上 下
39 / 64

アリス的ご褒美スチル

しおりを挟む
 はう~ん♪
 アリスはうっとりとした瞳で食堂から続くテラス席で向いの席に座るグレースとアランを眺めていた。
 アリスの背後の方の食堂の窓から壁モブ令嬢のユリアンヌ達がうっとりとアリスと同じ瞳でグレースとアランに見惚れている。
 放課後の柔らかな日差しの中、頬を薔薇色に染めたグレースはチラッと隣りのアランを見上げる。それを優しく見返したアランは微笑んだ。
「とっても素敵♪アラン様によくお似合いです~」
「もう、アリスったら褒め過ぎよ」 
 アリスの言葉に恥ずかしそうに微笑むグレースにアリスはゆっくりと首を振る。
「そんな事、御座いません~」
 グレース様もグレース様からの贈られたポケットチーフを胸に差すアラン様もとっても素敵でとってもお似合いで御座います~。
 スプーンをかじっていたアリスの前に現れたのはアランを伴ったグレースだった。アランの制服の胸ポケットにはグレースの発表会出品作品のポケットチーフが飾られている。
「発表会の次の日がお渡ししたい記念日だったのでアラン様にお渡ししたのですけど、やはり完成したポケットチーフをアリスに見て頂きたかったの。そうしたらアラン様が是非見て貰おうって♪」
「私もアリス嬢に子猫の絵がとても可愛かったと一言伝えたかったんだ」
「ええ、とても可愛い子猫達が素敵に描かれていましたわ」
 そう言って目を見合わせて笑顔になるグレースとアランをアリスは瞳にハートマーク浮かべて見つめていた。
 ああ、グレース様とアラン様の2ショット、なんて神々しくて目映くて光り輝いていらっしゃるのかしら。
 尊いわ、推せるわ。白薔薇の舞い散る中で微笑み合うお二人は絵に描いたようなプリンス&プリンセス。クリラブ1で一番で御座います~♪丼飯が何杯でもイケる。しかもアラン様はクリラブ2アイルたんの若かりし頃のバージョン違いではありませぬか~。ゴージャス生スチル、御馳走様です!
 心の中だけでなくウチワとペンライトでこの感謝の気持ちを直接お伝えしたい~。
 ぽ~っとグレースとアランの二人に見惚れるアリス。それを席の脇でクラリアとアナベル&セシル、コーネリアが眺めていた。
 アリスにポケットチーフを見せに行くというグレースとアランに野次馬気分でクラリア達がついてきていた。
「アリス、絵をグレースとアラン様に褒めて戴いて嬉しそうね」
『一晩で仕上げたくせにね。でもお兄様も描いていたから許してあげなくてもないわ』
 クラリアを気軽に呼び付けないアランの事はアナベル&セシルは好意的だ。楽しそうに会話に興じている三人に相槌をうちながらクラリアは笑顔を絶やさず、内心思い切り顔をしかめていた。
 いやそれ、喜んで尻尾ふりふり見るスチルじゃないから。逆だから。アリス、あなたが今夢中で見ているのはライバル令嬢に攻略対象が取られた時に見せられるショボスチル、攻略対象キャラクターとライバル令嬢に目の前でイチャつかれるイチャイチャスチルだから。
 ライバル令嬢の勝利宣言でもあるショボスチル見せられて喜ぶヒロインがどこにいるのっ。
 ここにいた。
 クラリアは小さくため息をつくと、アリスの傍らに行き声を掛けた。
「良かったわね、アリス」
「はい、わざわざ私めの為に足をお運び頂き恐悦至極に存じます~」
「大袈裟ね、お友達に会いに来ただけよ」
 そう言って軽やかに笑うグレース。その気取らない仕草に瞳のハートマークが更に増えるアリス。その耳元でクラリアはボソッと耳打ちする。
「グレースって、初めての○○記念日、○○記念日って言う所謂恐怖のアニバーサリー女なのよね」
「京風のアニバーサリ~?雅どすえ~」
 キラキラに当てられて誤変換アリス。
 駄目だ、こりゃ。
 とクラリアは肩を竦めて、その時食堂全体がざわつき始めた。そのざわめきは段々と近付いている。
「…、何故?」
 顔を上げたクラリアが怪訝そうに眉を寄せ、しかしアリスは気付く事なくグレースとアランを見つめ続けていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件

なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。 そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。 このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。 【web累計100万PV突破!】 著/イラスト なかの

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

処理中です...