異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

お風呂

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 異世界ジェネシスアイではお風呂に入るという習慣がない。

 何故かというと、生活魔法という便利なスキルだけで事足りるからだ。

 お風呂に入る、すなわち入浴という行為は金持ちの道楽と言ってもいい程に。


 だがしかし、クロトは日本人としての気質を持っているので例外だ。

 時間のある日の夜は、大抵入浴する。

 この日も例に漏れず、家に備え付けた大きな浴場で入浴していた。


(ふぅ・・・。やっぱり、疲れをとるにはこれがいいよね・・・。)


 独自に開発したシャンプーを使い、頭を洗う。

 艶のある黒髪が肩まで伸びているのでやや手間は掛かるが、手慣れた様子だ。

 備え付けのシャワーで流して、前にある鏡を見る。

 そこには、女性と見紛いそうな顔の造形をしたクロトの姿が映っていた。


(はぁ・・・。変わらないなぁ・・・。)


 相変わらずの中性的な容姿にため息を吐くクロト。

 とうの昔に諦めはついているが、全く気にならないという訳ではないのだろう。


 髪を切ればいいのではと思うかもしれないが、それはそれで違和感があるのだ。

 体つきも女性らしさがあるので、尚更に。

 それに、アクアを始めとした全員に止められるので踏み切れないでいる。


「はぁ・・・。」


 ため息を吐いて思考を切り替え、体を洗い始めるクロト。

 そんなところに背後から忍び寄ってくる存在が。


「クロト様、お背中をお流しいたします。」

「はぁ。ラファエル、ツッコミどころは多々あるけど、タオルくらい巻こう?」

「・・・?」


 残念ながら、クロトから継承した記憶にそんな情報は無かったようだ。

 恥ずかしそうに胸を隠すくらいなら使うべきだと言いたいクロトであった。


「・・・それで、アクアの方は良いの?」

「はい。アクア様は御就寝なされましたので、クロト様の下に・・・。」

「その言い方、これから僕と不貞行為をはたらくように聞こえるからやめてね?」


 アクアが寝ている間に云々と考えると、妙な背徳感が内側から湧いてくる。

 それはラファエルも同じだったようで、その身を震わせた。

 クロトは後ろを振り向かないが、鏡に映っているのでその様子が分かった。


(アンバランスだけど、生まれたての赤子が右も左も分からないのと同じかな。)


 そう考え、なおの事人間らしいと結論付けた。

 半ば現実逃避気味な思考ではあったが。


「はぁ・・・。ラファエル、いつまでそこに居るの?」

「っ・・・申し訳ありません、直ぐにお流しいたします。」

「はぁ・・・。」


 クロトは大きくため息を吐いた。

 指示を誤解されてしまったのは自分の言い方が悪かったのもあるので諦めた。

 倫理的によろしくないのは確かだが、言ってしまえばそれだけなので。


「では、失礼します。」

「ちゃんとタオルは持ってたんだね・・・。」


 アイテムボックスからタオルを取り出したラファエルにクロトは呆れ声だ。

 だが、緊張しているせいでそんな様子には気づかない彼女。

 そのままクロトの体を洗い始めた。


「「・・・・・・。」」


 タオルが体を擦る音だけが響き、辺りを沈黙が支配する。


「・・・クロト様は、肌がお綺麗なのですね。」

「よく言われるよ。でもそれを言うなら、ラファエルも綺麗だよ?」

「っ!?」


 ラファエルの体は確かに綺麗で、確実に上となるとクラリスくらいだろう。

 体の造形もそうだが、肌の質と色彩も。

 クロトは客観的に指摘したに過ぎないが、ラファエルは激しく動揺させられた。

 結果として、再び沈黙が支配する。


「っ・・・。」

「・・・。」


 ラファエルは自分の体がクロトを求めてしまっていると理解している。

 だが、本当の意味では理解出来ていなかったのかもしれない。


 初めは少しクロトの背中から距離をとって、手を伸ばして洗っていたのだ。

 しかし、いつの間にかクロトとの距離は迫っており、目と鼻の先に。

 ラファエルが少しずつ近づいていたのだが、本人は無意識である。


 体が相手を求めるというのはそういうことなのだ。


 背中をシャワーで洗い流している頃、ついにラファエルの体がクロトに密着する。

 当然の如く、その豊満な胸がクロトに押し付けられた。


「・・・んっ。」

「!?ラファエル、少し離れて・・・?」

「申し訳ありませんっ・・・!体がいうことをきかず・・・!?」


 ラファエルはクロトの要求に応じて体を離そうとしたが・・・失敗。

 寧ろ、逆にクロトの体を抱き締め始めてしまった。

 クロトの前に手を回し、胸と体を背中に押し付け、頬を密着させた状態に。


 しばらくその状態でとどまった後、体を交えようとクロトを押し倒す。


 クロトが抵抗しないのは、偏にラファエルへの罪悪感からだ。

 ここまで自由意思を縛ってしまうなど、彼にとって最大限の禁忌。

 例え殺されても文句は言えないと思っていたのである。


 そして二人の体は交わるべく近づき・・・・・・



 ・・・・・・ラファエルが、バタン!と倒れた。


「きゅぅぅぅ・・・。」

「・・・のぼせて倒れたみたいだね。助かった、のかな・・・?」


 クロトはラファエルを分身に任せ、外に運ばせたのだった。

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