異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

創世神降臨

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 その頃、地上では人々がざわめいていた。

 一度途切れた映像が再度放映され、そこでとんでもないものを見てしまったのだ。

 それは・・・クラリアセレスがラファエルの体に入った瞬間である。


 ここまでの映像で創世神の覚悟を目の当たりにし、信仰する者が後を絶たない。

 また、彼女の親しみやすい性格もプラスにはたらいた。

 それにより、信仰には至らずとも悪く思う人は居ない。


 そんな彼女が既に降臨一歩手前まできていると分かれば、騒ぎになるのも当然だ。

 降臨を望まない者など、どこにもいないのだから。

 人々は今か今かと待ちわびながら、もう一つの映像、世界樹に注目している。


 そして・・・その時は訪れた。


 神界の映像が途切れてから数分後、世界樹の根元が突如輝き始めた。

 数秒後、その光が収まった場所には、創世真天使クラリエルの姿が。


 今この瞬間、人々は神話に語り継がれる歴史を目の当たりにしているのだ。

 彼ら彼女らの興奮は最高潮に達した。


 極めつけには、クラリエルが映像に向けて語り始めた。


<みなさん、始めまして。私は創世神クラリアセレスと申します。この度はご要望に応えて降臨させて頂くことになりました>


 人々は神という概念を知っていても、それは遥か遠くにあるものという認識。

 そんな神の中でも最高神たるクラリアセレスが自分たちに向けて話しかける。

 そんな状況に置かれて感動しない人は居ない。

 それが、クラリスであれば、尚更だ。


 生命を生み出し、遥か昔から人知れず支え続けてきた、人類の守護者。

 同僚の罪を背負い、苦悩し、身を削って人々を守ってきた、心優しき創世神。


 今の人々が暮らせる世界があるのは、クラリアセレスのおかげ。

 そんなクラリスに、誰しも感謝の言葉を投げかけた。


 中には涙を流してお礼を言う者も居る。

 そういった者たちは、クロトによりクラリスの恩恵を直に受けていると知ったのだ。


 例えば、死産しそうな運命を覆し、母子ともに救われた者。

 例えば、特殊条件を満たしたことで力を貰い、大切な人を守れた者。

 例えば、職に就けずにダンジョンで生計を立て、幸せな暮らしを送る者。


 今までは感謝を捧げるべき場所が無かった幸福。

 それらがクラリスの恩恵であるとなれば、それらの反応も頷ける。


 クラリエルはそれらの感謝が聞こえたのか、困ったような顔をしつつ話を続けた。


<まずは謝罪を。我々のミスで人々が魔の脅威に晒されるようになりました。申し開きのしようもございません。本当に、申し訳ありませんでした・・・!>


 クラリエルのあまりに悲痛そうな表情に、それを聞いた人の方が悲しくなった。

 頭を下げる彼女に、一人、また一人と、彼女を励ます言葉が贈られた。


<励ましのお言葉、ありがとうごいます。私自身、自分を許すことはまだ出来そうにありません。ですが・・・許される覚悟も、少しだけ持つことが出来ました>


 それは、クラリスの心に根付いた、小さな種子に過ぎない。

 だが、一歩も進んでいなかった彼女には、とても大きな一歩だった。


<最後になりましたが、温かく出迎えてくださった皆様に、心の底から感謝を。これからも、世界の為に粉骨砕身働いてゆきますので・・・どうかよろしくお願いします・・・!>


 クラリエルがそう締めたところで、世界中から歓声があがった。

 世界を揺らすほどの大歓声は、映像が消えてからもしばらく続いたのであった。









「お疲れ様、クラリエル。殆ど即興だったにしてはいい出来だったよ。」

「そう言って頂けると助かります。・・・とても緊張いたしました。」


 放映が終了し、一段落ついた世界樹の根元。

 クラリエルはほっと一息ついて・・・世界樹と地底樹の下へ向かった。


「私は・・・とんだ過ちを犯していたのございますね・・・。」

「ん、それが分かっただけでも、大きな進歩だと思うよ?」

「はい・・・。クロト、気づかせてくれたあなたには、心からの感謝を。」

「どういたしまして。もっとも、直接的には何もしていないんだけどね。」


 クロトは苦笑しながら、クラリスからの感謝にそう答えた。


 実は、降臨の映像が流れる前から、クラリエルは既に下界へ降りていた。

 クロトの通ってきた道を通り、世界樹の下に来ていたのだ。

 人々が見た降臨の映像は、加工されたものだったのである。


 では、その空白の時間に何をしていたのか。

 一つは軽い打ち合わせ。

 そしてもう一つが、世界樹と地底樹との再会だ。


 クラリスは己の子と触れあい、再会を喜び、その苦悩を知らされた。


「この子たちが、そんなに苦悩していたなんて、欠片も知りませんでした・・・!」

「そのことに関しては仕方ないよ。子とはいえ、直接的干渉が出来ないんだから。」


 己の愚かさを理解し、涙を流し始めたクラリエルを、クロトは優しくなぐさめた。


 時は、ほんの数十分前に遡る。

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