異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
312 / 600
第二部「創世神降臨」編

渦潮地帯

しおりを挟む
 クロトたちは、数十分単位で襲って来る魔物たちを、次々と迎撃していった。


「極天龍十六夜連閃・神絶!」

「水神魔法・縦横無刃!」


 クロトがデビルオクトパス皇帝種の足を全て切り落とし、本体にも八連撃。


 アクアが、素早いジェットフィッシュ皇帝種を基点に魔法を発動。

 敵は、逃げ場を全て氷刃で囲まれて、呆気なく詰み。


 両者とも、ほぼ同時にしとめた。


「・・・ん、ようやく一息つける、かな?」

「はい、周辺に魔物の反応はありませんから。」


 度重なる襲撃を乗り越え、辺り一帯に魔物が居ない空白地帯が出来た。

 海の魔物は感知が得意な種が多いので、次々と襲撃にあう。

 中には当然の如く皇帝種も混ざっており、普通の冒険者ならすぐに音を上げる。


 世界七大危険地帯は伊達では無いのだろう。


「クロトさん、MPは・・・・・・あ、永久機関がありましたね。」

「まあね。そういうアクアは・・・そもそもMPを使わないんだったね。」

「はい、水瓶がありますから。」


 この二人は、何の遠慮も無くMPを使える組み合わせである。

 そのため、継続戦闘に問題は無い。

 逆に、MPに制限がある者では、早々に撤退することになりそうなのだが。






 ダイダル海域を進むこと数日。

 アクアの感知した場所までやって来た。


 前方には、激しい渦潮が幾つも存在しており、とても船では渡れそうにない。

 だがしかし、ほんの一部だけ、渦潮の無い箇所があった。


「ちょうど、大型船一隻分、ってところかな・・・。」

「ええ。この船でも、問題なく通れそうですね。」


 意を決して、そのスペースを船で進んでいく。

 近くには魔物の反応も無く、拍子抜けするほど簡単に、渦潮地帯を抜けた。

 感知できない魔物の存在も考慮していたクロトだが、あまりに呆気ない。


 渦潮地帯を抜けた先は、今までと何ら変わらない海。

 ここから深部、即ち海底を目指すことになる。


 と、その前に、海域の内側から渦潮地帯を観察していたアクア。

 渦潮内部である海の中央に何かを見つけて、クロトに報告する。


「クロトさん、あちらの方向の海面に何かあります。」

「ん?・・・本当だね、近づいてみようか。」


 クロトは船を操作し、その場所へ近づいていく。


 そこにあったのは、三つの巨大結晶。

 小さな足場に固定されており、下半分海に浸かっている。


 一つ目は、減衰結晶。二つ目は、渦潮結晶。三つ目は、大海結晶。


 前半二つは未見の結晶なので、クロトは有難くいただいた。

 全部回収してしまうと渦潮が無くなるかもしれないので、流石にそれは自重。

 渦潮が無くなることでどんな問題が起こるのかが一切不明なので、安全策だ。


(減衰結晶はともかく、渦潮結晶は・・・何に使えるかな・・・?)


 大したものは思いつかないので、グレンに相談しようと決めて、収納。


 いよいよ深部を目指すのだが、その前にアクアへ確認。


「アクア、この辺りは海の底まで感知できないかな?」

「・・・・・・はい、かなり深いようで、私の探知ですら、底まで届きません。」

「やっぱりそうだよね・・・。」


 アクアでも無理なので、クロトの神の瞳でも、当然分からない。

 そう上手くはいかないことは予想済みなので、ガッカリすることも無い。


「ええ。ですが、途中までの探知結果ですと、強力な魔物が反応にあります。」

「未見の魔物も居る?」

「はい、それなりの数が存在しています。」


 それは重畳とばかりに微笑みを浮かべるクロト。

 クロトにとって未見の魔物は、積極的に狙いたい獲物でしかない。

 たとえそれが、天種であっても。


「ちなみに、天種の反応はどれくらい?」

「えっと、ですね・・・。」


 アクアが少々口ごもりながら、探知の結果を告げる。


「ここの海底に存在するのは、皇帝種九割と天種一割、ですから・・・。」

「・・・なるほど。とんでもない数の天種が生息していそうだね。」


 総数が数えきれないのだから、一割でもかなりの数だろう。

 海方面で天種が現れたことが無いのは、密集しているからのようだ。


 もっとも、密集しているという表現が似合う程、狭い場所ではないのだが。


「天種は全て未見としても、皇帝種級にも未見か・・・。楽しい冒険になるね。」

「一般の方でしたら、絶望に泣き崩れるレベルだと思いますけどね・・・。」


 クロトの言葉に、アクアは苦笑しながら答えた。


 一般人でなくとも、放り出されたら絶望する環境なのだが・・・。


 人外の領域へ完全に踏み込んでしまったアクアは、それに気づかない。

 もうすでに、クロトのズレ具合を非難できないだろうと思われる。


「さて・・・。アクア、心の準備は良い?」

「はい!いつでも大丈夫です!」


 流石に深海を進む船は無いので、生身で潜るしかない。

 それゆえの、心の準備の再確認だ。




(アクアとなら、どんな危険地帯でも、何の問題も無い・・・!)


(クロトさんとなら、深海だろうと、どこまでも一緒に行きます・・・!)



 二人は互いに微笑み合い、頷き合って、心の準備を確認。



「じゃあ、行くよ?」

「はい!行きましょう!」




 クロトとアクアは手を繋いで・・・・・・大海へ飛び込んだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

カップル奴隷

MM
エッセイ・ノンフィクション
大好き彼女を寝取られ、カップル奴隷に落ちたサトシ。 プライドをズタズタにされどこまでも落ちてきく。。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。 苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。 ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

婚約も結婚も計画的に。

cyaru
恋愛
長年の婚約者だったルカシュとの関係が学園に入学してからおかしくなった。 忙しい、時間がないと学園に入って5年間はゆっくりと時間を取ることも出来なくなっていた。 原因はスピカという一人の女学生。 少し早めに貰った誕生日のプレゼントの髪留めのお礼を言おうと思ったのだが…。 「あ、もういい。無理だわ」 ベルルカ伯爵家のエステル17歳は空から落ちてきた鳩の糞に気持ちが切り替わった。 ついでに運命も切り替わった‥‥はずなのだが…。 ルカシュは婚約破棄になると知るや「アレは言葉のあやだ」「心を入れ替える」「愛しているのはエステルだけだ」と言い出し、「会ってくれるまで通い続ける」と屋敷にやって来る。 「こんなに足繁く来られるのにこの5年はなんだったの?!」エステルはルカシュの行動に更にキレる。 もうルカシュには気持ちもなく、どちらかと居言えば気持ち悪いとすら思うようになったエステルは父親に新しい婚約者を選んでくれと急かすがなかなか話が進まない。 そんな中「うちの息子、どうでしょう?」と声がかかった。 ルカシュと早く離れたいエステルはその話に飛びついた。 しかし…学園を退学してまで婚約した男性は隣国でも問題視されている自己肯定感が地を這う引き籠り侯爵子息だった。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★8月22日投稿開始、完結は8月25日です。初日2話、2日目以降2時間おき公開(10:10~) ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

進学できないので就職口として機械娘戦闘員になりましたが、適正は最高だそうです。

ジャン・幸田
SF
 銀河系の星間国家連合の保護下に入った地球社会の時代。高校卒業を控えた青砥朱音は就職指導室に貼られていたポスターが目に入った。  それは、地球人の身体と機械服を融合させた戦闘員の募集だった。そんなの優秀な者しか選ばれないとの進路指導官の声を無視し応募したところ、トントン拍子に話が進み・・・  思い付きで人生を変えてしまった一人の少女の物語である!  

専属奴隷として生きる

佐藤クッタ
恋愛
M性という病気は治らずにドンドンと深みへ堕ちる。 中学生の頃から年上の女性に憧れていた 好きになるのは 友達のお母さん 文具屋のお母さん お菓子屋のお母さん 本屋のお母さん どちらかというとやせ型よりも グラマラスな女性に憧れを持った 昔は 文具屋にエロ本が置いてあって 雑誌棚に普通の雑誌と一緒にエロ本が置いてあった ある文具屋のお母さんに憧れて 雑誌を見るふりをしながらお母さんの傍にいたかっただけですが お母さんに「どれを買っても一緒よ」と言われて買ったエロ本が SM本だった。 当時は男性がSで女性がMな感じが主流でした グラビアも小説もそれを見ながら 想像するのはM女性を自分に置き換えての「夢想」 友達のお母さんに、お仕置きをされている自分 そんな毎日が続き私のMが開花したのだと思う

Mな生活

ちくたく
恋愛
S彼女とのプレイでMとして成長する物語です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。