357 / 600
第二部「創世神降臨」編
星十二天「山羊」
しおりを挟む
エメラとマリアはそれぞれ、クロトの姿をしたナイトメアドールと戦っていた。
こちらはマリアの戦場。
「っ・・・!弱体化していますのに、戦い辛いですわねっ・・・!」
「・・・・・・。」
ナイトメアドールは何も話さない。
「天魔剣・天刃!」
「・・・・・・。」
「あああっ!なんて戦い辛いっ・・・!」
マリアの剣技を軽々と回避した人形だが、やはり無言。
顔はクロトと同じで、尚且つ無表情。
それなのに、受ける印象が違い過ぎて、違和感がつきまとう。
クロト人形は、大きく弱体化している。
だがそれも当然の事。
まんまクロトであったら、勝つことなど不可能に近いだろう。
そもそも、創世スキルの隠密神など、再現できるはずも無いのだが・・・。
「・・・極天龍十六夜連閃・神絶」
「喋りましたわっ!?」
マリアは回避しながら驚愕した。
喋れるなら、何故初めから喋らないのか、と。
戦闘中には殆ど話さないクロトを真似たのかもしれないが、妙に芸が細かい。
ちなみに、今の剣技がクロト人形に使用できる限界。
神天一閃や創世一閃などの剣技は、コピーできなかったらしい。
そして、それにプラスして、クロトを真似た立ち回り方。
・・・ただ、マリアはそこにも違和感を覚えている。
「天魔法術・天縛&魔縛!」
「・・・・・・。」
クロト人形左へ回避したが、マリアは今ので確信した。
「やはり・・・。クロトだったら今の攻撃は、フェイントを交えて回避しますわ。」
「・・・・・・。」
どうやら、再現が中途半端なせいで、動きがぎこちないらしいのだ。
クロトの思考を一部しか再現できなかった理由は、押して知るべし。
システムさえオーバーヒートさせた思考能力は、伊達ではない。
ただ、問題なのは・・・
「そんなぎこちない動きでっ、どうしてこんなに手強いんですのっ!?」
「・・・・・・。」
「何か言ってくださいましっ!やり辛くて仕方ないのですわっ!」
マリアから頼まれたからでは無いだろうが、クロト人形が口を開く。
「・・・マリアは無職。」
「誰が無職ですのっ!?そんなところまで真似しなくても良いんですのにっ!」
「・・・マリアはツンデレ。」
「・・・・・・。」
「・・・マリアは可愛い。」
「・・・あああああっ!?もう何も喋らないでくださいましっ!?」
複雑な気分になったマリアは、形勢を傾けるべく、天魔乙女モードを発動した。
クロト人形もそれしか言わない辺り、クロトの頭の中が伺えるのだった。
「僕としても凄く微妙な気分なんだけど。その変について何か言うことは?」
「グルルルルル・・・。」
観戦していたクロトに剣を突き付けられて、思わず謝罪した山羊であった。
こちらはエメラの戦場。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
両者無言のまま、互角の戦いが続いているが、ややエメラが優勢か。
クロトとエメラはお互いの戦闘スタイルについて知り尽くしている。
だが、クロト人形が完璧に模倣出来て居ないぶん、エメラに分がある。
そして何より、エメラには概念ごと断ち切ってしまう、剣技がある。
クロト人形は、模倣スキルを失っては無力になるため、それを警戒している。
そんな要因もあって、エメラ優勢という現状である。
このまま戦いが進めば、間違いなくエメラが勝つ。
だが、クロト人形に模倣以外のスキルなど無いので、打つ手はない。
・・・いや、一つだけ存在した。
言葉という武器が。
「・・・エメラお姉様。」
「んっ・・・!?」
エメラは動揺して、少し動きが鈍ってしまった。
他の人ならともかく、クロトの顔で言われると、戦闘中でもこの反応になる。
「・・・エメラ姉さん。」
「んんっ・・・!?静かに、してっ・・・!」
ややクロト人形に形勢が傾いたが、そこはエメラ。
不意打ちならともかく、そう長々と動揺を引きずりはしない。
すぐにエメラの優勢に戻る。
「・・・エメラお姉様。」
「・・・・・・。」
戦闘開始から十数分後、エメラは既に、欠片も動じなくなっていた。
「ねえ、もう少し感情豊かにエメラのことを呼べないの?」
「グルルルルル。」
あれで限界なんです、とでも言いたそうな表情の山羊。
「もっと、さ・・・エメラお姉様、愛してるよ?くらいは言って欲しいな。」
「グルルルル・・・!?」
そんなの無理!とばかりに、激しく首を横に振る山羊であった。
「全く・・・。なら僕がやろうかな。エメラお姉様!頑張って・・・わっ!?」
顔を赤くしたエメラから、クロトへ向けて短剣が飛んできた。
そう言えば、投的術のスキルも持っていたなぁ、と思い出したクロトであった。
こちらはマリアの戦場。
「っ・・・!弱体化していますのに、戦い辛いですわねっ・・・!」
「・・・・・・。」
ナイトメアドールは何も話さない。
「天魔剣・天刃!」
「・・・・・・。」
「あああっ!なんて戦い辛いっ・・・!」
マリアの剣技を軽々と回避した人形だが、やはり無言。
顔はクロトと同じで、尚且つ無表情。
それなのに、受ける印象が違い過ぎて、違和感がつきまとう。
クロト人形は、大きく弱体化している。
だがそれも当然の事。
まんまクロトであったら、勝つことなど不可能に近いだろう。
そもそも、創世スキルの隠密神など、再現できるはずも無いのだが・・・。
「・・・極天龍十六夜連閃・神絶」
「喋りましたわっ!?」
マリアは回避しながら驚愕した。
喋れるなら、何故初めから喋らないのか、と。
戦闘中には殆ど話さないクロトを真似たのかもしれないが、妙に芸が細かい。
ちなみに、今の剣技がクロト人形に使用できる限界。
神天一閃や創世一閃などの剣技は、コピーできなかったらしい。
そして、それにプラスして、クロトを真似た立ち回り方。
・・・ただ、マリアはそこにも違和感を覚えている。
「天魔法術・天縛&魔縛!」
「・・・・・・。」
クロト人形左へ回避したが、マリアは今ので確信した。
「やはり・・・。クロトだったら今の攻撃は、フェイントを交えて回避しますわ。」
「・・・・・・。」
どうやら、再現が中途半端なせいで、動きがぎこちないらしいのだ。
クロトの思考を一部しか再現できなかった理由は、押して知るべし。
システムさえオーバーヒートさせた思考能力は、伊達ではない。
ただ、問題なのは・・・
「そんなぎこちない動きでっ、どうしてこんなに手強いんですのっ!?」
「・・・・・・。」
「何か言ってくださいましっ!やり辛くて仕方ないのですわっ!」
マリアから頼まれたからでは無いだろうが、クロト人形が口を開く。
「・・・マリアは無職。」
「誰が無職ですのっ!?そんなところまで真似しなくても良いんですのにっ!」
「・・・マリアはツンデレ。」
「・・・・・・。」
「・・・マリアは可愛い。」
「・・・あああああっ!?もう何も喋らないでくださいましっ!?」
複雑な気分になったマリアは、形勢を傾けるべく、天魔乙女モードを発動した。
クロト人形もそれしか言わない辺り、クロトの頭の中が伺えるのだった。
「僕としても凄く微妙な気分なんだけど。その変について何か言うことは?」
「グルルルルル・・・。」
観戦していたクロトに剣を突き付けられて、思わず謝罪した山羊であった。
こちらはエメラの戦場。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
両者無言のまま、互角の戦いが続いているが、ややエメラが優勢か。
クロトとエメラはお互いの戦闘スタイルについて知り尽くしている。
だが、クロト人形が完璧に模倣出来て居ないぶん、エメラに分がある。
そして何より、エメラには概念ごと断ち切ってしまう、剣技がある。
クロト人形は、模倣スキルを失っては無力になるため、それを警戒している。
そんな要因もあって、エメラ優勢という現状である。
このまま戦いが進めば、間違いなくエメラが勝つ。
だが、クロト人形に模倣以外のスキルなど無いので、打つ手はない。
・・・いや、一つだけ存在した。
言葉という武器が。
「・・・エメラお姉様。」
「んっ・・・!?」
エメラは動揺して、少し動きが鈍ってしまった。
他の人ならともかく、クロトの顔で言われると、戦闘中でもこの反応になる。
「・・・エメラ姉さん。」
「んんっ・・・!?静かに、してっ・・・!」
ややクロト人形に形勢が傾いたが、そこはエメラ。
不意打ちならともかく、そう長々と動揺を引きずりはしない。
すぐにエメラの優勢に戻る。
「・・・エメラお姉様。」
「・・・・・・。」
戦闘開始から十数分後、エメラは既に、欠片も動じなくなっていた。
「ねえ、もう少し感情豊かにエメラのことを呼べないの?」
「グルルルルル。」
あれで限界なんです、とでも言いたそうな表情の山羊。
「もっと、さ・・・エメラお姉様、愛してるよ?くらいは言って欲しいな。」
「グルルルル・・・!?」
そんなの無理!とばかりに、激しく首を横に振る山羊であった。
「全く・・・。なら僕がやろうかな。エメラお姉様!頑張って・・・わっ!?」
顔を赤くしたエメラから、クロトへ向けて短剣が飛んできた。
そう言えば、投的術のスキルも持っていたなぁ、と思い出したクロトであった。
0
お気に入りに追加
6,336
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る
六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。
だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。
それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。
世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。
快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。
●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。