異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

覚醒する青 ―アクア視点―

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 ―アクア視点―


 ラファエルの想いが私の心の浸透して、恐怖心が消えていくのが分かりました。
 彼女がこれほどまでに私に尽くしてくれているのにっ、私がこのままでいいわけがありませんっ!!

 力が入らなくとも、どれほど状況で絶望的でも・・・諦めていいはずがないっ!!

 クロトさんならっ、どんな時でも諦めないっ!!
 決して己を失わずっ、自分に何が出来るかを必死に考えてっ!!

 ・・・何事も無かったかのように涼しい顔で微笑みかけてくれるっ!!

 彼に相応しくあろうとした私がっ、こんなことでどうするんですかっ!!


「その忠誠ごと貴様も屈服させてやるよっ!『神拳・蒼炎の拳撃』っ!!」


 サヴァイブの拳がラファエルの結界に迫ります。
 力を外側に出せない今の私にできること・・・何か、何かあるはずですっ!

 外側が駄目、なら・・・内側はっ!?

 私はラファエルとの繋がりを意識して、そこへ己の力を流し込みました。


 ガガガガガガガッ!!


「なん、だとっ!? 俺様の攻撃がっ・・・!? 減衰させられたのかっ!?」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・アクア、様・・・?」


 上手くいったようです、ね。
 ラファエルの結界に水の膜を纏わせることができました。

 この鎖にある効果の抜け道、すなわち、召喚獣パスを通して力を使うことは可能のようです。恐らく、そのようなものは想定されていなかったのでしょう。
 なにせ、クロトさんが開発した技術なのですから。

 また、助けられてしまいましたね・・・。

 いえ、もうそのことはいいのです。
 私は大事なことをはき違えていたようですから。

 私の願いは、クロトさんとともに歩くこと。

 そのために、必ずしも私自身が彼より強くならなければいけないわけではありません。強くなることも必要ですが、もっと大事なことがあります。

 それは・・・クロトさんやその大事な人の力となること。

 要は、直接戦闘だけでなく補助戦闘で助けることだって可能だということです。



<特殊条件5「絶望を越えし者」を確認>
<特殊条件3「揺るがない信念」を確認>
         ・
         ・
         ・
<レアスキル〈治癒魔法〉を獲得しました>
<レアスキル〈補助魔法〉を獲得しました>

<特殊条件10「失われない希望」を確認>
<魂源エネルギーを消費します>

<レアスキル〈治癒魔法〉が最高値になりました>
<レアスキル〈補助魔法〉が最高値になりました>

<レアスキル〈汎用魔法〉に〈治癒魔法〉と〈補助魔法〉が統合されます>
         ・
         ・
         ・
<ユニークスキル〖青魔法〗を獲得しました>



 私の頭の中にはこのようなアナウンスが流れてきていました。
 新たな力、ユニークスキル〖青魔法〗は、補助と回復などの、サポートに特化した魔法のようです。

 私はラファエルと繋がっているパスを通して、彼女にこの力を使いました。
 青魔法の<魔力付与エンチャント・マギウス>と、同じく青魔法の<防御付与エンチャント・ディフェンス>です。


「ごめんなさい、ラファエル。ようやく目が覚めました。鎖に繋がれた今の私ではこんな些細な補助しかできませんが、私も・・・あなたとともに戦います。」

「っ、御心のままにっ!」


 ラファエルは、私の言葉に心底嬉しそうな笑みを浮かべてくれました。


「クソっ!この俺がっ・・・『蒼炎神』たるこの俺がっ!! こんなチンケな結界を破れないなどっ! あっていいはずがねぇっ!!」


 サヴァイブという男のプライド故か、誰かを呼びに行って力を借りるという選択肢はなさそうです。これは私にとって・・・私たちにとって幸運でした。

 ここからは・・・時間との勝負です。

 この結界の作動はクロトさんに伝わっているとラファエルの心が言っています。
 普段は瞳の力で心を読むことはしませんが、いまは緊急事態ですから。

 二十四時間、絶対に耐えてみせます。
 クロトさんに助けてもらえる、その時まで。

 そして今度は、この危険だらけの世界で、私がクロトさんの助けに、なってみせますからっ!!



 〇〇〇



 時は経過し、二十四時間。
 もうあと五分もしないうちに、ラファエルの結界は消え去ってしまいます。

 そうなったら彼女は殺され、私はあの男の慰み者にされるでしょう。

 でも、不思議と恐怖はありません。
 今ならばサヴァイブの魔の手に堕ちることなどないと自信を持って言えますから。

 私自身が慰み者にされる未来より、ラファエルが殺されてしまうことの方が余程恐ろしいくらいです。
 彼女には不死属性がありますので、そう簡単には死にませんけれども。


「もう少しでコイツを破れるっ! ・・・あん?外が騒がしい。またサラディンとグライドがおっぱじめやがったかぁ? おいミュース!様子を見てこいっ!」

「かしこまりましたっ、サヴァイブ様ぁっ!」


 そんなアクシデントもありましたが、サヴァイブは攻撃の手を緩めず―――
 

 そして、その時は来ました。


「くっ・・・あっ、結界がっ・・・!!」

「はんっ、よく耐えた方だ。これでようやく・・・っ、何だその目はああっ!!」


 結界が消えて、サヴァイブが勝ち誇りましたが、私に動揺はありません。
 私の目から恐怖心の無さを感じ取ったのか、男は荒れていますね。

 私は、どれほどの目に遭わされようとも、泥水をすすってでも生きてクロトさんに会うべく、その覚悟を決めて―――







 ドゴオオオオオオオオッッ!!


「―――あああああああっ!?」

「っ、何がっ・・・・・・ミュースっ!?」


 轟音とともに壁を破壊して飛び込んできたのは、先程サヴァイブの命令を受けて部屋を退出した女性。
 私の目から見ても、格上の実力者であることが窺えたミュースでした。

 己の側近がボロボロにやられていることに呆然とするサヴァイブ。

 そして土煙の中から現れたのは――――






「―――アクア。遅くなって申し訳ないけど、助けにきたよ?
 それで・・・アクアをこんな目に遭わせたのは・・・・・・何処の誰だ?」

「ぅ、あ・・・クロトさんっ!!」


 ――――私が生涯愛し続けようと心に決めている唯一人の男性、でした。

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