異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

男の後始末

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 朝食を済ませた後、クロトはファーナに尋ねた。


「ファーナ、君の父親に当たる男の事なんだけど・・・。」

「はい、あの男がどうかしましたか?」

「適当に対応しておいてもいいかな?」

「・・・えっ?ええ、良いですけど・・・?」


 ファーナはよく分からないまま、そう答えたのだった。









 スソウ村から数キロ離れた場所にて。


 ファーナの父親に当たる男、ウーズは、ニヤニヤ笑いを浮かべていた。


「あの程度の金であんないい女を抱けるなんて、そう無いんだがなぁ・・・。」


 最初に妊娠させられたのは運が良かった。

 そう思いながら、既に死んだと聞いているファーラの事を惜しむ。


「死んじまったのは残念だが、あいつの娘もいい具合に育ってきたし・・・。」


 その娘、ファーナのことを考えながら、更にいやらしい笑みを浮かべる。


「今回あたり、適当に脅して、無理やり抱いちまうか・・・?」


 ファーラのことを思い出し、妊娠させられれば言いなりになると判断。

 実行に移そうと考えていた。

 もう四十台も近いというのに、下衆なことだ。


「しかし馬鹿だよな、ガキの為に言いなりになるなんてよ・・・。」

「確かに、合理的判断では無いよね。」

「おう、てめぇもそう思うか?・・・・・・あん?誰だてめぇ?」

「僕の事かな?僕は普通の冒険者だよ?」


 いつの間にか隣に居た黒髪の男、クロトに警戒を向けるウーズ。

 自身がS-ランクの冒険者であったので、容易に接近を許したことに驚愕。

 咄嗟に跳び退り、剣を抜いて臨戦態勢となっている。


「・・・んなわけねぇだろ。てめぇが普通なら、誰もが普通だ!」

「え?・・・そんなにおかしいかな・・・?」


 自分の格好を顧みるクロト。


 それを見ながら、ウーズは全身から冷や汗を流していた。


 隙だらけに見えて、まるで隙が無い。

 完全無欠と評したくなるほどの人間。

 自分が強者であるがゆえに、どうあがいても勝てないと分かったウーズ。


 強者には従うのが基本。

 ウーズはクロトに目的を問いただした。


「てめぇ、俺に何の用だ?」

「うん?死んでもらいに来ただけだよ?」

「なっ!?」


 予想はしていたが、余りにもあっさりと告げられ、目を見開く。


「お、おい・・・待てよ。冗談だよな?俺が何をしたってんだ!?」

「何って・・・ついさっき、君が口走っていたよね?」

「はぁ?それがなんだ!?ちゃんと金も渡してたし、良いじゃねぇか!?」

「まあ、そのおかげで、ファーナが生きていけたのは否定しないよ?」

「そらみろ!俺は悪くねぇ!」


 確かに、そう言えなくも無い。

 それについては、クロトも認めるところ。


 ウーズを端的に言い表すなら、小悪党、だろうか。

 罰は受けるにしても、いきなり殺される人間かと言えば、違うかもしれない。


 だが、クロトにそんな理屈は通用しない。


「良い悪いの問題では無いんだよね・・・。」

「じゃ、じゃあ、何だってんだ!?」


 クロトは、男が理解できないのを理解できない、と言いたげに、口を開く。


「合理的に考えて、君が生きていると邪魔。それだけの理由だよ?」

「・・・・・・。」


 ウーズは絶句した。

 目の前の存在が、より一層化け物に見えて、体が震えはじめる。


「しょ、正気か!?S-ランクの俺を、そんな理由で殺したら・・・!」

「どうでもいいし、どうとでもなるよ?・・・ほら?」


 クロトが見せたのは、SSランクの冒険者カード。


 この世界でSSランクというのは、生半可なものでは無い。


 その者の行動基準が、善の概念として規定されることもある。

 SSランクの行動なら、どんなものでも一切咎めることは出来ない。


 それほどに凄まじい身分なのだ。


 それ故に、滅多なことではSSランクになどなれないのだが・・・。

 クロトにそれを言っても仕方あるまい。


「ほ、ほんもの・・・!」


 カードの偽造はあり得ない。

 仮に出来たとしても、世界を敵に回すような行いだ。

 なにより、自分の勘が、嘘では無いと告げている。


「おい・・・!待ってくれ!?俺は強者だから、何をしても許されるんだ!」

「なら、より強い僕に、何をされても問題は無いよね・・・?」


 段々と距離を詰めてくるクロトに、ウーズは背を向けて逃げ出した。


「ガハッ!?」

「うん、実験は成功だね。」


 ウーズは逃げ始めてすぐ、断末魔の声を上げて、一瞬で絶命した。








「絶対圧縮・・・溜めれば溜める程威力増、か・・・。悪くないね。」



 クロトはそう呟いて、バラバラになったウーズを処分。

 そのままスソウ村へ戻ったのだった。

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