異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
514 / 600
第二部「創世神降臨」編

プロローグ26

しおりを挟む
 ここはアウターワールド、とある時間軸のとある場所。


「・・・いよいよね。」

「―――――」

「ええ。たとえ私たちの目的に必要なのだとしても、気分は良くないわよね。」

「私もアリスに同意します。何度もこれで良いのかと悩みましたから。」


 この場に居るのは全部で六人。

 全員がローブで顔を隠しており、そのローブの色は様々だ。


「きっと、私たちのやろうとしていることは間違っている。」

「それでも、彼らならきっと・・・乗り越えてくれるわよ。」


 緑ローブと黄ローブの二人がそんなやり取りを行った。

 互いに信頼していることがありありと分かる口調だ。


「彼女は・・・必ず取り戻してみせる。」


 そう呟いた紫ローブの者は、壁に掛かったとある色のローブを見つめていた。

 残りの者たちも、つられてそちらの方を見た。


「――――――」

「そうね。必ず勝ちましょう――――――全能神座争奪戦に。」


 銀のローブを纏った銀眼のアリスは、黒ローブの言葉にそう同意したのだった。










「くしゅん!!」

「カレン?風邪でもひいたの?服を脱いで寝たら駄目じゃないか。」

「私が自分で脱いだような言い方はやめろ!」


 同じベッドの上で目覚めたクロトとカレン。

 朝から元気な事である。


「昨夜は驚いたよ?急に部屋に押しかけてくるなんて・・・。」

「誰のせいだと思っているのだ!クロトが変なものを飲ませたからだろう!?」

「いや、飲ませたのは僕じゃなくてスティカだし・・・・。」


 昨晩カレンはスティカと食事をしたのだが、そこで妙な薬を飲まされたのだ。

 スティカに悪意などは無く、単純な好意だったので、カレンは気づけなかった。


 結論を述べると、その薬とお酒が妙な反応をして・・・ということである。

 なお、スティカは罪悪感から騎士団の宿舎に引きこもっている。

 クロトはいい薬だと考えて敢えて放置だ。


「だが、あの疲労回復役はクロトが開発したのだろう?」

「それはそうだけど、誰がどう使うかなんて僕が決められることでもないし。」

「くっ・・・!」


 カレンはクロトの責任を追及できないと理解して歯噛みした。

 体が火照ってどうしようもなかったとはいえ、昨夜のカレンは異常だった。

 その恥ずかしさから目を逸らしたくなるのも仕方ないことだろう。


「それにしても、カレンがあんなことを言うなんてね・・・。」

「あああああっ!?頼むからもう忘れてくれっ!!」


 そんなこんなで、創世神クラリアセレス大感謝祭は開幕の日を迎えたのだった。




「ところで、開会の挨拶まであと一時間も無いんだけど・・・どうしよう?」

「どうしようもこうしようもあるか!早く支度をしろっ!」








 創世神大感謝祭は一日目の正午から二日目の夜まで行われる。

 正午五分前には主催者代表、つまりはクロトから挨拶があると周知されている。

 遅刻しようものなら大問題だ。


「よし、準備完了だね。」

「どこも完了してませんわよ!?そのヘンテコなお面を早く外してくださいまし!」

「あ・・・間違えた。」


 クロトはお面を外し、アイテムボックスへ収納。

 あと一分で開催五分前のスピーチだというのに、何をやっているのやら。


「会長、財閥前の広場に人が集まり過ぎています。」

「んー、まだ建物内部に入れるわけにはいかないし、我慢してもらうしかないね。
 その代わりというわけでもないけど、開会後の誘導にできるだけ人員を割いて。」

「かしこまりました。」


 スイレンはクロトに伺いをたてた後、再び慌ただしく動き始めた。

 やはり、当日ともなれば不測の事態の一つや二つは起こるもののようだ。


「クロト、時間だよ!」

「ああ、分かった。ローナも持ち場に移動するように。」

「了解!」


 クロトはミカゲ財閥本社ビルの前にある大広場の中心へ転移した。

 そこにはステージが仮設されており、その影響で少々高い位置にある場所だ。


「ふぅ・・・。皆さん、ごきげんよう。ミカゲ財閥代表取締役のクロトです。」


 クロトがマイクで話し始めると、ステージの周囲に居た人々が一斉に静まった。


「時間も短いので、僕から言うことは一つだけ。
 この感謝祭は、創世神クラリアセレスへの感謝を捧げるお祭りです。
 事前に配布したクラリアセレスについての概要は読みましたよね?
 未だに救われない彼女に、許しと救いを与えるためのささやかな感謝を!
 ・・・創世神クラリアセレス大感謝祭、ただいまより開催いたします!」

「「「「「「「うおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」

「「「「「「「きゃあああああああああっ!!」」」」」」


 世界中に映像で発信されたクロトの開催宣言。

 その言葉に、世界中の人たちが声を揃えて叫びをあげたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を

榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。 16歳。 ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。 しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。 まったくふざけた話である。 まあだが別にいいさ。 何故なら―― 俺は超学習能力が高い天才だから。 異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。 そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。 これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。