異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

スカイブルナの町

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 ここはスカイブルナの町。

 町全体に、水色が多くみられることが特徴と言える。


「おい、そこのお前!いい女連れて・・・ん?ギルドカード?」


 町に入って数分でガラの悪い輩に絡まれたクロト。

 皆まで言わせる前に、ギルドカードを見せた。


「・・・SSランクっ!?大変失礼いたしましたっ!!」


 絡んで来た男は、一目散に逃げて行った。




 旧ブルータル王国領域内には、とある特徴がある。

 それは、強き者こそ正義、という風潮だ。


 自分よりも強き者は、最大限、敬う必要がある。

 言い換えるならば、強者に寛容だともとれる。


 ただしその分、場合によっては、強者にも相応の義務が課せられる。

 S+ランク冒険者「無双」のアルレインが投獄されたのも、その辺に理由がある。


 また、強さと言っても色々で、戦闘力は勿論、経済力なども評価の対象となる。


 この風潮のある地域をカラーヴォイス領に編入させるのは、とても楽だった。

 財閥の力と戦闘力を見せたら、誰もが簡単に編入に納得したのだ。

 闇魔法を使う必要もほとんど無かった。


 良くも悪くもあるこの風潮は、一朝一夕に変わるものでは無い。

 そのためクロトは、無理に変えようとはしなかった。



 クロトに絡んで来た男が逃げ出したのには、そういう理由があったわけだ。

 もっとも、絡んで来た奴にSSランクだと知らせたら、普通は逃げると思うが。


 次からはS+ランクのカードを見せようかと思案するクロトであった。


 ちなみに、SSランクとは名誉職のような意味合いもある。

 そのため、きっちりS+ランクのカードも持っているのだ。




「エメラ、この町で情報収集ついでに、デートしよっか?」

「ん・・・。私も、したい・・・。水色、で・・・綺麗な、町、だから・・・。」

「そうと決まれば、早速・・・。」


 クロトはエメラの手を取って、再び一緒に歩き始めた。




「そう言えば、エメラは化粧の類はしていないよね?」

「ん・・・。あれ、は・・・苦手、だから・・・。」

「折角だし、寄ってみない?」


 クロトが指し示したのは、化粧品店。

 ミカゲ財閥の系列店だが、かなり下の方にあたる店だ。


「ん・・・?私、は・・・・・・。」

「少しだけ、だから。お願い、エメラ。」


 クロトは、エメラが嫌がっている訳ではないと察して、背中を押す。

 エメラは、少々恥ずかしがっているだけなので、悪くない選択だ。


「ん・・・。少しだけ、だよ・・・?」

「ああ。ありがとう、エメラ。」


 そうして二人は、化粧品店の中へ。


「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ。」


 入った途端に店員が声を掛けて来て、すぐさま誘導された。

 エメラを見て、化粧のし甲斐があると思ったのだろう。


 あっという間に個室へ連れていかれたエメラだった。




 その後、紆余曲折を経て、試しに簡単な化粧をされてみる事になったエメラ。

 初めは遠慮していたのだが、店員さんの熱意に押し切られた形だ。


 本人の希望もあるが、エメラに厚化粧は似合わないと判断した店員。

 本当に、気持ち程度の化粧を施していく。

 かなり手慣れていて、腕も良いようだ。


 数十分後には、エメラの化粧が完了した。


「さっ、終わりましたよ。こちらの鏡をご覧ください。」

「ん・・・。」


 エメラは妙に緊張しながら、鏡を覗いてみる。



 するとそこには、眠そうなエメラルド色の瞳をした、美人がいた。


「・・・・・・・。」


 エメラは絶句している。

 目の前に映る顔が、自分の顔だとは、到底思えなかった。


 エメラの顔は、元々かなり綺麗だ。

 彼女自身にその認識は無いが、十人中九人は、綺麗だと答えるだろう。



 そして、エメラの目の前には、一段階綺麗になったと思える自分の顔が。

 殆ど手を加えていないにも関わらず、この変化。

 その手の事情に疎いエメラでも、化粧を舐めていたことは理解できた。


「いかがですか、お客様?」

「ん・・・。綺麗、に・・・なって、る・・・。」

「意中の方を魅了するためにも、これくらいはした方が良いですよ?」


 そこでエメラは考え込んだ。

 クロトは自分の顔が今のままでも、変わらずに好きで居てくれる。

 それはもう、間違いない。

 だが、今の自分を、どう思われるのだろうか。


 エメラは散々考えた末、化粧した姿をクロトに見せないことを決めた。

 何となく、その方が良いような気がした、というだけの理由だ。


 店員は残念そうにしていたが、渋々引いてくれた。


 クロトとしても、あくまで化粧の存在を知ってもらいたかっただけ。

 それゆえ、特に不満も無かった。


(何と言うか、エメラはそのままのエメラが、一番良い気がするんだよね・・・。)


 どんなエメラでも変わらず好きなままでいるのは間違いない。

 だが、エメラが化粧というのは、やはり違和感がある。


 なら、初めから勧めるなと言いたいが、そこはそれ。

 肌の手入れくらいは覚えておいて損は無いと考えた。



 エメラはその後、クロトの目論見通り、少しだけ肌に気を遣うようになった。

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