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雨の記憶・過去から
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日本列島には梅雨前線が停滞し、本格的な梅雨入りを宣言したばかり。
毎日、毎日、雨ばかりでうっとうしい事この上ない。
クラスメイトたちはそんなことを口にしては、噂話に花を咲かせている。
だが、高橋泉はしっとりと降り注ぐ、今日のような雨の日は好きだった。
こんな日はいつも夢を見るから。
それは、雨の降る日だけに見る夢。
そこは不思議な世界だった。
白い霧に包まれたひそやかな空間。淡く美しいアクアマリンの水の世界を泉はゆっくりと歩いていく。
かすかなさざめきは水のせせらぎだろうか。ひやりとした風がゆるく回廊を吹きぬけていく。
そこら中にちらばる真珠がきらきらと陽の光を反射して輝いていて、泉はまぶしくて目を細める。
通いなれた道筋を迷いのない足取りで進んでいく。
いつもの場所へ。
まるで自分の部屋のように、勝手が分かるのが最初は不思議だった。
だがそれももう慣れてしまった。
これは夢なのだから。知っていて当然なのだ。
白く柔らかな絹の衣に身を包み、そうっと水鏡を覗きこむと、見えてくるのは美しい女性の顔。決して華やかではないが、楚々とした若い女性だ。ゆるやかなウェーブがかかった淡い金の髪は細い絹糸のようになめらかで美しい光沢を放ち、至るところに真珠が飾られている。そして、淡い青の瞳はこの世界の色と同じ。水を溶かしたように薄青に澄んだアクアマリンのよう。優しいけれど、どこか憂いを帯びた物寂しげな瞳がこちらを見つめている。
そうして水鏡から顔を上げると、いつも、ある青年の背を眺めている。
女性と同じ色の髪は長く、まっすぐに背を覆っている。たくましさのなかに優美さを感じさせる物腰。穏やかに、けれど芯の通った青年の性格が窺い知れる。
そうして静かに佇む人影を、あきもせず見つめている。
涙がこぼれる。
そして同じ数だけの真珠が女性の周りを埋め尽くしていく。
胸が締めつけられるほどに、切ない。
それが何故なのかも分からないまま、みつめるだけ。
そんな風景を繰り返し繰り返し、夢に見つづけているのだった。
ぱちっと目が覚めた。
見なれた白い天井をしばらくぼんやりと眺める。
この夢を見た後はいつもどちらが現実なのか分からなくなる。
しっかりと目を覚ましたはずなのに、まだ夢の世界を漂っているかのような強烈な余韻。
そこからなかなか抜け出せなくて、泉は小さく息を吐いた。
「また、見ちゃった……」
そのまま布団に顔をうずめる。
切なくて悲しいと泣き続けている夢の中の女性はいったい誰なのだろう。
泉はベッドから起き出して、鏡の前に立った。
鏡に映るのは見なれた自分の姿。
黒髪ボブの典型的な日本人の容姿はどこをみても特出したところはない平凡なつくりだ。その辺を嘆いて親を恨んでみたところでどうにもならないことは分かっている。
あんな綺麗な金髪でもなければ、淡い青の瞳でもない。ましてや、美人でもない。
小顔といえば小顔なところは共通点と言えるかもしれない。
「そういう願望でもあるってことかな?」
泉は髪を撫で付けながら、鏡をのぞきこみ、涙の跡を見つけた。
それはいつもの事だったので、目の淵をそっとぬぐう。
「本当に、何なんだろう」
いつも雨の降る日に見る夢を、泉は不思議に思っていた。
その夢に同調して泣いている自分が滑稽に思えてくるときもある。
けれどこの夢を見たくないと思うことは不思議と全くなかった。
ふいに枕元でなにか光っているのを見つけた。
淡いピンク色の光沢を放つ小さな真珠玉が一粒ころがっていた。
「真珠?どうしてこんなところに」
泉は首を傾げたが、真珠玉を制服のポケットにしまった。
顔を洗って身支度も整えて、階段を降りていくと、お味噌汁の良い匂いが漂ってきていた。
「おはよう」
「ああ、おはよう、泉」
新聞を広げていた父、文隆が顔を上げて挨拶を返してくる。そしてまた新聞へと視線を戻す毎日の変わらない風景。食事中に止めてくださいと母に何度も叱られても、懲りずに読みつづけるのだ。泉は相変わらずのその光景に笑いながら、手を合わせて食事を始めた。
「あ、そうだ、お母さん。私の部屋に真珠が落ちていたよ」
「あらやだ、取れちゃったのかしら?」
泉がポケットから差し出した真珠玉を受けとって、静子は怪訝そうに見遣る。
「糸通しの穴があいてないから、ネックレスが切れたわけじゃなさそうねぇ。イヤリングは持っていないし……ブローチにこんな大きさのって、あったかしら?」
「お母さんのとは違う?」
「どうかしらねぇ。ちょっと見てくるわ。あらでもこの真珠、ちょっと珍しい色をしているわね……」
独り言を言いながら、静子は自分の部屋に消えていく。
朝のニュースでは全国各地での梅雨の情報が流れていた。大雨でどこかの川が氾濫して大変な事になっているようだ。現地の必死の救助活動が報道されている。濁流に飲まれ、家や車が流されていく光景に、泉の食事の手が止まる。
「どうした?早く食べないと遅刻するぞ」
父の言葉に泉は我に返った。
何か思い出しかけて、それは形にならないまま消えていった。
泉は一瞬支配した感覚が何なのか分からないまま、食事を終えた。
時計は七時半を指している。
そろそろ出かけなければ行けない時間だ。ちょうどいいタイミングで、泉のスマホがブルっと震えた。
アラームを止めて、泉は慌てて立ち上がった。
「じゃあ、行ってきます」
外はやはり雨。
小雨が振り続いている。
みんながうっとおしいという雨も泉は大好きだった。
泉はお気に入りのペパーミントグリーンの傘をさして、ふんふんと鼻歌を歌いながら学校へ向かった。
しっとりと涼やかな雨が降りつづけていた。
新緑の若葉も白く靄にけぶる校庭で、彼は佇んでいた。
ひとり。
音もなく、静かな聖域に。
天を仰ぎ、雨にぬれている少年。
とても気持ち良さそうに、笑みさえ浮かべて。
その少年を泉は知っていた。
同じクラスの少年だったから。
泉はずっとその背を見つめていた。
まるで夢の中のあの女性のように。
彼が、振りかえるまで。
「高橋?」
泉ははっと我に返った。
少年は泉がそこにいることに少しだけ驚いたようで、小首を傾げてこちらを見た。
声をかけることも出来なくて、結果見つめる形になってしまっていたことに気がついて、泉は恥ずかしくなって俯いた。
「風邪……ひくよ」
やっとのことで搾り出した泉の小さな声に少年は微笑する。
そのやわらかな笑顔に、泉の鼓動が一瞬だけ跳ね上がった。
雨の中にいるのに、まったく気にするようでもなく、逆に幸せそうな微笑を浮かべる少年。
不思議な空気を纏っていると泉は思った。
透明で、とても綺麗な。
清涼感とでも表現するべきなのだろうか。
だが、そんな言葉では現しきれない。
「うん、大丈夫……ありがとう」
少年は穏やかにそう答えた。
「雨が好きなの?」
泉が尋ねると、少年はふわりと笑った。
とても優しく。
なぜか、とても懐かしい笑みに、胸が痛くなった。
知らないはずなのに、懐かしいと思う。
それはやはり夢と同じ光景だったからだろうか。
一人、静かに雨の中で天を仰いでいた少年を見たとき、泉は本当に驚いて声も出なかったのだった。
泉はそっと教室を眺めた。
だが、彼の姿はない。
少年はクラスメイトで、泉も二、三度必要にかられて話したことがあったが、それほど仲が良いわけでもない。
クラスでもおとなしくてあまり目立たない泉は、クラスの男の子と気軽に話が出来るほど活発でもなかったので、少年が泉の名前を知っていたことに、少なからず驚きを覚えていた。高校も二年に進級してまだ二カ月しか経っていない。ましてや、一年次は同じクラスではなかったのに、印象の薄い泉の名前を覚えていてくれたことが驚くと同時に嬉しかった。
少年の名は、清水淳。
そうそう目立つ存在ではないが、独特な雰囲気を纏う不思議な存在感がある少年だ。
教室のドアがふいに開いて、淳が入ってきた。無意識に目が彼の姿を追ってしまって、慌てて俯いた。
「おはよう」
いきなり頭上から挨拶をされて、泉はびっくりして顔を上げた。
淳が目の前で笑っている。
「あ、おはよう……」
消え入りそうな泉の挨拶に、淳はにっこり笑って応えた。
その笑顔にどきりとする。
今更ながらに、彼が綺麗な顔をしている事に気がついた。
こんな綺麗な人だっただろうか。
淳は泉の左斜め前の席に着く。
そうして、泉は気がついた。
綺麗なのは顔だけではない。動作の一つ一つがとても綺麗なのだ。背筋もまっすぐに伸びている。上品な物腰とでも言えばいいのだろうか。一度目に付いてしまうと、他の男子との違いが良く分かる。同じ年頃の少年の、いわゆるがさつな所は全くないのだと気がついた。髪は先ほどまで雨に濡れていたためか、ちゃんとふいてはあるが、まだまだ湿って顔に貼りついている。妙にそれが色っぽく見えてしまって、泉はさらにどきどきしてしまった。
泉の視線に気がついたのか、淳が振り返った。
「何?」
「あ、うん、着替えてきたんだなぁって思って……」
「そりゃそうでしょ」
淳は面白そうに笑った。くるりと向きを変えて、泉と向かいあう。
「ぬれねずみで来たら、みんながびっくりしちゃうだろう」
「あはは、そうだねぇ」
二人で顔を見合わせて笑い合う。
泉は彼と普通に会話している自分に内心驚いていた。小さいころから赤面症でうまく他人と会話できなくてコンプレックスを抱いてさえいたのだ。
「普通はしないよね」
淳はすこしだけ寂しそうに笑って言った。
「びっくりしたけど……でもすごく気持ち良さそうにしていた」
「うん、まあね……好きなんだ」
泉はぎょっとして絶句する。
思考が都合の良い方向に話を持って行こうとする。
好きって―――?
違う、違う。私じゃなくて!
泉の沈黙を受けとって、淳は照れたように頭をかいた。
「やっぱり変かな?雨に濡れるのって誰も嫌がるもんなぁ……」
「あ、ううん、ううん、そんなことないっ」
自分の思考の単純さと馬鹿さ加減に思いっきり赤面する。
「本当?」
「うん、私も好き、だから……」
何やら告白めいた事を口にしていると気がつき、泉は更に真っ赤になって俯いた。
「雨に濡れるのが―――……」
なんとか付け足した言葉に淳は嬉しそうに笑った。
「やっぱり?高橋も雨は好きだと思ったんだ」
「ど、どうして?」
「だって、さっき楽しそうに鼻歌歌っていたし……」
まさか聞かれていたとは知らなかった。
泉は恥ずかしさのあまり、顔を上げられなくなってしまった。
「雨ってなんだか懐かしいの……」
小さな声で話しはじめる泉を淳は黙って耳を傾けていた。
「雨って、確かに冷たくて濡れたりすると寒くて、風邪なんか引いちゃいそうだけど……母さんとかは洗濯物が乾かなくて困るから嫌いだとか言うけど……私は逆に雨の日は嬉しくて……良くわかんないんだけど、雨が懐かしいって思うの……優しい雨はすごく好き……」
泉はおずおずと顔を上げた。
「変、かな?」
「変じゃないよ。実は僕も同じだから」
頬杖をついて、ふわりと淳が笑みを浮かべた。
とても優しい笑みに、泉は安堵した。
そして同じように思う人がいるということが嬉しいと思った。
「あ、また……」
いつも見る夢の中の風景に泉は思わずそうこぼした。この静かな世界に訪れるたびに、泉は泣きたくなってくる。
懐かしくて、でも寂しくて……。
どうしてここに一人でいるのだろう。
誰かがいつもそばにいたはずなのに……。
そう思ったところで、泉ははたと我に返る。
「誰かって、誰?」
知らない誰かの存在を求めている。
無意識に、雨の中で天を仰いでいた少年の顔が浮かぶ。
「清水くん?」
口にした瞬間、泉は赤面した。
慌てて自らの考えを否定するが、一度早まった鼓動はなかなか収まりそうもなかった。
「はぁー、私ってば何を考えているのよ」
泉はドキドキする胸を押さえながら、ついと顔を上げた。
人の気配。
白い靄の向こうに見えるシルエット。
いつもなら青年の後姿が見えてくるはずだったが今日はどこか違った。
さわさわと水のせせらぎだけがその世界の唯一の音だったのに。
青年が何かしゃべっているようだった。
水の流れる音にかき消されてはっきりと聞き取れない。
泉は無意識に歩を進めていた。
「長い、長い戦いだ……いつ終わるともわからぬ戦いだが、変化は訪れた」
柔らかで穏やかな声音の中にどこか苦渋を秘め、青年は語りつづけている。
長く淡い金の髪はまっすぐに流れ落ち、髪についた雫が光を反射して、いっそうまばゆく、儚い。
彼はいったい何を見つめているのか。
何を今、思っているのか。
顔は見えない。
「神龍が魔龍とともに姿を消した」
「……では、ご出陣に?」
そう泉は尋ねる。無意識に。
どうして彼と話をしているのだろう。
心のどこか奥でそう思っている自分も確かに存在する。
けれど、この瞬間、泉は泉でなく、夢の中のあの美しい女性と同化していた。
「命の乙女はもちろん、精霊界を、この『水界』を守るのがわたしたちの使命だ」
青年の強い意志が悲しいと感じる。青年の決断は決して誰にも覆すことは出来ないのだから。
……行ってしまう。遠くへ、離れていってしまう。
心にある思いを口に出すことは許されない。
そのたったひとことが言えない。
そうして彼女は泣いている。
いつも、いつも。
真珠がそこら中に散らばっている。
それは彼女が流した涙の結晶。
流れ落ちては真珠へと姿を変える。
「アイシャ、また泣いているのかい」
あやす様に、なだめる青年の声はいつも優しい。
呼びかけられた名を泉は知らない。でもしっくりと受けとめる事が出来る。
何故、懐かしいのだろう。
こんなにも心が震える。
転がり行く真珠の一粒が青年の足元に届く。
「この分ではこの王宮はおろか水界までも真珠姫によって真珠で埋め尽くされてしまいそうだな」
彼は笑いながらそれを拾い上げ、そして振りかえった。
「……高橋?」
はっとして、泉は顔を上げた。
淳が怪訝そうに見ていた。
話の途中で、泉の意識がどこかに行ってしまったからだ。
白昼夢?
眠っていたのだと気が付いて、泉は赤面する。
「あ、ご、ごめんなさい」
振り返った青年の顔と淳の顔が重なる。
それは今朝、校庭で彼を見てしまったからなのか。
夢の中の青年と同じように、雨にその身をさらしている淳の姿を……。
淳は眉をひそめる。
「具合でも悪いのかい?」
「え?」
その言葉に泉は自分が泣いていたのだと気が付いた。
瞬きした瞬間、涙がこぼれた。
ダメ―――……!
泉は慌てて席を立った。
そのまま、逃げるようにして教室を飛び出していく。
唖然と、クラスメイトたちが泉の行動を見送っていた。
かすかな音を立てて、真珠が一粒転がっていく。
それを淳は拾い上げ、手のひらで転がすと、次いで握り締めた。
真珠はまたもとの涙となって、淳の手のひらを濡らした。
雨は依然、降り続いていた。
階段を駆け下り、渡り廊下の真ん中で、泉はようやく立ち止まった。
カラン―――。
高く反響するそれに泉は振り返る。
真珠がこぼれて転がっていくのを見た。
「また、真珠?」
瞬きした瞬間、ふたたび涙がこぼれた。
そして、見た。
自分が流した涙が、真珠へと変わっていくさまを。
「うそっ……何、これ……」
受けとめようと広げた泉の手をすり抜けて、また一つ真珠が零れ落ちる。
これではまるで、本当にアイシャのようではないか。
夢の中の自分。
涙を真珠に変える美しい女性は真珠姫と呼ばれていた。
泉は怖くなって目を閉じた。
今、また夢を見ているの?
ここはどこ?
学校のはずだ。さっきまで、清水くんと話しをしていた。
夢じゃない。
現実のはずだ。
息が上がっている。
心臓が早鐘打っている。
それはさっき走ってきたからだ。
だから大丈夫。
こっちは現実のはずなのだ。
だが、泉は恐怖に負けて、目を開けられない。
ばらばらと真珠が零れ落ちる音が聞こえてくる。
泉は耳を塞いだ。
「嫌ぁ……」
私は誰?
『アイシャ、また泣いているのかい?』
また声が聞こえた。
聞きなれた穏やかな優しい声。
いつもそう言っては、困ったように笑って側にいてくれた人。切ないほど愛しい人。
「あなたは誰なの?」
泉は虚空に向かって呼びかけた。
「どこにいるの?」
毎日、毎日、雨ばかりでうっとうしい事この上ない。
クラスメイトたちはそんなことを口にしては、噂話に花を咲かせている。
だが、高橋泉はしっとりと降り注ぐ、今日のような雨の日は好きだった。
こんな日はいつも夢を見るから。
それは、雨の降る日だけに見る夢。
そこは不思議な世界だった。
白い霧に包まれたひそやかな空間。淡く美しいアクアマリンの水の世界を泉はゆっくりと歩いていく。
かすかなさざめきは水のせせらぎだろうか。ひやりとした風がゆるく回廊を吹きぬけていく。
そこら中にちらばる真珠がきらきらと陽の光を反射して輝いていて、泉はまぶしくて目を細める。
通いなれた道筋を迷いのない足取りで進んでいく。
いつもの場所へ。
まるで自分の部屋のように、勝手が分かるのが最初は不思議だった。
だがそれももう慣れてしまった。
これは夢なのだから。知っていて当然なのだ。
白く柔らかな絹の衣に身を包み、そうっと水鏡を覗きこむと、見えてくるのは美しい女性の顔。決して華やかではないが、楚々とした若い女性だ。ゆるやかなウェーブがかかった淡い金の髪は細い絹糸のようになめらかで美しい光沢を放ち、至るところに真珠が飾られている。そして、淡い青の瞳はこの世界の色と同じ。水を溶かしたように薄青に澄んだアクアマリンのよう。優しいけれど、どこか憂いを帯びた物寂しげな瞳がこちらを見つめている。
そうして水鏡から顔を上げると、いつも、ある青年の背を眺めている。
女性と同じ色の髪は長く、まっすぐに背を覆っている。たくましさのなかに優美さを感じさせる物腰。穏やかに、けれど芯の通った青年の性格が窺い知れる。
そうして静かに佇む人影を、あきもせず見つめている。
涙がこぼれる。
そして同じ数だけの真珠が女性の周りを埋め尽くしていく。
胸が締めつけられるほどに、切ない。
それが何故なのかも分からないまま、みつめるだけ。
そんな風景を繰り返し繰り返し、夢に見つづけているのだった。
ぱちっと目が覚めた。
見なれた白い天井をしばらくぼんやりと眺める。
この夢を見た後はいつもどちらが現実なのか分からなくなる。
しっかりと目を覚ましたはずなのに、まだ夢の世界を漂っているかのような強烈な余韻。
そこからなかなか抜け出せなくて、泉は小さく息を吐いた。
「また、見ちゃった……」
そのまま布団に顔をうずめる。
切なくて悲しいと泣き続けている夢の中の女性はいったい誰なのだろう。
泉はベッドから起き出して、鏡の前に立った。
鏡に映るのは見なれた自分の姿。
黒髪ボブの典型的な日本人の容姿はどこをみても特出したところはない平凡なつくりだ。その辺を嘆いて親を恨んでみたところでどうにもならないことは分かっている。
あんな綺麗な金髪でもなければ、淡い青の瞳でもない。ましてや、美人でもない。
小顔といえば小顔なところは共通点と言えるかもしれない。
「そういう願望でもあるってことかな?」
泉は髪を撫で付けながら、鏡をのぞきこみ、涙の跡を見つけた。
それはいつもの事だったので、目の淵をそっとぬぐう。
「本当に、何なんだろう」
いつも雨の降る日に見る夢を、泉は不思議に思っていた。
その夢に同調して泣いている自分が滑稽に思えてくるときもある。
けれどこの夢を見たくないと思うことは不思議と全くなかった。
ふいに枕元でなにか光っているのを見つけた。
淡いピンク色の光沢を放つ小さな真珠玉が一粒ころがっていた。
「真珠?どうしてこんなところに」
泉は首を傾げたが、真珠玉を制服のポケットにしまった。
顔を洗って身支度も整えて、階段を降りていくと、お味噌汁の良い匂いが漂ってきていた。
「おはよう」
「ああ、おはよう、泉」
新聞を広げていた父、文隆が顔を上げて挨拶を返してくる。そしてまた新聞へと視線を戻す毎日の変わらない風景。食事中に止めてくださいと母に何度も叱られても、懲りずに読みつづけるのだ。泉は相変わらずのその光景に笑いながら、手を合わせて食事を始めた。
「あ、そうだ、お母さん。私の部屋に真珠が落ちていたよ」
「あらやだ、取れちゃったのかしら?」
泉がポケットから差し出した真珠玉を受けとって、静子は怪訝そうに見遣る。
「糸通しの穴があいてないから、ネックレスが切れたわけじゃなさそうねぇ。イヤリングは持っていないし……ブローチにこんな大きさのって、あったかしら?」
「お母さんのとは違う?」
「どうかしらねぇ。ちょっと見てくるわ。あらでもこの真珠、ちょっと珍しい色をしているわね……」
独り言を言いながら、静子は自分の部屋に消えていく。
朝のニュースでは全国各地での梅雨の情報が流れていた。大雨でどこかの川が氾濫して大変な事になっているようだ。現地の必死の救助活動が報道されている。濁流に飲まれ、家や車が流されていく光景に、泉の食事の手が止まる。
「どうした?早く食べないと遅刻するぞ」
父の言葉に泉は我に返った。
何か思い出しかけて、それは形にならないまま消えていった。
泉は一瞬支配した感覚が何なのか分からないまま、食事を終えた。
時計は七時半を指している。
そろそろ出かけなければ行けない時間だ。ちょうどいいタイミングで、泉のスマホがブルっと震えた。
アラームを止めて、泉は慌てて立ち上がった。
「じゃあ、行ってきます」
外はやはり雨。
小雨が振り続いている。
みんながうっとおしいという雨も泉は大好きだった。
泉はお気に入りのペパーミントグリーンの傘をさして、ふんふんと鼻歌を歌いながら学校へ向かった。
しっとりと涼やかな雨が降りつづけていた。
新緑の若葉も白く靄にけぶる校庭で、彼は佇んでいた。
ひとり。
音もなく、静かな聖域に。
天を仰ぎ、雨にぬれている少年。
とても気持ち良さそうに、笑みさえ浮かべて。
その少年を泉は知っていた。
同じクラスの少年だったから。
泉はずっとその背を見つめていた。
まるで夢の中のあの女性のように。
彼が、振りかえるまで。
「高橋?」
泉ははっと我に返った。
少年は泉がそこにいることに少しだけ驚いたようで、小首を傾げてこちらを見た。
声をかけることも出来なくて、結果見つめる形になってしまっていたことに気がついて、泉は恥ずかしくなって俯いた。
「風邪……ひくよ」
やっとのことで搾り出した泉の小さな声に少年は微笑する。
そのやわらかな笑顔に、泉の鼓動が一瞬だけ跳ね上がった。
雨の中にいるのに、まったく気にするようでもなく、逆に幸せそうな微笑を浮かべる少年。
不思議な空気を纏っていると泉は思った。
透明で、とても綺麗な。
清涼感とでも表現するべきなのだろうか。
だが、そんな言葉では現しきれない。
「うん、大丈夫……ありがとう」
少年は穏やかにそう答えた。
「雨が好きなの?」
泉が尋ねると、少年はふわりと笑った。
とても優しく。
なぜか、とても懐かしい笑みに、胸が痛くなった。
知らないはずなのに、懐かしいと思う。
それはやはり夢と同じ光景だったからだろうか。
一人、静かに雨の中で天を仰いでいた少年を見たとき、泉は本当に驚いて声も出なかったのだった。
泉はそっと教室を眺めた。
だが、彼の姿はない。
少年はクラスメイトで、泉も二、三度必要にかられて話したことがあったが、それほど仲が良いわけでもない。
クラスでもおとなしくてあまり目立たない泉は、クラスの男の子と気軽に話が出来るほど活発でもなかったので、少年が泉の名前を知っていたことに、少なからず驚きを覚えていた。高校も二年に進級してまだ二カ月しか経っていない。ましてや、一年次は同じクラスではなかったのに、印象の薄い泉の名前を覚えていてくれたことが驚くと同時に嬉しかった。
少年の名は、清水淳。
そうそう目立つ存在ではないが、独特な雰囲気を纏う不思議な存在感がある少年だ。
教室のドアがふいに開いて、淳が入ってきた。無意識に目が彼の姿を追ってしまって、慌てて俯いた。
「おはよう」
いきなり頭上から挨拶をされて、泉はびっくりして顔を上げた。
淳が目の前で笑っている。
「あ、おはよう……」
消え入りそうな泉の挨拶に、淳はにっこり笑って応えた。
その笑顔にどきりとする。
今更ながらに、彼が綺麗な顔をしている事に気がついた。
こんな綺麗な人だっただろうか。
淳は泉の左斜め前の席に着く。
そうして、泉は気がついた。
綺麗なのは顔だけではない。動作の一つ一つがとても綺麗なのだ。背筋もまっすぐに伸びている。上品な物腰とでも言えばいいのだろうか。一度目に付いてしまうと、他の男子との違いが良く分かる。同じ年頃の少年の、いわゆるがさつな所は全くないのだと気がついた。髪は先ほどまで雨に濡れていたためか、ちゃんとふいてはあるが、まだまだ湿って顔に貼りついている。妙にそれが色っぽく見えてしまって、泉はさらにどきどきしてしまった。
泉の視線に気がついたのか、淳が振り返った。
「何?」
「あ、うん、着替えてきたんだなぁって思って……」
「そりゃそうでしょ」
淳は面白そうに笑った。くるりと向きを変えて、泉と向かいあう。
「ぬれねずみで来たら、みんながびっくりしちゃうだろう」
「あはは、そうだねぇ」
二人で顔を見合わせて笑い合う。
泉は彼と普通に会話している自分に内心驚いていた。小さいころから赤面症でうまく他人と会話できなくてコンプレックスを抱いてさえいたのだ。
「普通はしないよね」
淳はすこしだけ寂しそうに笑って言った。
「びっくりしたけど……でもすごく気持ち良さそうにしていた」
「うん、まあね……好きなんだ」
泉はぎょっとして絶句する。
思考が都合の良い方向に話を持って行こうとする。
好きって―――?
違う、違う。私じゃなくて!
泉の沈黙を受けとって、淳は照れたように頭をかいた。
「やっぱり変かな?雨に濡れるのって誰も嫌がるもんなぁ……」
「あ、ううん、ううん、そんなことないっ」
自分の思考の単純さと馬鹿さ加減に思いっきり赤面する。
「本当?」
「うん、私も好き、だから……」
何やら告白めいた事を口にしていると気がつき、泉は更に真っ赤になって俯いた。
「雨に濡れるのが―――……」
なんとか付け足した言葉に淳は嬉しそうに笑った。
「やっぱり?高橋も雨は好きだと思ったんだ」
「ど、どうして?」
「だって、さっき楽しそうに鼻歌歌っていたし……」
まさか聞かれていたとは知らなかった。
泉は恥ずかしさのあまり、顔を上げられなくなってしまった。
「雨ってなんだか懐かしいの……」
小さな声で話しはじめる泉を淳は黙って耳を傾けていた。
「雨って、確かに冷たくて濡れたりすると寒くて、風邪なんか引いちゃいそうだけど……母さんとかは洗濯物が乾かなくて困るから嫌いだとか言うけど……私は逆に雨の日は嬉しくて……良くわかんないんだけど、雨が懐かしいって思うの……優しい雨はすごく好き……」
泉はおずおずと顔を上げた。
「変、かな?」
「変じゃないよ。実は僕も同じだから」
頬杖をついて、ふわりと淳が笑みを浮かべた。
とても優しい笑みに、泉は安堵した。
そして同じように思う人がいるということが嬉しいと思った。
「あ、また……」
いつも見る夢の中の風景に泉は思わずそうこぼした。この静かな世界に訪れるたびに、泉は泣きたくなってくる。
懐かしくて、でも寂しくて……。
どうしてここに一人でいるのだろう。
誰かがいつもそばにいたはずなのに……。
そう思ったところで、泉ははたと我に返る。
「誰かって、誰?」
知らない誰かの存在を求めている。
無意識に、雨の中で天を仰いでいた少年の顔が浮かぶ。
「清水くん?」
口にした瞬間、泉は赤面した。
慌てて自らの考えを否定するが、一度早まった鼓動はなかなか収まりそうもなかった。
「はぁー、私ってば何を考えているのよ」
泉はドキドキする胸を押さえながら、ついと顔を上げた。
人の気配。
白い靄の向こうに見えるシルエット。
いつもなら青年の後姿が見えてくるはずだったが今日はどこか違った。
さわさわと水のせせらぎだけがその世界の唯一の音だったのに。
青年が何かしゃべっているようだった。
水の流れる音にかき消されてはっきりと聞き取れない。
泉は無意識に歩を進めていた。
「長い、長い戦いだ……いつ終わるともわからぬ戦いだが、変化は訪れた」
柔らかで穏やかな声音の中にどこか苦渋を秘め、青年は語りつづけている。
長く淡い金の髪はまっすぐに流れ落ち、髪についた雫が光を反射して、いっそうまばゆく、儚い。
彼はいったい何を見つめているのか。
何を今、思っているのか。
顔は見えない。
「神龍が魔龍とともに姿を消した」
「……では、ご出陣に?」
そう泉は尋ねる。無意識に。
どうして彼と話をしているのだろう。
心のどこか奥でそう思っている自分も確かに存在する。
けれど、この瞬間、泉は泉でなく、夢の中のあの美しい女性と同化していた。
「命の乙女はもちろん、精霊界を、この『水界』を守るのがわたしたちの使命だ」
青年の強い意志が悲しいと感じる。青年の決断は決して誰にも覆すことは出来ないのだから。
……行ってしまう。遠くへ、離れていってしまう。
心にある思いを口に出すことは許されない。
そのたったひとことが言えない。
そうして彼女は泣いている。
いつも、いつも。
真珠がそこら中に散らばっている。
それは彼女が流した涙の結晶。
流れ落ちては真珠へと姿を変える。
「アイシャ、また泣いているのかい」
あやす様に、なだめる青年の声はいつも優しい。
呼びかけられた名を泉は知らない。でもしっくりと受けとめる事が出来る。
何故、懐かしいのだろう。
こんなにも心が震える。
転がり行く真珠の一粒が青年の足元に届く。
「この分ではこの王宮はおろか水界までも真珠姫によって真珠で埋め尽くされてしまいそうだな」
彼は笑いながらそれを拾い上げ、そして振りかえった。
「……高橋?」
はっとして、泉は顔を上げた。
淳が怪訝そうに見ていた。
話の途中で、泉の意識がどこかに行ってしまったからだ。
白昼夢?
眠っていたのだと気が付いて、泉は赤面する。
「あ、ご、ごめんなさい」
振り返った青年の顔と淳の顔が重なる。
それは今朝、校庭で彼を見てしまったからなのか。
夢の中の青年と同じように、雨にその身をさらしている淳の姿を……。
淳は眉をひそめる。
「具合でも悪いのかい?」
「え?」
その言葉に泉は自分が泣いていたのだと気が付いた。
瞬きした瞬間、涙がこぼれた。
ダメ―――……!
泉は慌てて席を立った。
そのまま、逃げるようにして教室を飛び出していく。
唖然と、クラスメイトたちが泉の行動を見送っていた。
かすかな音を立てて、真珠が一粒転がっていく。
それを淳は拾い上げ、手のひらで転がすと、次いで握り締めた。
真珠はまたもとの涙となって、淳の手のひらを濡らした。
雨は依然、降り続いていた。
階段を駆け下り、渡り廊下の真ん中で、泉はようやく立ち止まった。
カラン―――。
高く反響するそれに泉は振り返る。
真珠がこぼれて転がっていくのを見た。
「また、真珠?」
瞬きした瞬間、ふたたび涙がこぼれた。
そして、見た。
自分が流した涙が、真珠へと変わっていくさまを。
「うそっ……何、これ……」
受けとめようと広げた泉の手をすり抜けて、また一つ真珠が零れ落ちる。
これではまるで、本当にアイシャのようではないか。
夢の中の自分。
涙を真珠に変える美しい女性は真珠姫と呼ばれていた。
泉は怖くなって目を閉じた。
今、また夢を見ているの?
ここはどこ?
学校のはずだ。さっきまで、清水くんと話しをしていた。
夢じゃない。
現実のはずだ。
息が上がっている。
心臓が早鐘打っている。
それはさっき走ってきたからだ。
だから大丈夫。
こっちは現実のはずなのだ。
だが、泉は恐怖に負けて、目を開けられない。
ばらばらと真珠が零れ落ちる音が聞こえてくる。
泉は耳を塞いだ。
「嫌ぁ……」
私は誰?
『アイシャ、また泣いているのかい?』
また声が聞こえた。
聞きなれた穏やかな優しい声。
いつもそう言っては、困ったように笑って側にいてくれた人。切ないほど愛しい人。
「あなたは誰なの?」
泉は虚空に向かって呼びかけた。
「どこにいるの?」
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