異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

孤高の道7

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 行動阻害魔法陣を六十四個起動させたクロト。

 この魔法陣は、空間歪曲や風魔法、地魔法など、様々な要素を使用している。

 効果は、とにかく相手の動きを阻害すること。


 クロトは自らの持つ魔法陣を起動し、効果を確定させた。

 起動したのは、六十四重連鎖魔法陣。


「六十四式魔法陣『停滞世界』・・・発動!」


 クロトは、それほど大きな効果を求めていない。

 一瞬の差が勝負を分けるとき、その一瞬だけ時間を稼いでくれればいいのだ。


 案の定、孤高の主の動きが止まったのは、たかが一瞬。

 されど、とても貴重な一瞬だった。


 分身は孤高の主の拳を回避。

 逆に隙が出来た敵に、十六連撃を放つ。


「極天十六夜連閃・神絶!」


 その剣技で、孤高の主に中ダメージ。

 そして、両腕を切り飛ばした。


 ここまでで、約十分が経過。

 あと五分もせずに、光輪と闇輪の効果が切れる。

 敵のHPは残り半分ほど。

 剣を盾にされたのが痛かった。


 だが、問題は無い。

 クロトは既に勝利への一本道を歩いている。


 上空に転移し、翼を生成したクロトが溜めていた剣技「神天龍十六夜連閃」。

 恐らくこれだけでは削り切れず、攻撃後、致命的な隙を晒すことになる。


 ゆえに、更なる剣技に切り替える。

 その時間を作るため、魔法存在を突撃させ、敵を押さえつける。


 その間に、クロトはアイテムボックスを開き、声を掛ける。


「リュノア、力を貸して?」

「キュ?・・・キュキュ!」


 状況を把握して、喜んで力を貸してくれるリュノア。

 リュノアは不定形の黒い靄となり、クロトと2本の剣を包んでいく。

 ユニークスキル「可変魔力生物」の能力だ。

 クロトとリュノアは、ずっとこれの練習を続けていた。

 出来るようになったのは、リュノアが小竜になってからだ。


 完成したその技は・・・名付けて、「黒竜装」。


 全身を黒い竜麟で覆われたクロト。


 地上では、魔法存在たちが蹴散らされた。

 後衛の分身が天落世界で押さえつけ、天剣で敵を拘束。


 漆黒の翼十二枚で加速し、全MPを込めたこの剣技で、とどめを刺す。




「神天龍十六夜連閃・極黒!」




 黒き十六連撃は、孤高の主のHPを、全て削り取った。









 頭から地面に激突する寸前、事前に起動していた衝撃吸収魔法陣が効果を発揮。

 危うく墜落死するところで、事なきを得たのであった。


 何気に、この魔法陣の効果が一番心配だったクロトであった。


 神天魔の法衣の効果、一日一度の死亡ダメージ無効。

 その最終手段があるので、上手く発動しなくとも、そこまで問題は無いのだが。



 とにもかくにも、クロトはレベル99の敵に、単独で勝利した。


「キュキュッ!」


 否、一人と一体で勝利したのだった。




 十数秒後、光輪と闇輪の効果が切れた。

 クロトの計算はバッチリだったようだ。






 天界突破の効果が切れる前に、解体を終えたクロト。

 孤高結晶、到達者の魂、主の祝福、その他素材類が手に入った。


 解体を終えて収納すると、黒金色の宝箱が現れた。

 中を確認すると、名前からして凄そうな紋章が入っていた。


 名称、創世の資格。

 効果、全て不明。


 まるで分からないので、とりあえずは収納しておくしか無かったのだった。




 その後、天界突破の効果が切れたので、クロトはその場で眠りに落ちた。












 クロトが目を覚ますと、寝る前と同じ風景が見えた。

 いや、少しだけ違う。

 転移魔法陣が存在しているようだ。


 解析してみると、孤高の道の入口前に転移できることが分かった。

 孤高の主と戦った広間に、他に特別なものは無い。


 念のため探索してみたが、やはり何も無い。

 この広間で終着点ということなのだろう。


 探索を終えたクロトは、転移魔法陣に乗って転移した。





 かくして、世界七大危険地帯の一角、孤高の道はクリアされた。



 帰還率が低い原因が、自爆ゴーレムに思えて仕方が無いクロトであった。











 首都シャンレイドに帰還したクロト。

 約一か月ぶりに宿へと戻って来た。


 宿に居たのはカレンのみ。

 アクアとマリア、ナツメは首都の外へ出ているそうだ。


「クロト・・・。大丈夫だとは思っていたが・・・無事でよかった。」

「まあ、なんとかね。ありがとう、カレン。」


 クロトは微笑みつつ、カレンに感謝の言葉を返した。

 するとカレンは、クロトの微笑みを見て、少し照れたような反応をする。


「き、気にするな。恋人を心配するのは当然のことだ。」


 耳にかかった銀の長髪を後ろに流しながら、そう言ったカレン。


 クロトにはその行動が、とても艶めかしく感じられた。




 クロトが部屋でカレンを押し倒すまで・・・あと数分。

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