異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

クロトの逆襲

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 アクアがクロトを揶揄って慌てさせるという、大変珍しい状況。

 だが、いつまでもやられっぱなしのクロトではない。


「・・・そんなに言うなら、この後すぐ、どうかな?」

「はい。私は大歓迎です。」


 アクアは相変わらず妖しい笑みを浮かべながら、クロトの提案を受け入れた。

 その瞬間、クロトがニヤリとしたため、アクアは嫌な予感を察知。

 思わず腰が引けて頬が引きつった。


「それじゃあ早速・・・。」

「えっ・・・!?クロトさん、何をっ・・・!」


 クロトがアクアの服に手をかけ、脱がせ始めた。

 忘れてはならないのは、現在地が天下の往来であるということ。

 幾ら見えていないとはいえ、流石に無理である。

 アクアは面白いくらいに取り乱してクロトを諫め始める。


「ダメですっ・・・!こんな人目のある場所では・・・!」

「うん?でもさっき、この後すぐ、って言ったよね?」

「それは・・・!」

「それで、アクアは頷いたよね?もしかして僕に嘘を吐いたの?」

「っ!?」


 クロトの顔が途端に、凍える程冷たいものになる。

 アクアは心臓がとまりそうになった。


 クロトに嫌われる。


 そう考えたら、もう駄目だった。


「嘘は、ついていません・・・。」

「・・・うん?じゃあ、この手をどけて?」

「・・・はい。」


 アクアは自分の服を押さえていた手を、ゆっくりと退けた。

 クロトはそれを見た後、もう一度確認した。


「・・・いいよね?」

「っ・・・はい。」


 アクアは真っ赤になりながらも拒絶はしなかった。

 恥ずかしくはあるが嫌ではないし、元々、身から出た錆である。

 周囲には殆ど人が居ないことも決心できた理由だろう。


 クロトはドキドキさせられながらも平静を装い、アクアの服に手を掛ける。

 アクアはピクリと動いたが、何も言わない。


 少しずつ、少しずつ、焦らすように、アクアの服をずらしていくクロト。


「・・・・・・。」

「っ、っ・・・!!」


 アクアは羞恥に襲われながらも、クロトとの交わりを想像し、体が火照る。

 いよいよ肌色の部分が露わになるmというタイミングで、クロトは手を止めた。

 そしてほぼ同時に、成り行きを見守っていたエメラから声が掛かる。


「ん・・・。そろそろ・・・お仕置き、は・・・やめて、あげて・・・?」

「そうだね・・・そろそろいいかな。」

「ふぇ・・・?」


 アクアはポカンとした顔でクロトを見つめた。

 アクアの様子を見たクロトは不敵な笑みを浮かべ、こう告げた。


「僕を揶揄うなら、これくらいの意趣返しは覚悟しないとね?」

「えっ・・・・・・あっ、ああっ・・・!?」


 アクアはクロトに揶揄われたのだと理解して、思わず声を上げた。

 微妙に色っぽい声だったのは、焦らされたせいだろうか。

 そして、すっかりそういう気分になってしまっているので、体は疼いたまま。

 アクアは無意識のうちに、自分の体を抱いた。


「・・・ひょっとして、本当にこんな往来で、そんなことするつもりだったの?」

「ッッ!?ち、違います!!そんなことは考えてません!」

「ふーん?その割に、随分と体が火照っているみたいだけれど?」

「こっ、これはっ・・・!?」

「つまり、そういう気分になってたんでしょ?」


 アクアはそれ以上言い返せなかった。

 どう言い訳しても退路の無い道に追い込まれているのだから。


「未だに乱れた服を直そうとしないのも、その証拠かな?」

「あっ・・・!」


 アクアは慌てて乱れた服を直し始めた。

 もう恥ずかしいなんてものではない。

 今すぐに逃げ出したい気分だが、間違いなくクロトに捕まるので、それは不可。


「さて、アクアへのお仕置きも済んだし、宿へ帰ろうかな。」

「ん・・・。」

「あぅぅぅ・・・!!」


 アクアもいい線まではいっていたのだが、クロトの方が一枚上手であった。

 だが、あれだけクロトを慌てさせることができたのだから、上出来であろう。

 ・・・カウンターで大ダメージを喰らいはしたが。


「あ、そういえば・・・今晩はあけといてね、アクア?」

「ふえっ!?は、はい・・・!勿論・・・!」


 アクアは直ぐに返事をした。

 エメラは少しだけ羨ましそうにしていたが、クロトは一人しか居ないので。


「エメラはごめんね?今度時間をつくるから、許して?」

「ん・・・。待ってる、から・・・。」


 エメラは頬を染めて承諾した。


「いくらエメラが複数同時を好きであっても、ね・・・?」

「ん・・・!?それ、は・・・違う、よ・・・!?」


 あらぬ誤解を解こうとクロトに抗議するエメラ。

 アクアはそれを、目を白黒させて眺めていたのであった。

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