異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

連携確認と再びの轟音

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 接敵した二体の<深紅鬼クリムゾン・オーガ>に対し、三人ずつに分かれて戦う一同。

 組み合わせは、
 クロト&アッシュ&アンジェリカ
 シロナ&アヤカ&エアリス

 と、クロトとシロナを中心に据え、両組とも前衛と後衛一人ずつ配置されている。
 連携の確認も兼ねて組み合わせは何度も変える予定だが、そこに変更はない。


「―――『金剛剣・破断』!」


 アッシュが背中に背負っていた大剣で<深紅鬼>の拳を相殺。
 凄まじい轟音が鳴り響き、両者共にたたらを踏む。


「―――『神天八奏連閃・龍絶』!」

「ゴガアアアアッ!?」

「―――遍く彼の敵を焼き尽くせ!『火帝魔法・獄炎刃』

「ゲガアアアアアッ!?」


 その状態でから、クロトの剣技により右腕が切断され、アンジェの魔法による獄炎の刃で左腕が切断された。

 一対一で戦うなら、クロトは優勢、アッシュが微優勢、アンジェが互角の敵。

 にもかかわらず、あっさり追い詰めることが出来ているのは、連携の強み。
 一人より二人、二人より三人。
 初めは不慣れなところがあるにしても、一度はまれば難しいことでもないのだ。

 それと、クロトの指示が的確というのも大きかったりする。


「はぁぁぁっ!!『金剛剣・破断』!」


 瞬く間に体勢を立て直したアッシュが、両腕を失って碌に抵抗できない状態となっていた<深紅鬼>の首を容赦なく刎ねて決着。


「―――移ろい、流離さすらい、彼の敵を戒めよ!『風帝魔法・嵐天縛』!」

「ゴガッ!?」


 もう片方の戦場では、エアリスが実態を持った風が<深紅鬼>を縛り付け、その動きを封じていた。
 そしてそこに残りの二人が迫る。


「ありがとうエアリスっ!『刀王技・斬月』っ!」

「今度こそ止めは頂きっ!『白天の百迅』っ!」


 アヤカの攻撃により<深紅鬼>は曲線状に体を切り裂かれ重傷に。
 シロナの追撃で体中を切り裂かれ、あっさりと絶命した。

 シロナの使用した『白天の百迅』は『白天の千刃』を、威力・速度、ともに上回っている。そのぶん溜めが長いのでそこが欠点となっている。


「・・・新手は無し。全員、お疲れ様。初めてにしては上手くいったね。」

「ああっ、それは私が言いたかったのにっ!!」

「シロナがリーダーになってもやることは変わらないって言ったはずだよね?」

「そういう意味だったのっ? これじゃあお飾りだよぉぉぉ・・・!」


 シロナが、およよよよ・・・と泣き崩れた。
 敵が居なくなったが故の、いつものおふざけである。
 これでちゃんと周囲の警戒は続けているのがまた、シロナのシロナたる所以か。

 アッシュはシロナをチラチラと窺って心配そうにしているが、当のクロトは華麗にスルーしている。

 その後数秒で何事も無かったかのように起き上がったシロナに、アッシュは目を白黒させていた。
 アヤカと出会わなければ野垂れ死に、というのもあながち冗談ではないのだと思わされるくらいに騙されやすい男である。


「それにしても、この辺りまで来ると複数同時遭遇というのが普通なのね。私たちの運が悪かった訳ではないみたい・・・。」


 先日、<深紅鬼>三体とほぼ同時に遭遇して軽傷を負ったアヤカは、自分の見通しが甘かったのだと理解させられて反省した。
 頭では分かっていても、いつの間にか奥に入り込んでしまうのがここ、<深紅>地区にある<深紅鬼の巣窟>なのである。

 とはいえ、戦闘に支障がない軽傷の段階で撤退を決意したのは、流石の判断力だ。


「クロトさん、あいつ・・・<変異深紅鬼>の居場所は分かりますか?」

「ん、索敵範囲には居ないね。どこかを移動中だと思うんだけど・・・。」

「あなたの索敵能力・・・マップ、だったかしら? 本当に便利ですね。」


 エアリスの問いにクロトが答え、アンジェが羨ましそうな顔をしてそう言った。

 クロトは出発前にある程度自分の能力について明かしている。
 仲間に隠していては勝てる戦いも勝てなくなるので当然の措置だ。

 そもそも、その程度の信用も出来ない相手とパーティーを組むこと自体あり得ない。短い付き合いではあるが、クロトは四人を信用できると判断していたのだ。


「能力もそうだが、レベルの割に強いというのがクロトに持った印象だ。そちらのシロナに引けをとらないと言ってもいいだろうな。」


 アッシュが自分よりレベルが低いのに、異常な強さの片鱗を見せたクロトを素直に賞賛した。この男のこういう部分にアヤカは惹かれたのである。


「さて、それはどうかな? 僕はシロナに勝った試しがないからね・・・。」

「その代わり、負けたこともないけどねっ!」

「・・・よく分からない二人よね、クロトとシロナは。」


 アヤカがそんな感想を漏らしながらため息を吐いた、その瞬間だった。



 ドゴオオオオオオオオオオッ!!」


「「っ!?」」


 どこからか、聞き覚えのある轟音が聞こえてきたのは。

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