異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

砂皇帝

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 周囲に砂が無くなったため、正体が露わになった砂皇帝。

 クロトはヴィオラを降ろして、飛行したまま砂皇帝と戦う。

 ヴィオラには、巨人の足を狙うように頼んである。


 砂皇帝は、MPを消費して砂を生成。

 再び自らの存在を隠蔽した。


 クロトの魔法存在が、砂を氷漬けにして回収していくが、間に合わない。

 高速で飛び回るクロトには狙いを付けづらいのか、ヴィオラに攻撃してきた。

 太い腕で殴り掛かる砂皇帝。


 ヴィオラは未来視を発動していたため、これを直前で回避。

 また、未来を見ると同時に因果の誘導を発動。

 自分の目の前に、砂皇帝の足が来るよう誘導した。


「天紫剣・桜花!」


 ヴィオラの剣技が炸裂し、砂皇帝の足が大きく切り裂かれた。

 バランスを崩して膝を着く。


 そのタイミングを狙っていたクロトが高速で迫り、もう片方の足を狙う。

 
「極天連閃・全絶!」


 もう片方の足も失った砂皇帝。

 しかし、すぐに足は再生してしまった。

 MPを大量に使用して。


 砂皇帝のMPは、残り半分。

 再生を行うには大量のMPが必要なようだ。


 砂皇帝が、砂を生成して己を隠蔽する。

 この上なくワンパターンだ。

 未だかつて、この戦い方で負けたことが無いゆえに、固執するのだろう。

 生物である以上、己の得意分野を捨てるのは難しいので仕方ないとも言える。

 だが、それは明らかに悪手であり、クロトの望んでいた展開だ。


「天法術・氷結浸食領域!」


 アクアの魔法を参考にして開発した氷の天法術が使用された。

 使用したのは、隠密者を発動していたクロトの分身。

 戦闘開始直後から、ずっと魔法を構成していたのだ。

 
 クロトは発動直前に、ヴィオラを抱えて空中に避難した。

 この天法術は、周囲一帯の地面を凍らせるのだが、それだけではない。

 生成した砂は凍り付き、存在を隠蔽できなくなった砂皇帝。

 その上、地面に触れている足元から凍り付いていく。


 これが、氷結浸食領域のもう1つの効果。

 氷に触れている部分から順に、凍り付いていくのだ。

 ヴィオラも地上に居たままでは危なかったので、避難させたのだ。


 砂皇帝は砂を生成し続けるも、全くの無駄。

 生成しても、地面に触れた瞬間に氷漬けになる。

 その間にも着々と氷が浸食していくが、砂の生成をやめない。

 これが本当の、馬鹿の一つ覚えだ。

 たくさん生成すれば、なんとかなるとでも思っているのだろうか。


 首元まで氷が浸食してきたところで、ようやく砂の生成をやめた。

 しかし、どう見ても既に手遅れだ。

 そのまま頭も凍り付き、巨大な氷像が出来上がった。


「さて、勝負はついたけど、まだ死んでないんだよね・・・コレ。」


 着々とHPは減っており、あと10分もあれば0になるのだが・・・。


「・・・クロト。新しい剣技の実験をしたい。」


 どうやら、ヴィオラが氷像を的にしたいようだ。


「それはいいけど、気を付けてね?」

「・・・分かっている。」


 そう告げると、発動の準備を始めた。


 ヴィオラの持つ全剣帝の剣は、属性との親和性が高い。

 しかし、ヴィオラは魔法を使えない。


 宝の持ち腐れを脱却するため。

 また、魔法しか効かない敵と単独で遭遇した時のため、練習していた剣技。


 アーティファクト、生命変遷のオーブを起動。

 これは、自分のHPを流し込むことで、それをMPに変換できるオーブだ。

 そして、変換したMPをオーブから引き出して使用できる。

 ヴィオラはこのMPを用いて魔法の練習を重ねた。


 一時的にでも命を削る危険行為だが、クロトはとめない。

 ヴィオラの成長の為に必要なことだと判断した。


 剣に魔法を纏わせ、自分の持つ12軌道の技を全て繋げた大技。


「天紫剣・春夏秋冬!」


 ヴィオラの放った12連撃は数秒間に渡って続き、氷像をバラバラに破壊した。









「・・・ヴィオラ。何か言うことは?」

「・・・ごめんなさい。」


 ヴィオラはクロトに叱られていた。

 なぜ叱られているのかというと、危険行為をしたからだ。

 技自体のことではない。

 それについては、褒めこそすれ、叱ることなど無い。


 クロトが怒っているのは、氷像の欠片を、クロトの居る方向に飛ばしたからだ。

 クロトだから咄嗟に反応して、高速で迫る氷片を一刀両断に出来た。


 しかし、これがアクアだったら危険だった。

 自分は後衛であり、信頼している前衛の仲間から、高速の攻撃を受ける。

 考えたくもない悪夢だ。

 回避するのは困難を極める。


 たとえわざとでは無くとも、反省を促すことは必要だ。


 クロトは胸が痛むが、心を鬼にして叱ったのだった。

 ヴィオラは、その後しばらくの間、しょんぼりしていた。

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