異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

セーラ宅にて

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「クロト、あなたにもあんな一面があったんですのね?」

「・・・子供たちと遊んでいた時の事?」

「そうですわ。とても楽しそうでしたわよ?」


 どうやら、マリアとカレンも、その様子を見掛けたらしい。


「クロトも、もっと笑えばいいと思うのだが・・・。」

「そんな普段から笑えないよ・・・?」

「だが・・・あの楽しそうなクロトには、グッと来るものがあってな・・・。」


 カレンは、クロトの楽しそうな様子を見て、ドキドキさせられたようだ。


「カレンが中々動きたがらなかったせいで、苦労しましたわ・・・。」

「っ・・・そういうマリアこそ、見惚れていたではないか!」

「なあっ!?ななな何を出鱈目なことをっ!?」

「あの時は、何を話しかけても反応しなかったな。」

「・・・・・・。」


 マリアはそっぽを向いて沈黙してしまった。

 思い当たることがあったようだ。


「そう言えば、エメラがあれほど感情豊かなのも、珍しいな。」

「ん・・・?そう、なの・・・?」

「ああ、眠そうな瞳は相変わらずだったが、表情はころころ変わっていたな。」

「ん・・・。自覚、は、無い・・・。」


 エメラは首を捻っている。

 本当に分からないといった反応だ。


 そうこうしている間に、宿替わりのセーラの家へ到着。


「あっ、帰って来たのです!」

「遅かったな。もうすぐ夕食が完成するから、少しだけ待っていてくれ。」

「献立は、私特製のシチュー。クロト君から貰った食材も使っているわよ。」


 美味しそうな匂いに、マリアのお腹が鳴る。


「っ!?いいい今のはわたくしではっ!?」

「・・・マリア、見て見ぬふりをしてあげてたのに、何で自滅してるの?」

「っ・・・!?」


 クロトたちは、自滅したマリアは放置して、席について料理を待つ。

 食材についてはクロトも提供。

 財閥の中の、農業系列企業が栽培した野菜などが例に挙げられる。

 はっきり言うと、かなり美味しい。

 現代農法に魔法を加えると、とても危険だと分かった。


 セーラ達エルフ組三人も、料理に満足し、食事を終えた。

 クロトはそのタイミングで、明日からのことを切り出す。


「セーラさん、早速明日から調査を始めてみたいと思います。」

「あらっ、そんなに急がなくても。切羽詰まっている訳でも無いようだし。」

「見通しが立たない状態ですから、少しずつ進めて行きたいと考えています。」

「そう・・・真面目なのね、クロト君は。じゃあ、お願いね?」


 セーラは、ウィンクをしながら満面の笑みでクロトにお願いをした。

 最初の神秘的な雰囲気はどこへやら。


「・・・最善を尽くさせてもらいますよ。」


 クロトは苦笑しながらも、最大限努力する意思を伝えたのだった。









 食事を終えた後、セーラの部屋にて。


「母さんがあれ程打ち解けるなんて、珍しいな。」

「そうなのです!以前に客人が来たときは、もっと違う雰囲気だったのです!」

「えっ・・・?そんなに違ってたの?」


 セーラは首を傾げる。

 彼女は普通に接していたつもりだったが、レフィとユフィの印象は違うようだ。


「何というか、とてもリラックスしていたのです!」

「そうだな。ウィンクなど、私たち以外にはしたことが無かったはずだ。」

「えっ?そんなことしてたの、私?」


 どうやら、全く自覚が無かったらしい。

 頬に左手を当てて、不思議そうな顔をしている。


「無自覚だったのです・・・?」

「まさかとは思うが、いい年してクロトに入れあげている訳ではないよな・・・?」

「えっ!?違うわよ!何を言っているの、レフィ!」


 セーラは手をパタパタとさせながら否定する。

 何というか、その様子は、とても可愛らしい。


「では、一体・・・?」

「なのです・・・?」

「んー、クロト君が居ると、妙に落ち着くというか、安心するというか・・・。」


 レフィの発言のせいで顔が熱いのを認識しながら、クロトに関する印象を述べる。


「よく分からないのです・・・。」

「さっぱり分からん。やはり入れあげているのでは?」

「レフィ!違うって言ってるでしょ!それに、私は世界樹一筋よ!」

「それは何か違うような気がするが・・・。」

「世界樹はお父さんなのです!」


 セーラに夫と呼べる存在は居ない。

 強いて言うなら、世界樹がそうかもしれない。


 エルフの長老一族は、世界樹から生まれる。

 特にセーラは、その色が強い。

 世界樹の意志を感じ取れるのがセーラだけということからも、それは分かる。


 レフィとユフィは、セーラを通して生まれた。

 つまり、二人にとっては世界樹が父で、セーラが母と言ってもおかしくない。


「・・・クロトを父と呼ぶ日が来るのかもしれんな。」

「なのですっ!?」

「ちょっ!?だから違うってば!揶揄うのはやめてよね、レフィ!」

「新しいお父さん、なのです!」

「ユフィまでっ、もう・・・!」


 結局、安心と心地良さの原因は、分からずじまいとなったのだった。

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