異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

クロトの収入

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「あの・・・クロトさん?」

「うん?どうかした、アクア?」


 アクアが何かを聞きたそうにしている。

 その隣に居るマリアも同様だ。


 二人が見ているのは、クロトの収入が記された明細?みたいなものだ。

 そこには、今月の収入が事細かに記載されていた。

 クロトは毎月の終わりに、その月の収入を記録しているのだ。

 なんともマメなことである。


 そして今日は、その月末。

 アクアは初めて、クロトの正確な収入を知った。

 これまでは、自分はクロトさんに相応しくないから、という理由で遠慮していた。


 だが先日、ついにクロトに認められ、自分でも納得のいく強さを身につけた。

 そこで初めて、クロトの収入に気が向くようになった。

 未来の夫がどれくらい稼いでいるのか、というのは、気になって当然だ。


 母親になる日も、そう遠くないはず。

 知らないままというのは、確かに無責任だと言えなくもない。


 アクアは、クロトのことであるからして、途方もない金額だと予想はしていた。

 そこは別に心配していない。

 最高の父親になってくれることも、疑ってはいない。


 だが、それはそれとして。

 やはりクロトの収入は気になる。


 今までアクアに遠慮して聞かなかったマリアも、同席する。

 カレンは不在なので、仕方が無い。


 そして、明細を見た二人の感想は・・・。




「・・・・・・。」

「・・・クロト。この桁、間違っていませんの?」


 アクアは絶句し、マリアは目を疑って、間違いが無いか問いかけた。

 クロトはマリアに尋ねられたので、もう一度明細を確認し、返答する。


「うん?・・・・・・間違ってないよ?」

「「・・・・・・。」」


 今度はマリアまで絶句してしまった。


 しかし、それも致し方なかろう。

 クロトの収入明細には、十二桁の数字が並んでいたのだから。




 約数千億ゴールド。

 それがクロトの、収入だ。




「・・・あの、クロトさん?どうしたらこんな金額になるのでしょうか・・・?」


 再起動したアクアは、あまりの収入の格差に打ちひしがれながらも、尋ねる。

 自分もそれなりに稼いでいるつもりだったが、精々、数億ゴールド。

 若干ながら、自信を無くしかけている。


「冒険者としての収入と、あとは店の収入かな?」


 クロトはとある店のオーナーを務めている。

 クローナ雑貨店だ。


 この店には、一般客に大人気の便利商品から、超高額商品まで、色々揃っている。

 安くて便利な品の売り上げもかなりのものだ。

 だがそれ以上に、高額商品の売り上げが凄い。


 例えば、避雷魔法陣。

 一つ数億はする商品だが、飛ぶように売れている。

 雷属性攻撃への対策は、誰しも、喉から手が出るほど欲している。

 なにせ、一瞬で自分を死に至らしめる攻撃なのだから。


 高ランク冒険者であれば、それくらいの金額なら、大して痛くない。

 中にはまとめ買いしていく者も居た。




 現在クロトがオーナーを務める店の種類は、数十を超えている。

 様々な種類の店であり、飲食店なども存在する。

 それらを全て、1つの組織にまとめ上げた。


 名づけて、ミカゲ財閥。

 クロトが名付けたのではなく、勝手に名前が付いたのだ。


 そんな訳で、今やクロトの財閥は、世界有数の大組織だ。


 クロトに害を成す存在は入り込んでいない。

 毎度のことながら、その辺は抜かりない。


 また、警備体制もばっちりだ。

 不埒な真似を働こうとした者たちは、魔法陣で撃退される。


 なお、目下規模拡大中で、収入はまだまだ増えると予想される。


 ちなみに各店長は、クロトが暴漢から助けた女性や、借金で困っていた人など。

 クロトに助けられた者たちの中で、才能のあるものを選んで任せている。

 そのあたりのエピソードは、きっと語られない。


 金銭的な融資も行っている。

 お金が必要な貴族や、大きな賭けとなる商売のための資金提供。


 融資するかどうかの判断は、当然クロトが行う。

 今のところ、融資を認められた人は必ず成功し、誰もが勝ち組となっている。


 そうなると、とある噂が流れるようになる。

 あそこの財閥に融資してもらえた者は必ず成功する、と。
 

 優秀な者はクロトに認められようと努力する。

 商売が上手くいった者は、クロトを崇拝し、その傘下に。


 一体クロトはどこに向かっているのやら。




 そんな感じの説明を、ごく簡単に、二人におこなった。


 
 説明を聞かされたアクアとマリアは、長々と呆けていたのであった。


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