異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
73 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

大空へ

しおりを挟む
「なんというか、揶揄いたくなる人でしたわね・・・。」

「そうだね。マリアに続いての、第二位だよ。」

「わたくしっ、アレに負けてるんですのっ!?」


 流石にそれは無いだろうと思うも、クロトの表情は本気だ。


「そんなのは嫌ですの・・・。」

「・・・・・・マリアは、今の関係性が嫌いかな?」


 もしそうなら、考え直さなければならないと思いつつ、問いかけた。


「・・・不思議なことに、嫌ではありませんわ。」


 クロトはこれからも、遠慮なく揶揄うことに決めたのだった。






 マリアに今後の予定を大まかに伝えた後、クロトは模擬戦をしていた。

 対戦相手は、ヴィオラ&アクア。

 前衛と後衛なので、バランスは良い。


 ヴィオラ一人なら問題ないのだが、アクアの的確な援護が入ると・・・。


(中々に攻めきれない。この二人の組み合わせが、こんなに厄介とは。)


 元々、因果の誘導により回避などが得意なヴィオラ。

 相手に少しの隙でもあれば、回避可能なのだ。

 アクアの的確な援護が入れば、回避は容易い。


 後衛のアクアから狙うというのも、限定的に未来を見るヴィオラに阻まれる。

 また、アクアの援護は、感知能力のおかげで、確実。


 ゆえに、クロトがとる手段は・・・



「・・・っ!?アクア!」


 クロトが分身を生成し、片方がアクアに接近。

 少し粘られてしまったが、アクアに剣を突き付けて戦闘終了となった。



「・・・ごめんなさい、アクア。」

「いえ、ヴィオラさんが悪いとは思いません。」

「・・・前衛として失格。」

「クロトさん二人分の相手が出来る人なんて、滅多にいませんよ。」



 一方、何とか勝利を収めたクロトだが、意外と危なかった。


(分身を使わないと勝ちきれないくらいには、二人は強くなった。)


 なんというか、ゲイザーを相手にしている気分になった。

 殆どの策が意味を為さない、能力の組み合わせ。

 能力値はクロトに分があるので、問題なく勝てる。

 だが、そうでなければ、もっと苦労しただろう。




 アクアとヴィオラは、ナツメとカレンも加えて全極の島へ行ってみるそうだ。

 まずは、中間部の南側までだそうだが。


「そういえば、ナツメの出身国ってどこなの?」

「拙者でござるか?東国ジャンゼパールでござる。」


 そんな国もあったことを思い出したクロト。

 クロトの居る大陸には、4つの国があるが、そこには含まれていない。

 ジャンゼパールは島国なのだ。

 そこまで行く予定が無かったので、記憶が薄かったわけだ。


 なお、他の国へ行く予定も、殆どない。

 大体は、自然豊かなカラーヴォイス王国内で事足りるのだから。







「じゃあ、いってみようか。」

「・・・・・・ああ、例の場所を探すんですのね?」

「・・・良く分かったね?」

「分からないと思ったなら何故言ったんですの!」




 

 クロトが探しているのは、俗にいう、天空島だ。


 天空島については、何の情報もない。

 王城の書庫にも、だ。


 では、何故そんなものがあると推測したのか。

 それは、ヴィオラの過去に関係がある。


 ヴィオラはある日、唐突にすべてを失った。

 訳も分からないままに。

 ヴィオラ自身、何故ああなったのか、未だに分からないそうだ。

 いきなり屋敷で爆発が起きたかと思えば、全てが消えて無くなっていた。


 クロトはヴィオラに頼んで、現場に連れて行ってもらった。

 辛いことを思い出させるのは嫌だが、反省と対策は必須だ。


「・・・私には、クロトが居るから、大丈夫。」


 ヴィオラは、そう言って案内してくれた。


 現場は、何も無かった。

 屋敷があったかどうかも不明な、更地だった。

 涙を流すヴィオラをなぐさめつつ、周囲を捜索した。

 そして、クロトが見つけたのは。



「隕石、ですの?」

「いや、厳密には違うよ。」


 宇宙からあのサイズの隕石が落ちてきたら、あの程度ではすまない。

 つまり、宇宙より低い所から降って来た、岩のようなもの。


 これが、天空島の存在を疑う理由だ。

 少なくとも、現場の岩のようなものに魔力は無かったため、魔法ではない。

 かなり不確かだが、いつまた降ってくるか分からないので、知っておきたい。

 それが、クロトが天空島を探す理由だ。



「雲を掴むような話ですわね・・・。」

「まあね。どこにあるかの予想もつけられないし、移動しないとも限らない。」

「ますます絶望的になりましたわ・・・。」

「まあ、時間もあるし、良いんじゃないかな?」


 そして二人は、空へ飛び出した。







「この手伝いを頼めるのって、無職のマリアしか居ないんだよね・・・。」

「無職と言わないでくださいまし!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

カップル奴隷

MM
エッセイ・ノンフィクション
大好き彼女を寝取られ、カップル奴隷に落ちたサトシ。 プライドをズタズタにされどこまでも落ちてきく。。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。 苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。 ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

婚約も結婚も計画的に。

cyaru
恋愛
長年の婚約者だったルカシュとの関係が学園に入学してからおかしくなった。 忙しい、時間がないと学園に入って5年間はゆっくりと時間を取ることも出来なくなっていた。 原因はスピカという一人の女学生。 少し早めに貰った誕生日のプレゼントの髪留めのお礼を言おうと思ったのだが…。 「あ、もういい。無理だわ」 ベルルカ伯爵家のエステル17歳は空から落ちてきた鳩の糞に気持ちが切り替わった。 ついでに運命も切り替わった‥‥はずなのだが…。 ルカシュは婚約破棄になると知るや「アレは言葉のあやだ」「心を入れ替える」「愛しているのはエステルだけだ」と言い出し、「会ってくれるまで通い続ける」と屋敷にやって来る。 「こんなに足繁く来られるのにこの5年はなんだったの?!」エステルはルカシュの行動に更にキレる。 もうルカシュには気持ちもなく、どちらかと居言えば気持ち悪いとすら思うようになったエステルは父親に新しい婚約者を選んでくれと急かすがなかなか話が進まない。 そんな中「うちの息子、どうでしょう?」と声がかかった。 ルカシュと早く離れたいエステルはその話に飛びついた。 しかし…学園を退学してまで婚約した男性は隣国でも問題視されている自己肯定感が地を這う引き籠り侯爵子息だった。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★8月22日投稿開始、完結は8月25日です。初日2話、2日目以降2時間おき公開(10:10~) ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

進学できないので就職口として機械娘戦闘員になりましたが、適正は最高だそうです。

ジャン・幸田
SF
 銀河系の星間国家連合の保護下に入った地球社会の時代。高校卒業を控えた青砥朱音は就職指導室に貼られていたポスターが目に入った。  それは、地球人の身体と機械服を融合させた戦闘員の募集だった。そんなの優秀な者しか選ばれないとの進路指導官の声を無視し応募したところ、トントン拍子に話が進み・・・  思い付きで人生を変えてしまった一人の少女の物語である!  

専属奴隷として生きる

佐藤クッタ
恋愛
M性という病気は治らずにドンドンと深みへ堕ちる。 中学生の頃から年上の女性に憧れていた 好きになるのは 友達のお母さん 文具屋のお母さん お菓子屋のお母さん 本屋のお母さん どちらかというとやせ型よりも グラマラスな女性に憧れを持った 昔は 文具屋にエロ本が置いてあって 雑誌棚に普通の雑誌と一緒にエロ本が置いてあった ある文具屋のお母さんに憧れて 雑誌を見るふりをしながらお母さんの傍にいたかっただけですが お母さんに「どれを買っても一緒よ」と言われて買ったエロ本が SM本だった。 当時は男性がSで女性がMな感じが主流でした グラビアも小説もそれを見ながら 想像するのはM女性を自分に置き換えての「夢想」 友達のお母さんに、お仕置きをされている自分 そんな毎日が続き私のMが開花したのだと思う

Mな生活

ちくたく
恋愛
S彼女とのプレイでMとして成長する物語です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。