異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

クロトVSシロナ人形

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 クロトが神界突破で上昇させた能力値は9999。

 これは神界突破による上昇値の下限である。

 これならほんの数日眠るだけで済むだろうし、クールタイムも三か月ほど。

 大したリスクではないと思われる。


「あ、クロト!青髪の子が死にそうだよ?助けに行かないの!?」

「それなら、助けに行かせてくれるのかな?」

「・・・ごめん、敵として出ている以上、それは無理みたい。」


 申し訳なさそうなシロナ人形に、苦笑するしかないクロト。


「アクア!亜神界突破を!神界と繋がれば声が届く!」


 おおよその事情を察してアドバイスを送るクロト。

 シロナ人形は安堵したような表情だ。


 シロナ人形は、クロトがシロナについて知っていることしか再現できない。

 だが、クロトは確信している。

 シロナはそういう反応をするに違いないのだと。


「それにしても、一対二だと厳しいね。」

「うーん・・・私は戦闘力が無いし、引き分けになるかも?」

「僕の偽者に幸運は訪れないのかな?」

「あははっ!分かってるくせに!偽者のクロトの幸運なんて、願わないよ!」


 現在クロトが拮抗出来ているのは、そこに原因がある。

 クロト人形にシロナ人形に持つ幸運がはたらいたら、圧倒的劣勢になる。

 だが、それは起こりえない。

 シロナが自分の意志で、そんなことをするはずが無いのだから。


「クロトの事なんだから、そろそろ誘導による詰めを完成させるよね?」

「ご名答。アクアを待つ必要があるけどね。」


 クロトは戦闘序盤から、天運の穴を突くために奔走していた。

 どれほど運が良くても、起りえない事象は起こらないという穴を。


 一つずつ、逃げ道となり得る可能性を塞いで、追い詰めていく。

 それは、大部屋に存在する通路を、封鎖していくイメージ。

 そのためには神界突破による底上げが必要不可欠だったのだ。


「ヒューヒュー!でも、なんか焼けちゃうなぁ・・・。」

「・・・僕の記憶から再現したのに、何故そんなことを・・・?」

「・・・・・・あれっ?おかしいな。そんなはずは無いんだけど・・・?」


 クロトとシロナ人形が、結界に守られている、星十二天「山羊」を見据えた。

 いきなり見られてポカンとしている山羊。

 どうやら、山羊が何かした訳ではなさそうだ。


 数秒後、シロナ人形がポンと手を打って、声を発した。


「あっ、分かった!クロトが私にやきもちを焼いてほしいと思ってたんだ!」

「それは違うよ。大体、シロナのやきもちって・・・・・・気味が悪い。」

「ちょっ!?そこは嘘でも認めてほしかったな!」

「・・・僕が嘘を嫌いなのは知ってるよね?」

「そうだった!?」


 クロトは呆れたようにため息を吐いた。

 相変わらず攻撃が当たらないことに対するため息も混ざっていた。


「創世十字閃・神断」

「っ・・・あれ?」


 クロト人形の攻撃ははずれてしまった。

 クロトはシロナを見る。


「あっ、あははは・・・。ついつい無意識のうちに・・・。」

「本格的に本物のシロナっぽくなってるんだけど?」

「ああ・・・まあ、久しぶりの再会に介入は無粋、なんて、私の思考だよね。」

「うん。僕はそこまで思ってないし、シロナがそんな主義だとも知らないから。」


 いよいよ空気が怪しくなり始めた。

 クロト人形は完全に蚊帳の外である。


 クロトは試しに、自分が答えを知らない質問をぶつけてみた。


「シロナ、君は今どこにいるのかな?」

「私?私は今、深碧龍の巣に居るけど?」

「・・・どこにあるの、それ?」

「どこって・・・アウターワールド?」


 察するに、アウターワールドとは、クロトが言うところの外側の世界だろう。

 クロトはそんな呼び名を知らないし、深碧龍というのも初めて聞いた。

 つまり、シロナ人形に反映されるはずのない情報だ。


「・・・言いたいことは色々あるけど、会ってから話すことにするよ。」

「何か嫌な予感がするんだけどなぁー、って・・・。」

「・・・・・・。」

「何か言ってよクロト!?」


 そうこうしている間に、アクアがクロトの元へやってきた。


「クロトさん!ご迷惑をおかけしましたっ!」

「気にしないで?今回ばかりは仕方が無いし、結果オーライだから。」


 思いがけずクラリスの心を揺らすことに成功しただけでも、収支はプラス。

 アクアが死にかけたときは流石に動揺したが、それはそれ。


「クラリスには、またしても借りが出来てしまったね・・・。」

「はい。一生かかっても返せないくらいの恩を受けました・・・!」


 アクアも、例の計画に対する決意を新たにしたようだ。


「クラリス・・・覚悟して待っていてね・・・?」


 クロトは、それはそれは美しい笑みを浮かべたのだった。

 誰も幸せになれない結末など、ぶち壊してしまおうという思いを胸に抱いて。












「クシュンッ!・・・誰かが噂を?」


 クラリスは神界にて、頬を染めながらくしゃみをしていた。

 未だに、アクアの心からの感謝に動揺させられたままのようだ。


「それにしても、あの愛称は・・・いえ、考えるより手を動かさなければ。」


 考えたら恥ずかしい記憶を思い出し、余計に頬が赤くなる気がしたクラリス。

 クラリスは再び、システムを弄り始めたのだった。








「ああああっ!?やっぱりあれは口説いていたんですよね!?そうですよね!?」


 結局思い出して悶え始めてしまったクラリスであったとさ。

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