異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

不安の種

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 梟の止まり木亭には、王都の様子を見にきたヴィオラやナツメも居た。

 それと、クロトに会いにきたローナも。


「クロト!プリズム鉱石が・・・!」

「ああ。隕石がプリズム鉱石そのものだったから、回収したよ?」

「うぅ・・・ボク、役立たずだったよ・・・。」


 頼まれていたプリズム鉱石をクロトに独力で手に入れられてしまった。

 それ故に立場が無いローナは、ガックリと肩を落としてしまった。


「そう落ち込まないで。ローナにも頼んではいたけど、依頼という訳でもないし。」

「それでも・・・自分で自分を情けなく思うのはやめられないよ・・・。」


 これはしばらくそっとしておくべきだと考え、一先ず放置を決め込んだクロト。


「ナツメ、ヴィオラ。二人はやっぱり、王都の様子を見にきたの?」

「・・・相違ない。」

「そうでござるよ。あのピカッと光る流れ星とやらがどうなったかを確認に。」


 どうやら、王都から離れた町でも見えていたようだ。

 あれだけの大きさだったのだから、ある意味当然の事ではあるが。


 クロトはことの顛末を簡単に説明した。


「・・・と、ヴィオラがベッドで悶えている間にそんなことがあったんだよね。」

「・・・!?何故それを・・・!?」

「ヴィオラ殿も乙女でござるなぁ・・・。」


 ナツメがニヤニヤしながらヴィオラを揶揄う。


「ナツメがリンカと恋バナ?をしている間の出来事でもあるね。」

「聞いていたのでござるかっ!?」

「・・・ナツメも人の事を言えない。」


 クロトは苦笑しながらも、気になって居たことを尋ねることに。


「ところで、カレンを見てないかな?」

「・・・?今日は会っていない。」

「拙者も、今日は見掛けておらぬでござるな・・・?」

「そっか・・・。」


 クロトは残念そうにしながらも、仕方ないかと諦めた。


 何故カレンのことを聞いたのか。

 それは、裏世界から戻ってきた時のことが理由だ。


 表世界から裏世界に行くときは、カレンの反応はドレファトの町にあった。

 だが、裏世界から表世界に帰ってきたとき、カレンの反応がどこにもなかった。


 神の瞳で見ることが出来ない場所はそれなりにある。

 特殊な結界の中や、ダンジョン内の空間が、その代表例だろう。

 カレンがダンジョンに入ることはそれほど珍しい話でもない。

 そのため、クロトも特に気にしていなかったのだが・・・。


「カレン殿がどうかしたでござるか?」

「いや・・・。ただ、妙な予感がするというか・・・。」

「クロト殿の予感は冗談では済まされないでござるよ・・・?」


 ナツメの言う通りである。

 だが、少し行方不明だからと捜索するのは、あまりにも過保護だろう。

 カレンはS+ランクの冒険者なので、そうそう危険な目には遭わないはずだ。

 そもそも、一人だと危険な場所には、一人で近づかないはずだ。


「だからまあ、大丈夫だとは思うんだけど・・・。」

「そもそも、ダンジョンに入っているなら、探すことも難しいですわよね?」

「ん・・・。どこに、いるか・・・分からない、から・・・。」


 クロトの神の瞳は神の名な恥じない効果があるが、決して万能ではない。

 どんなスキルにも、必ず欠点は存在するのだ。


「最後に確認したのがドレファトでしたら・・・天の塔、でしょうか?」

「・・・転移で他の町へ出向いた可能性もある。」


 アクアの予想に待ったを掛けたのはヴィオラ。

 カレンは転移魔法を使う為に、最後の目撃情報は当てにならないのだ。

 転移魔法陣なら、クロトが使用を感知できないでもないのだが。


「よく考えれば、不自然ではあるんだよね・・・。」

「不自然、と言いますと?」

「カレンは、隕石が落ちてきた段階では、外に居たはずなんだ。」

「・・・あっ。」


 クロトが言いたいのは、こういうことだ。


 隕石が落ちてきた時は、カレンはダンジョン外に居た。

 神の瞳で確認しているので、それは間違いない。

 つまり、隕石を確認したのに王都へ行かず、ダンジョンに入った、と。

 果たしてカレンがそんなことをするのかどうか。


「でも、偶然隕石に気づかなかった可能性もありますわよね?」

「そうだね。後は、僕に任せておけば大丈夫と判断したのかも・・・。」


 クロトとしても、カレンの位置情報を超える情報は持ち合わせていない。

 それ故に、断言できずにいる。


「案外、数日後にひょっこり帰ってくるかもしれないでござるよ?」

「それもそうだね。推測を重ねるだけ無駄かも。」


 そうして、その話はそこで打ち切られた。

 何だかんだでみんな、カレンの強さを信頼しているのだ。

 前衛での安定感は、クロトに匹敵するのだから。










 隕石騒動から二週間後。

 カレンは未だに帰ってきていない。

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