妖符師少女の封印絵巻

リュース

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三章 水の怪異編

65 先生のお宅訪問

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 丁度明日から土曜日で高校がお休みなので、その時間で調査をしましょう。


「そういう訳ですので、明日は一日留守にしますね?」

「分かりました。お店のことは私に任せてください!」

「では、よろしくお願いします。ですが、ちゃんと適当な時間で店じまいにして、自分の時間もつくること。これは店長命令です」

「ううっ・・・分かりました」


 あやかし屋に帰ってきて、明日からの予定を咲良さんに伝えました。

 ただでさえ平日の午前中にお願いしているのですから、これ以上はオーバーワークになりかねませんので。そこだけはちゃんと言い含めておきます。
 咲良さんはとても真面目で頑張り屋さんですが、休憩も必要ですからね。



 ▽▽▽



 時刻は夜。
 とある川の脇にある道を、帰宅中の男子高生二人が歩いていた。


「それでさ、まーたあいつがミスしてさ」

「またかよ。ほんと懲りねぇよな。今度締めとくか?」

「そうしよぜ。これも教育ってやつだし別にゴボッ!?」

「ん?どうしたゴボッ!?」


 二人の男子生徒は一瞬で、何者かに川に引きずり込まれてしまった。
 当然二人は溺れることになり、そのまま息を引き取った。

 しばらくして川から姿を現したのは・・・<河童>であった。


「・・・負の感情は、まあまあか。やはりこのやり方だと効率が良いな。とはいえ、いつまでも道草食ってると<牛鬼>様にどやされかねない。本格的に探すか」


 この妖怪<河童>は高位妖怪<牛鬼>の命令を受けて、<鎌鼬>を殺した存在を追っている最中である。

 とはいえ、彼らの時間間隔は人間よりルーズなので、こうして負の感情を取り込むために道草を食っているのである。


「さて、次はどこの町に向かうか・・・・・・よし、俺はこの川を南へ下るとして、<泥田坊>の奴は東へ行かせるとしよう」


 妖怪<河童>は部下であり格下の妖怪である<泥田坊>と別行動をとることにして、次の目的地を決定した。


「確かこの川から東の方にある町は・・・鳥居町だったか?焼鳥町とかいう情報に掠ってないこともないが、流石にこんな間違い方はしないよな・・・?」

 妖怪<河童>はそう結論付け、再び川に潜った。

 こうして、ニュースにもあった行方不明事件は加速するのだった。



 △△△



 土曜日の朝早く、調査のために行動開始です。
 笹川先生の悩みを解決してみせましょう。

 とはいえ、最初は先生頼りなんですけどね。


「そういう訳で、そのストーカーが現れたら私が尾行します」

「それはいいんですが、生徒に家を知られるというのも、むず痒いですね・・・」


 只今、笹川先生のお宅前にお邪魔しているのですが、先生の顔が赤いです。
 同性を家に上げるのがそんなに恥ずかしいのでしょうか。


「男子生徒の方が良かったですか?」

「それだと余計に不味いですからっ!!というか、もはや大問題ですっ!!」


 言われてみればもっともですね。
 私、女性でよかったです。

 と、先生が鍵を開けてくださいましたので、家の中にお邪魔します。
 まだお若いのに、小さいとはいえ持ち家とは・・・凄いですね。

 そして、家の中にある私室には・・・。


「先生、どうして可愛いぬいぐるみが置いて無いのでしょうかっ・・・!?」

「影山さんが私にどういうイメージを持っているのか大変良く分かりましたっ!!」

「先生のように可愛らしい人がぬいぐるみを持っていないはずがありませんっ」

「無い物は無いんですから仕方ないでしょう!?」


 いいえ、絶対にあるはずです・・・!
 私の<妖符師>としての勘があると言っています・・・!

 ・・・きっと、私が来る前に隠したのでしょう。

 なんという惨い真似を・・・!


「笹川先生、外道ですっ・・・!鬼畜ですっ・・・!」

「いきなり罵倒!?一体何の話ですかっ!?」


 意地でも認めないようですね。
 こうなったら、奥の手です。

 妖力を使って嗅覚を強化します。
 これでぬいぐるみ独特の匂いを嗅ぎ分けるんです・・・!

 くんくん・・・・・・見つけましたっ!


「笹川先生、あそこの引き出しを開けてもよろしいですか?」

「なっ・・・ど、どうしてですか?」


 この反応は、やはりそこにあるようですね。


「そこにぬいぐるみがあるからですっ・・・!」

「登山家みたいなセリフっ!」

「可愛い可愛いクマさんですねっ・・・!?」

「何故そこまでっ・・・あっ」


 語るに落ちましたね。
 これにて一件落着です。

 ・・・いえ、違います。そんなことをしにきたのではないんです。


「影山さん、違うんですっ!今のは、その・・・言葉の綾でっ!」

「そんなことはどうでもいいですっ・・・!」

「どうでもいい!?」


 どうでもよくはありませんが、今はそれどころではありませんので。


「ターゲットが来ますので、見つからないように気を付けてください」

「えっ・・・!?」


 妖力センサーが反応しています。

 先生の体がビクリトと跳ねました。
 トラウマになりかけてますね、これは。

 ストーカーには少し痛い目に遭ってもらった方がいいかもしれませんね。

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