異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
88 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

魔法陣学

しおりを挟む
 魔方陣学の講義室へやって来たクロト。


 すると・・・


「おおおおおっ!君はまさか、魔法陣学を受けに来てくれた生徒かね!?」


 ・・・初老の男性がそう叫びながら、クロトに迫って来た。


「・・・ええ、そうですが。それが何か?」


 クロトは驚きつつも、表情には出さずに尋ねた。


「実はな、危うくこの講義が取りやめになるところだったのだよ。」


 詳しく聞いてみると、魔法陣学は例年、人気が無いそうだ。

 昨年など、一人も来ない始末。

 もし今回も誰も来なかったら、魔法陣学は取りやめになっていたらしい。


 そんなところにやって来たのがクロト。

 これで、最低でも来年は続けられると決まったため、感極まってしまった、と。


「それにな、今年の生徒が良い結果を出してくれれば、宣伝費も増えるのだよ。」

「なるほど。とはいえ、宣伝費の方は確約できませんよ?」

「そちらは駄目で元々だからな。気にする必要は無いぞ。」


 かくして、生徒が一人だけの魔法陣学が始まった。




 クロトはついこの前、転移魔法陣を目にして、解析した。

 しかし、魔法陣というのは何も、転移魔法陣だけではないのだ。


 魔法陣の効果というのは、構成と、その組み合わせ次第で変わっていく。

 ゆえに、理論上は魔法陣に不可能などない、というのが、講師の持論らしい。

 ちなみに、魔法陣学の講師の名は、ベッカーというそうだ。


「という訳で、日々研鑽を続けて欲しく思う。」


 その後、本格的な魔法陣の講義になっていった。




 魔法陣は、いくつかの分け方がある。

 その1つが、起動部・実行部・終了部、という分け方。

 転移魔法陣で言うなら、

 陣に乗った時、それを感知して実行部を起動させるのが起動部。


 対象の陣のある空間座標を指定し、双方向に接続。
 
 その上で、転移させる存在を、付近の空間ごと隔離・誘引するのが実行部。

 空間の隔離が出来ていないと、パーツがばらけて転移することも。


 誘引完了後、空間の接続を解除し、実行部を停止させるのが終了部。


 分け方は幾つもあり、これはその内の1つに過ぎない。


「なるほど・・・。」


 話を聞きながら、丁寧にノートをつけていくクロトであった。




「理解するのが早い・・・。次回の分まで終わってしまったぞ・・・?」


 講義内容の見直しを検討し始めるベッカー。

 そんな中、クロトは自分なりに考察していた。


(魔法陣の基本は凡そ分かった。後は、この基本を組み立てて応用するだけ。)


 綺麗な学問、という印象を、魔法陣学に感じたクロト。

 次にやるはずだった基礎についても、勝手に推察して理解してしまった。

 なぜそんなことが出来てしまうのやら。

 クロトは、パズルを埋めるような気分でやっていたが。


 そこで、ふと気づいてしまった。

 パズルのピースが足りていない、と。

 パズルをはめ込む型を眺めると、ピースがはめ込まれていない箇所がある。

 全部で7つだけ足りていない。

 クロトは、周囲にはめ込まれているピースから、足りないピースの形を推測。

 自分のノートに書き連ねていった。


 それを、ベッカーが目敏く見つけた。


「ん?それは何を書いてるのかね?魔法陣の基礎構成要素・・・いや・・・?」


 ベッカーが見ている中でも、クロトは気にせず書き込んでいく。


「・・・まさかっ!未発見系統の基礎構成要素だと!?」


 クロトが八割方書き込んだところで、ベッカーが驚愕の声をあげた。

 地球で言うと、未発見の元素を全て見つけ、それを証明したようなものなのだ。

 驚くなと言う方が無理だろう。


 ベッカーは、いきなり問い詰めることはしない。

 クロトが全てを書き終えるまで、静かに待った。

 邪魔をしては悪いと思い、また、自分でも、それを理解しようと試みたからだ。


 数時間後、クロトは書きこんでいた手を止めた。


「ふぅ・・・。これで、大きなパズルは完成かな・・・。」


 そこに書かれていたのは、温める、衝撃を与える、といった要素。

 それらは、64系統に大別された、魔法陣の基礎構成要素だった。

 以前までは、57系統しか存在しなかったものだ。

 
「流石に、そこから分かれていく細部要素とその関係性は、難しそうだけど。」


 クロト風に言うならば、小さなピースが数えきれないほどあるのだ。

 時間を掛ければ出来るが、この場では無理だ。

 後で魔法存在にやらせておこうと決めて、一息ついた。

 相変わらず、魔法存在の使い方が荒い。


「クロト君!未発見の7系統について教えてくれないかね!?」


 どうやら、一息つくのは少し先になりそうなクロトであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

強制無人島生活

デンヒロ
ファンタジー
主人公の名前は高松 真。 修学旅行中に乗っていたクルーズ船が事故に遭い、 救命いかだで脱出するも無人島に漂着してしまう。 更に一緒に流れ着いた者たちに追放された挙げ句に取り残されてしまった。 だが、助けた女の子たちと共に無人島でスローライフな日々を過ごすことに…… 果たして彼は無事に日本へ帰ることができるのか? 注意 この作品は作者のモチベーション維持のために少しずつ投稿します。 1話あたり300~1000文字くらいです。 ご了承のほどよろしくお願いします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。