電人ジャンク

回転饅頭。

文字の大きさ
上 下
26 / 28
第三章 奔流

26

しおりを挟む
 柑奈はにやにやしながら、大通りを貰ったペンダントの箱を大事にバッグの中に確かめながら歩く。ペンダントは箱に入った状態なら電磁波を発さないようだ。周囲への影響はまだない。

「あれを取り出されたらおしまいだ。あれをどうにかできるのは、大輝しかいない」
「…強硬手段に出るしかないのか?」
「悪いな」
「…ホントだよ」

 大輝は柑奈との距離をそっと縮めていく。バッグをひったくるしかないのか…

「きゃっ!」
「あ!」

 柑奈の脇を黒いキャップを被った男が走っていった。その瞬間柑奈のバッグはその男の手に渡った。

「ひっ、ひったくり!」

 大輝は咄嗟に裏通りに入った。これはある意味好機だ。大輝は集中した。体内の特殊金属がスパークをはじめる。

「…変身」

 大輝は電人ジャンクに変身した。通りに戻ると、ひったくり犯はまだ見える距離にはいるようだ。大輝はひったくり犯の頭上の看板に放電した。磁力を帯びた看板は大輝を引き寄せる。

「あっ!」
「あれは!?」

 歓声のような悲鳴のような声が上がる。ひったくり犯との距離が若干詰まる。看板を蹴るようにして大輝は跳躍し、ひったくり犯の前に着地した。男は若い、痩せた髭面だ。

「返してもらう」
「やっ、やなこった!」
「そうか、なら仕方ないな」

 男はナイフを持っているようだ。大輝はナイフに向けて放電し、ナイフを奪い取った。

「あっ!」
「観念しろ」

 ナイフを金属の球に変えると、それを男に投げつけた。金属の球は男の鳩尾にめり込む。膝から崩折れた男から大輝はバッグを取り返す。
 問題は、そこからどうやってペンダントを奪うかだ。柑奈との距離は段々近づく。

「悪いな」

 男の陰に隠れるようにして、大輝はこっそりとペンダントを奪い取った。小さな声でごめんよと呟きながら。

「でっ、電人ジャンク?」
「災難だったな。気をつけるんだよ」

 大輝は頭上に向けて放電した。ビルの屋上の手すりを磁石に変えると、大輝は自らを引き寄せ脱出した。

「助かったぁ…」
「…よ、お見事だったな」

 そこには、椎葉リョウの姿があった。涼しげなその顔は心なしか歪んでいる。憎々しげに吐き捨てる。

「お前だけは、さっさと殺しておくべきだったかもね」
「…ツヴァイ…」
「お前、一人だよな」

 ツヴァイは変身した。その姿はスズメバチの怪人だ。

「ここで葬ってやる」

 大輝は構える。ツヴァイは跳躍し、大輝の顔面に向けて左のフックを見舞った。ドライとは違い、重さのあるパンチ。大輝は躱すように身を翻し、右の拳で頬を捉える。

「がふっ!」

 体勢を崩したツヴァイに蹴りを放った。ツヴァイは蹴りをもろに受け、隣のビルの屋上に吹き飛んだ。

「ちっ!」

 そのままツヴァイは羽を広げ、空に跳ね上がる。右手を針に変えると、大輝に向けて突進して来た。凄いスピードだ。

「くっ、、、」

 大輝は身体を反転させ、針の猛襲を躱した。ツヴァイを吹き飛ばした時に折れた手摺に向けて放電した大輝は、それを引き寄せ、一本の剣に変えた。

「ははは、ケッサクだな。それで俺に勝てると?」
「よく喋るな、お前」
「へっ、減らないな、口は」

 ツヴァイの針は剣と鍔迫り合いのように打ち合う。金属音が響いた。大輝は擦り上げて針を躱すと、下から切り上げた。ツヴァイはひらりと空に逃げた。

「逃げるな!」
「逃げる?馬鹿か貴様は」

 空から直滑降のように突進するツヴァイ。針は大輝を掠めた。

「ぐっ!」
「甘いな」

 ツヴァイは着地し、コンクリートから針を引き抜く。

「俺の針に、毒があるのはわかるな」

 大輝の右腕に焼け付くような痛みが走る。

「ぐわぁっ!」
「はははっ!リミットは今日一日だ。それまでにこの血清を打たないと死ぬぞ」

 ツヴァイはひらひらと血清のアンプルを見せびらかす。

「それまでに、お前が俺に殺されるだろうがな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

聖女戦士ピュアレディー

ピュア
大衆娯楽
近未来の日本! 汚染物質が突然変異でモンスター化し、人類に襲いかかる事件が多発していた。 そんな敵に立ち向かう為に開発されたピュアスーツ(スリングショット水着とほぼ同じ)を身にまとい、聖水(オシッコ)で戦う美女達がいた! その名を聖女戦士 ピュアレディー‼︎

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

処理中です...