異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

星十二天「山羊」

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 エメラとマリアはそれぞれ、クロトの姿をしたナイトメアドールと戦っていた。

 こちらはマリアの戦場。




「っ・・・!弱体化していますのに、戦い辛いですわねっ・・・!」

「・・・・・・。」


 ナイトメアドールは何も話さない。


「天魔剣・天刃!」

「・・・・・・。」

「あああっ!なんて戦い辛いっ・・・!」


 マリアの剣技を軽々と回避した人形だが、やはり無言。

 顔はクロトと同じで、尚且つ無表情。

 それなのに、受ける印象が違い過ぎて、違和感がつきまとう。


 クロト人形は、大きく弱体化している。

 だがそれも当然の事。

 まんまクロトであったら、勝つことなど不可能に近いだろう。

 そもそも、創世スキルの隠密神など、再現できるはずも無いのだが・・・。


「・・・極天龍十六夜連閃・神絶」

「喋りましたわっ!?」


 マリアは回避しながら驚愕した。

 喋れるなら、何故初めから喋らないのか、と。

 戦闘中には殆ど話さないクロトを真似たのかもしれないが、妙に芸が細かい。


 ちなみに、今の剣技がクロト人形に使用できる限界。

 神天一閃や創世一閃などの剣技は、コピーできなかったらしい。


 そして、それにプラスして、クロトを真似た立ち回り方。


 ・・・ただ、マリアはそこにも違和感を覚えている。


「天魔法術・天縛&魔縛!」

「・・・・・・。」


 クロト人形左へ回避したが、マリアは今ので確信した。


「やはり・・・。クロトだったら今の攻撃は、フェイントを交えて回避しますわ。」

「・・・・・・。」


 どうやら、再現が中途半端なせいで、動きがぎこちないらしいのだ。

 クロトの思考を一部しか再現できなかった理由は、押して知るべし。

 システムさえオーバーヒートさせた思考能力は、伊達ではない。


 ただ、問題なのは・・・


「そんなぎこちない動きでっ、どうしてこんなに手強いんですのっ!?」

「・・・・・・。」

「何か言ってくださいましっ!やり辛くて仕方ないのですわっ!」


 マリアから頼まれたからでは無いだろうが、クロト人形が口を開く。





「・・・マリアは無職。」

「誰が無職ですのっ!?そんなところまで真似しなくても良いんですのにっ!」

「・・・マリアはツンデレ。」

「・・・・・・。」

「・・・マリアは可愛い。」

「・・・あああああっ!?もう何も喋らないでくださいましっ!?」


 複雑な気分になったマリアは、形勢を傾けるべく、天魔乙女モードを発動した。


 クロト人形もそれしか言わない辺り、クロトの頭の中が伺えるのだった。








「僕としても凄く微妙な気分なんだけど。その変について何か言うことは?」

「グルルルルル・・・。」


 観戦していたクロトに剣を突き付けられて、思わず謝罪した山羊であった。











 こちらはエメラの戦場。





「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


 両者無言のまま、互角の戦いが続いているが、ややエメラが優勢か。


 クロトとエメラはお互いの戦闘スタイルについて知り尽くしている。

 だが、クロト人形が完璧に模倣出来て居ないぶん、エメラに分がある。


 そして何より、エメラには概念ごと断ち切ってしまう、剣技がある。

 クロト人形は、模倣スキルを失っては無力になるため、それを警戒している。


 そんな要因もあって、エメラ優勢という現状である。


 このまま戦いが進めば、間違いなくエメラが勝つ。

 だが、クロト人形に模倣以外のスキルなど無いので、打つ手はない。


 ・・・いや、一つだけ存在した。

 言葉という武器が。


「・・・エメラお姉様。」

「んっ・・・!?」


 エメラは動揺して、少し動きが鈍ってしまった。

 他の人ならともかく、クロトの顔で言われると、戦闘中でもこの反応になる。


「・・・エメラ姉さん。」

「んんっ・・・!?静かに、してっ・・・!」


 ややクロト人形に形勢が傾いたが、そこはエメラ。

 不意打ちならともかく、そう長々と動揺を引きずりはしない。

 すぐにエメラの優勢に戻る。





「・・・エメラお姉様。」

「・・・・・・。」


 戦闘開始から十数分後、エメラは既に、欠片も動じなくなっていた。











「ねえ、もう少し感情豊かにエメラのことを呼べないの?」

「グルルルルル。」


 あれで限界なんです、とでも言いたそうな表情の山羊。


「もっと、さ・・・エメラお姉様、愛してるよ?くらいは言って欲しいな。」

「グルルルル・・・!?」


 そんなの無理!とばかりに、激しく首を横に振る山羊であった。




「全く・・・。なら僕がやろうかな。エメラお姉様!頑張って・・・わっ!?」


 顔を赤くしたエメラから、クロトへ向けて短剣が飛んできた。

 そう言えば、投的術のスキルも持っていたなぁ、と思い出したクロトであった。

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