草原に出て狩りを繰り返して強くなっていく。
しかし、魔獣は新人の冒険者より遥かに強いことが多く、死にかけて逃げることが幾度もあった。
今日もまた何も知らない新人の冒険者2人組が草原に現れた。
剣士と魔法使いの男女コンビで剣士が前衛で戦い、後ろから魔法使いが遠距離攻撃で次々にエモイを狩っていく。
「余裕だな。街のギルドの受付が言ってた街で1番強い奴より俺の方が強いんじゃないか?」
「ええ。貴方みたいに強い剣士さんが私を誘ってくれなかったら、こんなにエモイを狩れなかったわ」
魔法使いが大喜びしたのも束の間、草原の森から地響きを立てて四足歩行の魔獣ドギアラが剣士目掛けて猪突猛進する。
ドギアラは顎下から真上に伸びた角と額から伸びた角が特徴的で強靭な脚力で加速する。
地面から頭の先まで約3メートルの巨体が迫ってくる。
「やばい!逃げよう!」
冒険者は走るがドギアラの足の速さにあっという間に距離を縮められた。
街の門までは500メートルある。
剣士は魔法使いを守るために振り返って剣を構えた。
ドギアラが咆哮を上げて更に加速して突進する。
風を切る音の後、ドギアラの横腹に2本の矢が刺さった。
ドギアラが濁った悲鳴を上げた。
若干ドギアラの足は遅くなったが、剣士に向かってくる。
その後ろで魔法使いは身震いしながら魔法を詠唱する。
その時、魔法使いの横を通り過ぎた男は剣を抜きドギアラ目掛けて走り出した。剣士を抜かし、ドギアラの巨大な肉体の塊を剣一本で受けた。
男の足が地面に減り込み、後ろに押されていく。
剣士はただ呆然と立ちながら、その光景を見ていた。
「ドギアラの足が止まった」
魔法使いが呟く。
左右に動こうにもドギアラを止める男の力にピクリとも動けない。
そしてドギアラの横腹に弓が次々と刺さっていく。
「大きな的だから当たりやすいよ」
剣士が草原の奥から聞こえてきた声の方を向くと遠くから弓使いが遠距離で矢を連射していた。
足が止まり行き場を失ったドギアラは、ただの動かない的。
ドギアラの目に矢が命中し、ドギアラは倒れた。
「ありがとうございます!」
魔法使いがドギアラを止めた男に駆け寄る。
「街で1番強い俺の腕前はどうだったかな?」
剣士は顎が外れたように口を大きく開いて目を丸くして立ち尽くしていた。
魔法使いは既に男に惚れていた。
「あの!よろしければ名前を教えてください」
「俺はソウダ。相方はフィアリ」
「そ、ソウダさん。よければ私をパーティーに入れてください!」
ソウダは頭を掻いた。
「生憎だが、強くないと入れないんだ」
「何でもします!家のお手伝いでも何でもしますから」
フィアリが歩いてきた。
「またパーティー加入希望?もう100人以上断ってきたよね?いつになったらパーティー増えるの?」
「強さが足りないんだ」
「ソウダだって最初は弱かったじゃない。震えて私の影に隠れるぐらい」
「それは過去の話だ」
「貴方を強くしたマハドさんに感謝しなさい」
「マハド師匠には感謝している。俺を強くしてくれた。ニートからも脱却し剣士いや剣豪とまで呼ばれるようになった。フィアリは何年経っても弓使いだ」
「あの……」
「ちょっと待って」
フィアリは魔法使いの喋る隙を与えない。
「剣士は称号があって、ギルドから認定されれば剣豪に剣聖なんて呼び方が変わるけど弓使いは剣士みたいに呼び方が変わらないの!」
魔法使いは諦めて、剣士を連れて街へ戻って行った。
それに気付かず口論するソウダとフィアリは、しばらくして新人2人が消えたことに気付いた。
「また取り逃した!ソウダのせいだ」
「巨大魔獣から新人を守るクエストは難しいな」
「ドギアラ解体して街に持ち帰って、ドギアラ狩りの報酬受け取ろう」
「またかよ……」
弓使いなら、矢が10本と短弓が支給される。
稀に盗賊だと短刀を持った冒険者が街から一番近い草原に出て狩りを繰り返して強くなっていく。
しかし、魔獣は新人の冒険者より遥かに強いことが多く、死にかけて逃げることが幾度もあった。
今日もまた何も知らない新人の冒険者2人組が草原に現れた。
剣士と魔法使いの男女コンビで剣士が前衛で戦い、後ろから魔法使いが遠距離攻撃で次々にエモイを狩っていく。
「余裕だな。街のギルドの受付が言ってた街で1番強い奴より俺の方が強いんじゃないか?」
「ええ。貴方みたいに強い剣士さんが私を誘ってくれなかったら、こんなにエモイを狩れなかったわ」
魔法使いが大喜びしたのも束の間、草原の森から地響きを立てて四足歩行の魔獣ドギアラが剣士目掛けて猪突猛進する。
ドギアラは顎下から真上に伸びた角と額から伸びた角が特徴的で強靭な脚力で加速する。
地面から頭の先まで約3メートルの巨体が迫ってくる。
「やばい!逃げよう!」
冒険者は走るがドギアラの足の速さにあっという間に距離を縮められた。
街の門までは500メートルある。
剣士は魔法使いを守るために振り返って剣を構えた。
ドギアラが咆哮を上げて更に加速して突進する。
風を切る音の後、ドギアラの横腹に2本の矢が刺さった。
ドギアラが濁った悲鳴を上げた。
若干ドギアラの足は遅くなったが、剣士に向かってくる。
その後ろで魔法使いは身震いしながら魔法を詠唱する。
その時、魔法使いの横を通り過ぎた男は剣を抜きドギアラ目掛けて走り出した。剣士を抜かし、ドギアラの巨大な肉体の塊を剣一本で受けた。
男の足が地面に減り込み、後ろに押されていく。
剣士はただ呆然と立ちながら、その光景を見ていた。
「ドギアラの足が止まった」
魔法使いが呟く。
左右に動こうにもドギアラを止める男の力にピクリとも動けない。
そしてドギアラの横腹に弓が次々と刺さっていく。
「大きな的だから当たりやすいよ」
剣士が草原の奥から聞こえてきた声の方を向くと遠くから弓使いが遠距離で矢を連射していた。
足が止まり行き場を失ったドギアラは、ただの動かない的。
ドギアラの目に矢が命中し、ドギアラは倒れた。
「ありがとうございます!」
魔法使いがドギアラを止めた男に駆け寄る。
「街で1番強い俺の腕前はどうだったかな?」
剣士は顎が外れたように口を大きく開いて目を丸くして立ち尽くしていた。
魔法使いは既に男に惚れていた。
「あの!よろしければ名前を教えてください」
「俺はソウダ。相方はフィアリ」
「そ、ソウダさん。よければ私をパーティーに入れてください!」
ソウダは頭を掻いた。
「生憎だが、強くないと入れないんだ」
「何でもします!家のお手伝いでも何でもしますから」
フィアリが歩いてきた。
「またパーティー加入希望?もう100人以上断ってきたよね?いつになったらパーティー増えるの?」
「強さが足りないんだ」
「ソウダだって最初は弱かったじゃない。震えて私の影に隠れるぐらい」
「それは過去の話だ」
「貴方を強くしたマハドさんに感謝しなさい」
「マハド師匠には感謝している。俺を強くしてくれた。ニートからも脱却し剣士いや剣豪とまで呼ばれるようになった。フィアリは何年経っても弓使いだ」
「あの……」
「ちょっと待って」
フィアリは魔法使いの喋る隙を与えない。
「剣士は称号があって、ギルドから認定されれば剣豪に剣聖なんて呼び方が変わるけど弓使いは剣士みたいに呼び方が変わらないの!」
魔法使いは諦めて、剣士を連れて街へ戻って行った。
それに気付かず口論するソウダとフィアリは、しばらくして新人2人が消えたことに気付いた。
「また取り逃した!ソウダのせいだ」
「巨大魔獣から新人を守るクエストは難しいな」
「ドギアラ解体して街に持ち帰って、ドギアラ狩りの報酬受け取ろう」
「またかよ……」
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