27 / 28
第三章 奔流
27
しおりを挟む
――拙い、ジャンクが負けてしまう。
ツヴァイの毒はゆっくりとだが、確実に大輝の体力を削っている。虎之介はパワードスーツのメットを被ると、モニターごしのマリに告げる。
「行くよ、頼む」
【アンタ、分かってるの?】
「え?」
【あのペンダントには、妨害電波を放つ機能がある。今でこそ遮断ケースに入ってるけど、あれを取り出されたらナビもできなきゃ、パワードスーツも機能を失う】
「じゃあ、どうするんだよ?」
【…アンタ、いけるの?ジャンクみたく】
「…分からない。でも、僕がやらなきゃ」
【ヘタな正義感のせいで、死んだりしたら下らないわよ】
「もういい、マリには頼まないよ!」
モニターごしに何かを言うマリとの通話を遮断すると、虎之介は跳躍し着地した。
「おや?」
「く、来るな虎之介!」
虎之介は義手の機能を起こした。スパークする左手の感触を確かめ、ツヴァイを睨み付ける。
「勝負だ」
「あははっ!お前ごときに何ができるんだ?所詮は生身の人間。改造すら施されてないお坊ちゃんが…」
「黙れ。気障野郎」
「へっ、面白い」
ツヴァイは右手から毒針を伸ばす。
「泣くなよ」
虎之介は義手の拳をツヴァイに向けて伸ばした。ツヴァイは針で跳ね除けるようにして躱す。通電したままツヴァイの後頭部に拳を叩き込むと、振り払うようにツヴァイに蹴りを入れた。
「容赦ねぇなぁお坊ちゃん、これとこれが壊れたらどうするつもりだ?」
血清のアンプルと、赤い箱をひらひらと振るツヴァイ。
「これが開けば、お前はただのデクになる。そしてこれが割れたら、電人ジャンクこと三条大輝は、死ぬ」
仁王立ちのまま、虎之介は義手のスパークを収めた。
「卑怯な…」
「卑怯なのってさ、悪役の美学だと思わない?」
ツヴァイは虎之介の鳩尾に蹴りを入れた。
「正々堂々なんて、時代遅れのラスボスだよな。そんなのは、ちっともクールじゃない」
「!」
「悪い奴は、とことん悪い奴じゃなきゃね」
虎之介は顎に蹴りを喰らい、仰向けに倒れた。メットのモニターにノイズがはしる。
「それじゃ、デクになってもらうよ」
大輝がふらふらと立ち上がり、ツヴァイに向かっていった。ツヴァイは再び立ち上がった大輝を右手で払いのけた。
「あんま動くと、早く毒がまわっちまうぜ?」
大輝の視界はぼぉっと霞んできた。意識を失う刹那、マリのドローンが大輝を回収した。
「や、やめろ…俺はまだ…」
【アンタ、自分の血液が特殊金属だって忘れてるでしょ?】
「……!」
【あのアンプルはフェイク。急いでラボにアンタを戻して血液を入れ替える。それまで、虎之介には時間を稼いでもらうわ】
「そ、そんな…」
【今のアンタじゃ、アレには勝てない。それよりかは、虎之介のほうがマシ】
「なら、早く…」
【言われなくてたってそうするわ】
†
「電人ジャンク、敗走。残ったのはお坊ちゃん、さぁて、これはピンチってやつだよね?」
「…!」
「ほら、このケースを開けばたちまち…」
ツヴァイはペンダントのケースを開く。中のペンダントを取り出すと高笑いをはじめた。
「……!」
「…貴様、どうして動ける?」
ツヴァイは訊いた。義手からスパークを放つと、虎之介は渾身のパンチをツヴァイに叩き込んだ。
「がふっ!」
「……残念だったようだな」
ペンダントを憎々しげに睨み付けるツヴァイ。
「…あの、アマがぁ…」
「?」
「人間の頃の良心なんざ残してやがったんだな…!」
「…何だか知らないが、助かったよ」
ツヴァイは再び虎之介を睨む。
「まぁいい、お前はデクにしなくたって、殺せる」
ツヴァイの毒はゆっくりとだが、確実に大輝の体力を削っている。虎之介はパワードスーツのメットを被ると、モニターごしのマリに告げる。
「行くよ、頼む」
【アンタ、分かってるの?】
「え?」
【あのペンダントには、妨害電波を放つ機能がある。今でこそ遮断ケースに入ってるけど、あれを取り出されたらナビもできなきゃ、パワードスーツも機能を失う】
「じゃあ、どうするんだよ?」
【…アンタ、いけるの?ジャンクみたく】
「…分からない。でも、僕がやらなきゃ」
【ヘタな正義感のせいで、死んだりしたら下らないわよ】
「もういい、マリには頼まないよ!」
モニターごしに何かを言うマリとの通話を遮断すると、虎之介は跳躍し着地した。
「おや?」
「く、来るな虎之介!」
虎之介は義手の機能を起こした。スパークする左手の感触を確かめ、ツヴァイを睨み付ける。
「勝負だ」
「あははっ!お前ごときに何ができるんだ?所詮は生身の人間。改造すら施されてないお坊ちゃんが…」
「黙れ。気障野郎」
「へっ、面白い」
ツヴァイは右手から毒針を伸ばす。
「泣くなよ」
虎之介は義手の拳をツヴァイに向けて伸ばした。ツヴァイは針で跳ね除けるようにして躱す。通電したままツヴァイの後頭部に拳を叩き込むと、振り払うようにツヴァイに蹴りを入れた。
「容赦ねぇなぁお坊ちゃん、これとこれが壊れたらどうするつもりだ?」
血清のアンプルと、赤い箱をひらひらと振るツヴァイ。
「これが開けば、お前はただのデクになる。そしてこれが割れたら、電人ジャンクこと三条大輝は、死ぬ」
仁王立ちのまま、虎之介は義手のスパークを収めた。
「卑怯な…」
「卑怯なのってさ、悪役の美学だと思わない?」
ツヴァイは虎之介の鳩尾に蹴りを入れた。
「正々堂々なんて、時代遅れのラスボスだよな。そんなのは、ちっともクールじゃない」
「!」
「悪い奴は、とことん悪い奴じゃなきゃね」
虎之介は顎に蹴りを喰らい、仰向けに倒れた。メットのモニターにノイズがはしる。
「それじゃ、デクになってもらうよ」
大輝がふらふらと立ち上がり、ツヴァイに向かっていった。ツヴァイは再び立ち上がった大輝を右手で払いのけた。
「あんま動くと、早く毒がまわっちまうぜ?」
大輝の視界はぼぉっと霞んできた。意識を失う刹那、マリのドローンが大輝を回収した。
「や、やめろ…俺はまだ…」
【アンタ、自分の血液が特殊金属だって忘れてるでしょ?】
「……!」
【あのアンプルはフェイク。急いでラボにアンタを戻して血液を入れ替える。それまで、虎之介には時間を稼いでもらうわ】
「そ、そんな…」
【今のアンタじゃ、アレには勝てない。それよりかは、虎之介のほうがマシ】
「なら、早く…」
【言われなくてたってそうするわ】
†
「電人ジャンク、敗走。残ったのはお坊ちゃん、さぁて、これはピンチってやつだよね?」
「…!」
「ほら、このケースを開けばたちまち…」
ツヴァイはペンダントのケースを開く。中のペンダントを取り出すと高笑いをはじめた。
「……!」
「…貴様、どうして動ける?」
ツヴァイは訊いた。義手からスパークを放つと、虎之介は渾身のパンチをツヴァイに叩き込んだ。
「がふっ!」
「……残念だったようだな」
ペンダントを憎々しげに睨み付けるツヴァイ。
「…あの、アマがぁ…」
「?」
「人間の頃の良心なんざ残してやがったんだな…!」
「…何だか知らないが、助かったよ」
ツヴァイは再び虎之介を睨む。
「まぁいい、お前はデクにしなくたって、殺せる」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
空のない世界(裏)
石田氏
SF
働きながら書いてるので更新は不定期です。
〈8月の作者のどうでもいいコメント〉
『本格的な夏になりました。学校では夏休み、部活に励む学生、夏の催し夏祭り……ですが、楽しいことばかりではない夏でもある。山のようにある宿題、熱中症等健康悪化、夏休みのない大人。何が楽しくて、こんな暑い中祭りに行くんだと言いながら、祭りに行く自分。まぁ、色々あると思いますが、特に脱水には気をつけましょう。水分不足で、血液がどろどろになると、脳梗塞の原因になります。皆、熱中症だけじゃないんだよ。ってことで、今月も仕事しながら執筆頑張ります』
完全に趣味で書いてる小説です。
随時、概要の登場人物更新します。
※すいません、途中字数オーバーがありますが、御承知ください。(アルファポリス様更新前の上限一万字の時のことです)
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる