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第二部「創世神降臨」編
先の展望
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レオこと白銀獅子『アルレオン』はヴィオラと召喚契約を結んだ。
特注の魔法陣は問題なく効果を発揮し、レオはヴィオラの召喚獣に。
「・・・レオ。」
「がうがう・・・!」
ヴィオラが小獅子形態のレオを抱き上げ、撫でまわす。
その表情には抑えきれない微笑みが浮かんでいる。
これを見た者は、ヴィオラが普段無表情とはとても思えないだろう。
一方のレオも、ヴィオラと魂の繋がりが出来たことに喜んでいる。
また、自分を覚えていてくれたヴィオラに懐いており、これでもかと甘えている。
クロトは邪魔にならないよう、こっそりとその場を去ったのだった。
場所は変わって孤児院の中。
「―――というわけで、将来的には高等教育を受けさせる場所も作りたいんだ。」
「そう、ですね。あの子たちも、いつかはここを巣立つ訳ですし・・・。」
エリスは昼寝をしている子どもたちの方に目を向けながらそう答えた。
クロトがエリスに話したのは、教育におけるこの先の展望。
現在存在する学園だけでは不足しているという判断のようだ。
「問題は山積みで、まだまだ先の話になると思う。
けれど、その時が来たら、エリスにも携わって欲しい。」
「はい。この子たちが一人前になった後でよろしければ、是非。」
エリスはさらっと条件を付けたが、これは本来恐るべき行動だ。
会長たるクロトにそのような要求をするなど、正気の沙汰ではなかろう。
「・・・うん、いい目をするようになったね。じゃあ、そういうことで。」
「ほっ・・・。」
クロトはエリスが譲れない一線を主張した時の瞳の輝きを見て笑みを浮かべた。
そして、エリスの要求を受け入れ、その話は終わりになった。
「さて、仕事の件はここまで。話は変わるけど、エリスは再婚しないの?」
「ぶっ・・・!?さ、さ、再婚、ですか・・・?」
エリスは一息つけたところで突然そんなことを言われて噴き出した。
「そ。あ、別に無理強いしようって訳じゃないよ?考えを聞いておきたいだけ。」
「は、はぁ・・・。再婚、再婚・・・。」
エリスはクロトの問いに対して数分間真剣に考えて、答えを出す。
「再婚は・・・したくありません。
他の男性を愛するなど、できそうもありませんから。」
「ん、了解。」
クロトはエリスの結婚に対するスタンスを把握して、深く頷いた。
彼女がどちらを選んでも問題はないので、特に思うところはないのだ。
「それじゃあ、僕はこれで。アリシアによろしく伝えておいて?」
「かしこまりました。会長を父親呼ばわりしないように言い聞かせておきます。」
クロトはエリスの言に苦笑いするしかなかった。
エリスの娘であるアリシアは、何故かクロトを父親扱いするのだ。
幼い頃に父を亡くして記憶にないからなのか、もしくは、他に理由があるのか。
クロトは駄目だとも言えず、どうしていいか分からないというのが本音だ。
結局クロトは碌な返しが出来ず、苦笑いのままその場から去ったのだった。
「抜刀神術・伊邪那岐!」
「!?」
ナツメは全極の島にて属性統べる天帝に刀技を放った。
それは大地を揺るがす絶大なる威力が籠った一撃であった。
純粋な威力であれば、クロト以外の誰にも出せない威力だろう。
その分、溜めが長く隙も大きいので、個人戦闘時に使うならば注意が必要だ。
丁寧に戦いを組み立て相手を大きく崩し、そこを突く時に使用するのが基本だ。
そうでなければ手痛いしっぺ返しを喰らうのだから。
属性統べる天帝は真っ二つになり、その命を散らした。
かつてはクロトも苦戦した相手だが、今のナツメには手頃な相手でしかない。
「はぁ・・・。レベルは・・・やはりまだ上がらないでござるよな・・・。」
つい先日レベル99になったばかりのナツメは、ため息を吐いた。
ここから先が、あと一歩のように見えて、それでいてとても長いのだ。
ナツメは先日、実家を訪れて父であるシュウヤに勝負を挑んだ。
結果は、ナツメの四勝一敗。
彼女は超えるべき壁を一つ越えたのだ。
シュウヤに言わせれば、ナツメは能力と技術、ともに人外領域にあるという。
そう褒められた時は、柄にもなく喜んだことが記憶に新しい。
だが、しかし。
「それなら、この差は一体、どうやって埋めればいいのでござるか!」
ナツメは自分が弱いことを知っている。
仲間内では誰と戦っても、勝率は芳しくないのだ。
たまに一本とれるかどうか、といったところだ。
そのことが常に、心の内側に蟠っている。
自分だけ置いていかれてしまうのでは、という悪い想像が消えてなくならない。
「ふぅ・・・少し落ち着くでござる。」
「そうだね。この飴でも食べて心を静めるといいよ。」
「これは好物の林檎味でござるな。ありがとうでござる。」
ナツメは林檎の甘い味を堪能して心を落ち着かせることに成功。
そして、天帝が居なくなった空間で、素振りを始めるのだった。
特注の魔法陣は問題なく効果を発揮し、レオはヴィオラの召喚獣に。
「・・・レオ。」
「がうがう・・・!」
ヴィオラが小獅子形態のレオを抱き上げ、撫でまわす。
その表情には抑えきれない微笑みが浮かんでいる。
これを見た者は、ヴィオラが普段無表情とはとても思えないだろう。
一方のレオも、ヴィオラと魂の繋がりが出来たことに喜んでいる。
また、自分を覚えていてくれたヴィオラに懐いており、これでもかと甘えている。
クロトは邪魔にならないよう、こっそりとその場を去ったのだった。
場所は変わって孤児院の中。
「―――というわけで、将来的には高等教育を受けさせる場所も作りたいんだ。」
「そう、ですね。あの子たちも、いつかはここを巣立つ訳ですし・・・。」
エリスは昼寝をしている子どもたちの方に目を向けながらそう答えた。
クロトがエリスに話したのは、教育におけるこの先の展望。
現在存在する学園だけでは不足しているという判断のようだ。
「問題は山積みで、まだまだ先の話になると思う。
けれど、その時が来たら、エリスにも携わって欲しい。」
「はい。この子たちが一人前になった後でよろしければ、是非。」
エリスはさらっと条件を付けたが、これは本来恐るべき行動だ。
会長たるクロトにそのような要求をするなど、正気の沙汰ではなかろう。
「・・・うん、いい目をするようになったね。じゃあ、そういうことで。」
「ほっ・・・。」
クロトはエリスが譲れない一線を主張した時の瞳の輝きを見て笑みを浮かべた。
そして、エリスの要求を受け入れ、その話は終わりになった。
「さて、仕事の件はここまで。話は変わるけど、エリスは再婚しないの?」
「ぶっ・・・!?さ、さ、再婚、ですか・・・?」
エリスは一息つけたところで突然そんなことを言われて噴き出した。
「そ。あ、別に無理強いしようって訳じゃないよ?考えを聞いておきたいだけ。」
「は、はぁ・・・。再婚、再婚・・・。」
エリスはクロトの問いに対して数分間真剣に考えて、答えを出す。
「再婚は・・・したくありません。
他の男性を愛するなど、できそうもありませんから。」
「ん、了解。」
クロトはエリスの結婚に対するスタンスを把握して、深く頷いた。
彼女がどちらを選んでも問題はないので、特に思うところはないのだ。
「それじゃあ、僕はこれで。アリシアによろしく伝えておいて?」
「かしこまりました。会長を父親呼ばわりしないように言い聞かせておきます。」
クロトはエリスの言に苦笑いするしかなかった。
エリスの娘であるアリシアは、何故かクロトを父親扱いするのだ。
幼い頃に父を亡くして記憶にないからなのか、もしくは、他に理由があるのか。
クロトは駄目だとも言えず、どうしていいか分からないというのが本音だ。
結局クロトは碌な返しが出来ず、苦笑いのままその場から去ったのだった。
「抜刀神術・伊邪那岐!」
「!?」
ナツメは全極の島にて属性統べる天帝に刀技を放った。
それは大地を揺るがす絶大なる威力が籠った一撃であった。
純粋な威力であれば、クロト以外の誰にも出せない威力だろう。
その分、溜めが長く隙も大きいので、個人戦闘時に使うならば注意が必要だ。
丁寧に戦いを組み立て相手を大きく崩し、そこを突く時に使用するのが基本だ。
そうでなければ手痛いしっぺ返しを喰らうのだから。
属性統べる天帝は真っ二つになり、その命を散らした。
かつてはクロトも苦戦した相手だが、今のナツメには手頃な相手でしかない。
「はぁ・・・。レベルは・・・やはりまだ上がらないでござるよな・・・。」
つい先日レベル99になったばかりのナツメは、ため息を吐いた。
ここから先が、あと一歩のように見えて、それでいてとても長いのだ。
ナツメは先日、実家を訪れて父であるシュウヤに勝負を挑んだ。
結果は、ナツメの四勝一敗。
彼女は超えるべき壁を一つ越えたのだ。
シュウヤに言わせれば、ナツメは能力と技術、ともに人外領域にあるという。
そう褒められた時は、柄にもなく喜んだことが記憶に新しい。
だが、しかし。
「それなら、この差は一体、どうやって埋めればいいのでござるか!」
ナツメは自分が弱いことを知っている。
仲間内では誰と戦っても、勝率は芳しくないのだ。
たまに一本とれるかどうか、といったところだ。
そのことが常に、心の内側に蟠っている。
自分だけ置いていかれてしまうのでは、という悪い想像が消えてなくならない。
「ふぅ・・・少し落ち着くでござる。」
「そうだね。この飴でも食べて心を静めるといいよ。」
「これは好物の林檎味でござるな。ありがとうでござる。」
ナツメは林檎の甘い味を堪能して心を落ち着かせることに成功。
そして、天帝が居なくなった空間で、素振りを始めるのだった。
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