異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

幻想神器

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 哀れなゲイザーはクロトたちに狩り尽くされ、ついには全滅した。


「うん、任務完了を確認。みんなご苦労さま。報酬を渡すからこっちに来て?」


 クロトはそう告げたが、誰も何も答えない。

 どうしたのかと首を傾げていると、アクアが代表で疑問を呈した。


「クロトさん、そちらの剣は一体?威圧感で苦しいのですが・・・。」

「あ、ごめん、忘れてた。『ひと時の眠りにつけ、ツクヨミ』・・・どう?」

「あ・・・威圧感が収まって、今までの剣のようになりました。」


 アクアがそう言った直後、ディアナとインフィが座り込んだ。

 半ば腰が抜けているらしく、恥ずかしく思いつつも立ち上がれないでいる。

 どうやら刺激が強すぎたようだ。

 アクアやエメラも冷や汗をかくレベルで強い威圧だったので、仕方なかろう。


「ん・・・。インフィ、立てる・・・?」

「あ、はい・・・ありがとうございます、エメラさん、クロトさん・・・!」


 インフィは差し伸べられたクロトとエメラの手をとって起き上がった。


「ディアナは・・・もうしばらくそのままで居るかい?」

「なんでよっ!恥ずかしいから私も起き上がらせて!」

「はぁ・・・仕方ないね。」

「何で私だけそんな扱いなのよっ!」


 ディアナは不満げにしながらもクロトの手を取って起き上がった。


「ところでディアナ、最近僕のことを避けてないかな?」

「え?・・・そんなつもりはないから、気のせいなんじゃないかしら・・・?」

「ふーん・・・?」


 ディアナが嘘を吐いているようには見えなかったクロト。

 とりあえずは後回しにするという結論を出した。


「それじゃあ、報酬を配るよ。ディアナにはおまけとして鬼仮面をあげよう。」

「要らないわよそんな物っ!」


 かくして、対神部隊の初仕事は、無事成功したのだった。










 クロトはゲイザーの死体を持ってグレンの工房を訪れていた。


「グレンさん、神水晶を持ってきましたよ。」

「わざわざすまんな。もう少しだけ研究の余地が残っていてな。」


 クロトはグレンの工房の中で、ゲイザーの死体をポンポンと出していった。


「随分多いな。そういえば、剣の方はどうだ?」

「大変素晴らしい性能でした。・・・僕の瞳を求められた時は驚きましたが。」

「俺も瞳が素材になるとは予想外だ。愛の血肉を混ぜたのが問題だったか。」

「そんなものまで混ぜたんですか・・・。」


 新しい武器、幻龍神の月剣と幻龍神の星剣は、一際特殊な素材を用いた。

 そのうちの一つが、クロトの瞳だ。


 クロトは工房を訪れ、出会い頭にグレンから「目をよこせ」と言われた。

 思わずポカンとしてしまったクロトは悪くないだろう。

 当然の事ながら、瞳は再生済みだ。


 二本の剣は、起句と終句が存在し、言葉を紡がなければならない。

 それをしないと、元の剣を少し強化した性能しか出せないのだ。

 なんとも奇妙な剣になったものである。


 ちなみに、紡ぐべき言葉は、剣の気分によって変わることもある。


 ・・・そう、僅かながらに、剣に意志のようなものが宿っているのだ。

 この結果にはクロトもグレンも驚かされた。


「あ、ふっ飛ばしておいてなんですが、工房は無事に直ったみたいですね。」

「ああ。お前さんの財閥の者がやってきて手伝ってくれたからな。」

「その節はご迷惑をお掛けしました。」

「気にするな。予想はしていたことだ。」


 グレンはそう言って苦笑した。


 例の如く、剣の仕上げで工房はふっ飛んだ。

 それはもう、綺麗とすら言えるレベルで、ふっ飛んだ。


 原因は、クロトと剣の意志がぶつかりあったことだ。

 結果としてクロトは二本の剣を支配下に置くことに成功した。

 が、しかし、その時の余波で工房が吹っ飛んだ、と。


 数日間研究したグレンの見立てでは、ダメもとで混ぜた神結晶と創世結晶。

 そこにクロトの瞳が干渉することで、妙な変化をしたせいだ、とのこと。


「つまり、お前さんの瞳が悪い。」

「いや、そんなものを混ぜたグレンさんも半分責任がありますよ?」


 二人は責任の押し付け合いをしているが、ただの戯れだ。

 シロナのことを話してから、二人の関係は多少馴れ馴れしくなった。


「神結晶や創世結晶を神天魔の法衣に組み込むことは出来そうですか?」

「・・・分からんが、恐らく現状では無理だな。」

「そうですか・・・。」


 クロトは残念に思いつつ、それも仕方ないかと諦めた。

 ただでさえ、創世神器たる神天魔の法衣はおかしな進化をしているのだ。

 そこへ更におかしな素材を混ぜたら、どうなるのか見当もつかないのだろう。





「世界ごと消滅させてもいいのであれば、やってみないでもないが・・・。」

「やめてくださいね、絶対に。」


 クロトはグレンを必死で押しとどめるのであった。

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