異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

ダイダル海域まで

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 クロトが、容赦なくカレンのトラウマを抉った日の四日後。


 護衛依頼の日がやってきた。

 そんなに多くは無い依頼なのだが、タイミングが良かったようだ。


 クロト率いるランクSパーティー「黒白の翼」は港に来ていた。


 カレンのランクはついにS+に上がり、アクアも先日の功績でS-ランクに。

 S+ランク2名とS-ランク2名なので、Sランクパーティーとなった。

 
 当然の如く、そんな超戦力パーティーは大歓迎された。

 依頼人はもちろん、冒険者たちもだ。


 今回雇われた冒険者は55名。

 クロトたち以外だと、Aランク2名が最高ランク。

 大きな問題が起きなければ、これでも問題はないのだが・・・。

 危険地帯を通るとなると、やはり不安が大きいのだろう。


 船は意気揚々と出港したのだった。






 数十分後。


「デ、デ、デビルオクトパスの皇帝種がでたぞ!」

「「「なんだとっ!?」」」


 まだ危険地帯にすら入っていないのだが、本当に大丈夫なのだろうか。



 その皇帝種は、アクアが凍らせたところを、カレンが斬り捨てた。

 カレンはカレンで強くなっている。

 レベルも96の「絶剣」は伊達じゃない。






「今度はクラーケンだ!」

「「「クラーケンだとっ!?」」」


 またしても皇帝種が出現。

 クロトが「極天一閃・全絶」で仕留めた。


 危険地帯までが遠い。






「た、大変だっ!」

「「「今度は何だっ!」」」


 冒険者たちが、またか、と言った表情をしている。

 そして、見張りの冒険者が、迫っているモノの正体を告げた。


「フレイムフェニックスだ!」

「なんでそんな奴がこんなところに居るんだ!」

「現れる場所間違えてるだろっ!」

「俺に言われても困るぞ!?」


 見張りのA-ランク冒険者が泣きそうだ。

 クロトが氷漬けにしようとしたのだが、そこに声が掛かった。


「クロトさん、私がやってもいいでしょうか。」

「アクアが?分かった、お願いするよ。」


 何か考えがあるのだろうと思い、任せることにしたクロト。

 不死のフェニックスをどう仕留めるのだろうか。


 アクアは船の上から、海に魔力を流し始めた。


「大いなる水よ、優しき水となり玉を形作れ。超巨大水玉テラオーシャン・スフィア!」


 アクアが魔法言語で言葉を紡ぐと、フェニックスの周囲の海が蠢いた。

 そして、不死鳥の居る場所へ、高速で向かっていった。

 途方もない量の水が動いている。

 
 不死鳥も回避するのだが、アクアが操っているようで、追尾している。

 やがて避け切れなくなり、水に掴まった。

 水は超巨大な球体となり、中心に不死鳥が捕らわれている。

 そして、アクアは再び、魔力を込めて言葉を紡ぐ。


「優しき水よ、その仮初の姿を現し、冷たき永久の戒めを。」


 超巨大水玉の温度が下がっていく。

 そしてそのまま、魔法名を告げる。


永久氷玉エターナル・アイスフィア!」


 超巨大水玉が一瞬で凍り付き、氷の塊となった。

 その氷の密度は恐るべきもので、不死鳥の脱出は不可能だろう。


「・・・お見事。」


 クロトは、アクアに誉め言葉をかけたのだった。

 戦闘を終えたアクアは、キラキラと舞う水に包まれ、とても神秘的だ。


 なお、この戦闘でアクアは、大海魔法を覚えたそうだ。

 魔法言語の存在が習得の近道となったのだろう。








「凄かったですアクアさん!いえ、「水姫」様!」

「あの、異名で呼ぶのはやめていただけると・・・。」


 アクアに異名がついたようだ。

 これまでは、人前ではあまり実力を見せなかったので、ついていなかった。

 今回の戦いはとても派手だったので、「水姫」という異名がつけられた。


 アクアも、異名で呼ばれる気恥ずかしさが理解できたようだ。


「アクア、これからはアクア姫と呼んだ方がいいかな?」

「クロトさんまで・・・!」


 アクアは珍しく、責めるような視線をクロトに送る。

 頬をぷくっと膨らませているので、怖いどころか可愛いのだが。

 クロトはアクアを抱き締めた。


 周りの冒険者たちが羨ましそうにしているが、クロトは気にしない。

 冒険者たちも、クロトの実力は知っているので、文句は言えない。

 誰が、皇帝種を瞬殺できる男に喧嘩を売れるというのか。

 この場にそのようなことをする馬鹿はいない。


 クロトは水姫様に相応しいと思い、涙を呑む男が多数。


「大好きだよ、アクア。」

「あぅ・・・。私も、大好きです、クロトさん・・・!」


 二人はキスしたくなるのをなんとか堪えて、抱き合うにとどめたのだった。


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