異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

お出かけと買い物

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「済まないな、クロト。付き合わせてしまって。」

「僕が悪いんだから、気にしないで?」


 クロトとカレンは、カレンの服を買いに来ていた。

 昨日、カレンの服が傷んでしまったので、どうせならと、新しい服を買いに来た。

 クロトはその付き添いである。


 服が傷んだ理由は・・・・・・いうまでもあるまい。


 クロトはカレンの手を取った。


「クロト?」

「折角のデートなんだから。・・・だめかな?」

「いや、駄目などではない。少々気恥ずかしいが・・・悪くは無い。」


 カレンはクロトの手を握り返して、そう答えた。




「カレン、この服なんてどう?」

「それは・・・少し肌の見える部分が多いからな・・・。」

「じゃあ、こっちは?」

「そっちは・・・少々色合いが派手だな。もう少し地味な方が・・・。」


 カレンは、余り目立つ格好を好まない。

 目立ち過ぎず、可愛さの欠片も無い、実利がある格好を好む。


 それもまた、カレンの魅力の一つであることに間違いはない。

 だが、偶には可愛い服装もしてみて欲しい、というのがクロトの密かな願い。


「それなら・・・こっちはどう?」

「っ・・・なんだその服は?そんな物、私に似合う訳があるまい。」

「そうかな・・・?」


 クロトが示したのは、最近若い女性に大人気の、可愛い系の服。

 カレンは苦虫を噛み潰したような顔になって、顔を逸らしている。

 クロトはそういう服装の人が好きなのかと考え、自分の似合わなさを悲しむ。


「これも駄目か・・・。なら、こっちで決まりで。」

「ん?ぶっ・・・!なんだそれはっ!?似合う訳があるまい!?」


 横目で確認して、思わず吹き出してしまった。

 クロトがこれで決まりと言って手に取った服は、所謂、ゴスロリ。


「そんなことないよー。きっとカレンに似合うよー。・・・ぷっ。」

「クロトっ!私を揶揄っているのか!?・・・こんなものっ!」


 カレンはクロトから服を取り上げ、元の場所へ戻した。

 その顔は、羞恥からか、真っ赤になっていた。


「くっ・・・!クロトにそんな揶揄われ方をするなんて・・・!」


 カレンは自分の無骨さを呪った。

 カレンの体は、普通に女性らしいのだが・・・。


 確かに、クロトがそんな風に揶揄うなど、滅多に無い事。

 ショックを受けてしまっても仕方が無いかもしれない。


 本当は、この上ない愛情表現なのだが、とても分かり辛い。

 好きな人ほど揶揄う傾向にあるので、それだけカレンが大好きなのだろう。


 そのことに気づかないカレンだが、気づいたら気づいたで真っ赤になりそうだ。

 羞恥では無く、照れから来る赤さである。


「うーん・・・なら、こっちはどうかな?」

「・・・ほう、色は中々良いかもしれないな。だが、スカートはな・・・。」

「凄く似合うと思うんだけど・・・。」


 クロトが本気で勧めているのは、黒とグレーの中間くらいの色合いプラス銀色。

 上下セットの服で、スカートは、日本で言うタイトスカートに近い物である。


「落ち着いていて、クールな感じが良いと思ったんだけど・・・。」

「それは確かにそうだが・・・膝が見えてしまうのは・・・。」


 カレンは普段、スカートという物を着用しない。

 そのため、躊躇いは強そうだ。


「とりあえず、試着してみたらどう?それで駄目ならやめればいいから。」

「・・・それもそうだな。」


 クロトの勧めで、試着してみることにしたカレン。


 そして数分後。


「・・・ど、どうだ、クロト?」

「・・・・・・途轍もなく似合ってる。」

「ほ、本当か!?」

「うん、本当だよ。僕がそういう嘘を吐かないことは、カレンも知ってるよね?」

「うっ・・・それは確かにそうだが・・・。」


 カレンは、クロトの言葉に嘘が無いと信じたようだ。


「そんなに似合っているのか・・・?」

「うん、それはもう。これ、買おう。」

「なっ・・・まだ決めたわけでは・・・!」

「何なら、僕が買ってプレゼントするから。それで、時々着てくれれば・・・。」

「っ・・・!」


 照れ笑いを浮かべるクロトに、胸の鼓動が大きく跳ねた。

 そこまでする程、今の自分の姿を見たいのかと思うと、心臓の音がうるさい。


 カレンの服装は、とにかく格好良い。

 それでいて、太腿が見えそうになるスカート。

 それを違和感なく手で隠そうと努力している姿は、何とも可愛らしい。


 麗しさと可愛さが同居した服装が、クロトの好みに合致した。


 常に自分の理性を刺激し続けるその姿は、いっそ甘美な感覚をクロトに齎した。

 ギリギリ理性を保てるくらいであることがまた、高ポイントであるらしい。


 結局、カレンは自分でその服を購入した。

 流石にそのまま着ては帰らないようだが。




 他にも適当に服を買ってから、店を出て宿へ帰る二人。


「・・・カレン、今度見せてね?」

「っ、ああ・・・今度、な・・・。」


 肯定の返事を聞いたクロトは、えらく上機嫌になった。

 その様子を見たカレンもまた、胸をドキドキさせながらも、上機嫌になったとか。

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