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第三部「全能神座争奪戦」編
二つ目の欠片
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討伐対象「力の深紅鬼」の首が刎ねられ、レベルアップのアナウンスが流れた。
アッシュはレベル130に。
アヤカはレベル125に。
アンジェリカはレベル120に。
エアリスはレベル119に。
そしてクロトにもアナウンスが流れた。
<個体『クロト・ミカゲ』は『レベル126』から『レベル129』になりました>
かなり格上扱いだったようで、シロナ以外の全員、2以上レベルが上がっている。
「あっ、私もレベル上がった!」
シロナはレベル152からレベル153になったようだ。
クロトと再会してから上がっているのに、またしてもレベルアップしたので、シロナはとても嬉しそうだ。
「はぁぁぁぁぁ・・・!無事に生き残ったわっ!結果的に無傷で勝てたけど、冷や汗ものだったわよっ!」
アヤカはその場にへたり込み、その精神的な疲労具合が顕著に表れている。
一撃でももらったらアウトな戦いだったので、それだけ消耗も大きいのだ。
結果だけみれば圧勝でも、実態はギリギリの綱渡り。
(でもまあ、あの二人が居なければ勝てなかったのは間違い無いわね・・・。)
クロトと、クロトに抱き着いているシロナを見ながら、アヤカはそう思った。
最終的に自分が与えたダメージは僅かな傷のみ。
アッシュは大きな傷をつけはしたが、二人の援護なしには不可能だったはず。
魔法士の二人による魔法も効果的なダメージは殆ど与えられていない。
主武器たる二本の腕を落とし、動きを鈍らせたのは、クロトとシロナなのだ。
二人が居なければ、よくてジリ貧だったはず。
そう考え、今回の取り分交渉は厳しくなりそうだとため息を吐いたアヤカだった。
そんな風に、アヤカがため息を吐き、クロトとシロナが無自覚にイチャつき、アンジェとエアリス敵討ちの達成を静かに喜んでいた時のことだった。
突如<深紅鬼>の体から輝く何かが飛び出してきた。
瞬間的に臨戦態勢になる六人だったが、赤く輝く欠片は宙に浮いたまま動かない。
誰もが息を殺して警戒を続けていると・・・
「・・・ん。回収完了、と。」
「「「ちょっ!?」」」
何故か気配を消して忍び寄ったクロトが、何でもないことのように欠片を手に取って懐に収めたのだった。
エアリス、アンジェ、アヤカは思わず声を上げ、アッシュはポカンとしている。
シロナだけはクロトに近づいて、私にも見せてとねだっている。
「・・・さて、解体して取り分の話に移ろうか。」
「いやいやいやっ! ちょっと待ちなさいよっ! なんで何事も無かったかのように話を進めてるのよっ!? 今の赤い欠片は一体何なのっ!?」
ごく自然に話に入ったクロトに、アヤカが待ったをかけた。
あんな如何にも怪しい物体を回収しておいて何の説明も無しというのは、流石に納得がいかなかったのだろう。
アッシュや、控えめながらアンジェとエアリスも、同じことを言いたげだ。
全員からそんな主張をされたクロトは困り顔になり、シロナはツボに嵌まったのかお腹を抱えて笑いを堪えている。
「・・・何の意味も無くただ光っているだけの欠片、って説明したら信じる?」
「信じる訳ないでしょう!? どう考えても貴方たちが探してた物よね!?」
「・・・どうしても、知りたいの?」
「そんなの、知りたいに決まって・・・っ!?」
アヤカは言いかけていた言葉を慌てて止めた。
クロトの表情は相変わらず変化しないのだが、そこに決して譲らないだろう強い意図が窺えたのだ。
つまり・・・これ以上立ち入るなら、敵対もやむなし、と。
その本気度を理解して、アヤカたちは息を呑み、思わず後ずさった。
シロナはいつの間にかいつでも動ける体勢になっており、迂闊に逃げることもできなくなっているのに、遅ればせながら気づいた四人。
「いきなりこれが飛び出してくるのは一応想定していたんだけど・・・碌に対策も立てられなかったよ。本来なら解体の時に適当に隠すつもりだったのに・・・。」
「ついてない、というより、絶対的事象、てやつだねっ!」
「これからも似たようなことになりそうだね・・・。気が重いよ・・・。」
ごく普通に会話をしている二人だが、聞く側からすれば堪ったものではない。
どことなく、その内容に不穏なものが含まれているのに気づいているからだ。
アヤカがゴクリとつばを飲み込んで、恐る恐る尋ねる。
「まさか・・・見られたから、口封じをしようって訳じゃ、ないわよね?」
「・・・・・・。」
その問いにクロトは、珍しく口角を動かし、ニコリと笑って答えとした。
「冗談、よね・・・?」
アヤカは更に一歩下がりながら、顔を青ざめさせながら尋ねた。
赤い欠片・・・<全能神の欠片>については、知っている者が少ない方が良い。
そんなのは、子供でも分かる理屈だ。
ましてや、欠片と強力な魔物を結び付けて考えるのが難しくない現状。
将来的に勃発する争奪戦のことを考えれば、どうするべきかは簡単な問題だ。
「さて。それじゃあ・・・・・・始めようか?」
クロトは仕舞っていた剣を取り出して、そう告げたのだった。
アッシュはレベル130に。
アヤカはレベル125に。
アンジェリカはレベル120に。
エアリスはレベル119に。
そしてクロトにもアナウンスが流れた。
<個体『クロト・ミカゲ』は『レベル126』から『レベル129』になりました>
かなり格上扱いだったようで、シロナ以外の全員、2以上レベルが上がっている。
「あっ、私もレベル上がった!」
シロナはレベル152からレベル153になったようだ。
クロトと再会してから上がっているのに、またしてもレベルアップしたので、シロナはとても嬉しそうだ。
「はぁぁぁぁぁ・・・!無事に生き残ったわっ!結果的に無傷で勝てたけど、冷や汗ものだったわよっ!」
アヤカはその場にへたり込み、その精神的な疲労具合が顕著に表れている。
一撃でももらったらアウトな戦いだったので、それだけ消耗も大きいのだ。
結果だけみれば圧勝でも、実態はギリギリの綱渡り。
(でもまあ、あの二人が居なければ勝てなかったのは間違い無いわね・・・。)
クロトと、クロトに抱き着いているシロナを見ながら、アヤカはそう思った。
最終的に自分が与えたダメージは僅かな傷のみ。
アッシュは大きな傷をつけはしたが、二人の援護なしには不可能だったはず。
魔法士の二人による魔法も効果的なダメージは殆ど与えられていない。
主武器たる二本の腕を落とし、動きを鈍らせたのは、クロトとシロナなのだ。
二人が居なければ、よくてジリ貧だったはず。
そう考え、今回の取り分交渉は厳しくなりそうだとため息を吐いたアヤカだった。
そんな風に、アヤカがため息を吐き、クロトとシロナが無自覚にイチャつき、アンジェとエアリス敵討ちの達成を静かに喜んでいた時のことだった。
突如<深紅鬼>の体から輝く何かが飛び出してきた。
瞬間的に臨戦態勢になる六人だったが、赤く輝く欠片は宙に浮いたまま動かない。
誰もが息を殺して警戒を続けていると・・・
「・・・ん。回収完了、と。」
「「「ちょっ!?」」」
何故か気配を消して忍び寄ったクロトが、何でもないことのように欠片を手に取って懐に収めたのだった。
エアリス、アンジェ、アヤカは思わず声を上げ、アッシュはポカンとしている。
シロナだけはクロトに近づいて、私にも見せてとねだっている。
「・・・さて、解体して取り分の話に移ろうか。」
「いやいやいやっ! ちょっと待ちなさいよっ! なんで何事も無かったかのように話を進めてるのよっ!? 今の赤い欠片は一体何なのっ!?」
ごく自然に話に入ったクロトに、アヤカが待ったをかけた。
あんな如何にも怪しい物体を回収しておいて何の説明も無しというのは、流石に納得がいかなかったのだろう。
アッシュや、控えめながらアンジェとエアリスも、同じことを言いたげだ。
全員からそんな主張をされたクロトは困り顔になり、シロナはツボに嵌まったのかお腹を抱えて笑いを堪えている。
「・・・何の意味も無くただ光っているだけの欠片、って説明したら信じる?」
「信じる訳ないでしょう!? どう考えても貴方たちが探してた物よね!?」
「・・・どうしても、知りたいの?」
「そんなの、知りたいに決まって・・・っ!?」
アヤカは言いかけていた言葉を慌てて止めた。
クロトの表情は相変わらず変化しないのだが、そこに決して譲らないだろう強い意図が窺えたのだ。
つまり・・・これ以上立ち入るなら、敵対もやむなし、と。
その本気度を理解して、アヤカたちは息を呑み、思わず後ずさった。
シロナはいつの間にかいつでも動ける体勢になっており、迂闊に逃げることもできなくなっているのに、遅ればせながら気づいた四人。
「いきなりこれが飛び出してくるのは一応想定していたんだけど・・・碌に対策も立てられなかったよ。本来なら解体の時に適当に隠すつもりだったのに・・・。」
「ついてない、というより、絶対的事象、てやつだねっ!」
「これからも似たようなことになりそうだね・・・。気が重いよ・・・。」
ごく普通に会話をしている二人だが、聞く側からすれば堪ったものではない。
どことなく、その内容に不穏なものが含まれているのに気づいているからだ。
アヤカがゴクリとつばを飲み込んで、恐る恐る尋ねる。
「まさか・・・見られたから、口封じをしようって訳じゃ、ないわよね?」
「・・・・・・。」
その問いにクロトは、珍しく口角を動かし、ニコリと笑って答えとした。
「冗談、よね・・・?」
アヤカは更に一歩下がりながら、顔を青ざめさせながら尋ねた。
赤い欠片・・・<全能神の欠片>については、知っている者が少ない方が良い。
そんなのは、子供でも分かる理屈だ。
ましてや、欠片と強力な魔物を結び付けて考えるのが難しくない現状。
将来的に勃発する争奪戦のことを考えれば、どうするべきかは簡単な問題だ。
「さて。それじゃあ・・・・・・始めようか?」
クロトは仕舞っていた剣を取り出して、そう告げたのだった。
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