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異世界引き篭り誕生

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 心が痛い。怖い。逃げたい。

「起きろ!!」

俺は宿のベッドで震えながら一夜を過ごした。
一睡もしていない俺を叩き起こしたフィアリは荷物をまとめ始めた。

「パーティーを失った今、私は故郷に帰る。ソウダも好きに生きるがいい」

昨日、魔獣エギオラが去った後に俺はフィアリに引きずられて街に戻った。
フィアリはギルドに報告。
ギルドからエギオラ討伐隊が編成されたが、あれ以降エギオラは見つかっていない。

「宿は朝までだ」

フィアリは出て行った。
少し後、俺も宿の店主から追い出された。

無一文、無職、家無し。
完全に異世界で詰んだ。

ガックリと肩を落として、歩いて宿を探すが払える宿代がない。
門前払いで何処も相手にしてもらえず、ギルドも昨日のエギオラ出現で手一杯でギルドの受付は臨時休業していた。

街の決まりで夜間は街中で人の往来の禁止と外出禁止の法により宿のない俺は、街からエギオラみたいな野獣が現れるかもしれない草原に追い出された。

残酷なこの世界で剣士や冒険者の夢を捨てて、暗闇の草原を歩き始めた。


街からしばらく草原を歩いていくと、あばら屋があった。
小さくて今にも崩れ落ちそうな木造の平屋。3畳ぐらいはある。

誰もいない暗い木の床で、疲れが出て泥のように寝た。

それから数日ずっと引きこもり、完全にニート化した。


空腹と喉の渇きが極限に達したある日。
ドアを叩く音がして、起き上がった。
ドアを開いて腰から後ろに倒れた。

ドアの向こうには小さなモンスターがいた。エモイより大きい。チーターの子どもの頃のような姿をしている。
完全に捕食される。

モンスターは俺に近づいた。

「ん?」

脚から血が流れている。かなり痛そうだ。
俺は手をかざし、使ったこともない回復魔法をイメージした。
すると手から緑色の光がモンスターの傷口に当たり、傷口が閉じていく。

「嘘だろ……治った」

モンスターの傷が完全に治った。
やってしまった!
元気になったモンスターは俺を襲うに違いない。
モンスターは俺に近づいた。


そして前足が俺の足に乗り、膝に乗り、一歩一歩俺の顔に近づくとモンスターは口を大きく開き、俺の顔を舐めた。
舐め回されて懐かれた!

「お前……」

チーター風の小さなモンスターは散々顔を舐め回して体を擦ったり戯れた後、俺の膝に顔を乗せて寝た。

夜になり、モンスターは出て行った。

一安心して眠りについた。

朝、ドアを叩く音がして昨日のモンスターが家に入ってきた。
俺の服を引っ張り外に連れ出された俺の目の前には衝撃的な光景が広がっている。

家の前の草原に多数のモンスターが静かに座っている。
角の生えた馬みたいなモンスター。
タコみたいな軟体なモンスター。
頭が3つある獣。
綺麗な尻尾かと思ったら尻尾の先が蛇のモンスター。

数えただけで50体超!

どのモンスターの傷があった……。


「俺は獣医じゃねー!」

家に入ってドアを閉める。
突然、突風で家が崩れ落ちた。

モンスターが俺を囲みギラギラした目で俺を見下ろした。


「分かりました。治します」

半泣きになりながら、治療を始めた。

全てのモンスターを治療した。
モンスターは俺の首を掴んで持ち上げると角の生えた馬みたいモンスターの背中に乗せた。
いきなり走り出した。
それに続いて全てのモンスターが後を追う。

「何処に連れて行くんだよ!」

森を抜け、山を越え、また草原を抜けて黒い木が密集する森の中に入った。

森の中は太陽が燦々と照らす昼のように明るく不思議と森の中ということを忘れる。
モンスターの足が止まり、再び首を掴まれて下された。

森の奥から1人の人の姿をした者が現れた。
顔は人間だが姿は猫耳で手足は猫だが人のように二足歩行。背も高くスラリとして目は大きくかなりの美人だ。

「私はネキ族のキャティと申します」

「喋れるの!?」

「ええ。半獣ですから」

「半獣?」

「人と獣の間に生まれた者のことです。そして、私はネキ族とこの地の魔獣を従える長でもあります」

「ここに連れてきて、俺を煮て食べるの?」

「いいえ、そのような無礼はしません。ケトロから聞きました。ケトロを助け、多くの魔獣を助けたと」

「ケトロ……。あのチーターみたいなモンスターか」

「そこでお願いがございます。私達をこれからもお救い下さい」

「え?」

キャティが平伏すると魔獣も脚を崩して平伏した。

「でも君たちは人に狩られる側。俺は人で、君たちはモンスターだ」

「あれを!」
キャティが手を叩くと、俺の前に食べ物と水が並べられた。

「おもてなしする用意は出来ています」

喉から手が出るぐらい旨そうな匂いが漂う。

「でも……」

「あれを!」
俺の前に金の塊が置かれた。

「これは貴方の物。これ以上の富は貴方の物になります」

「分かりました!喜んでやります!」

キャティは笑顔になった。

「ありがとうございます!我がおうよ!我々のおうよ」

「おう?王ー!?」
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