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第三章 奔流
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柑奈はにやにやしながら、大通りを貰ったペンダントの箱を大事にバッグの中に確かめながら歩く。ペンダントは箱に入った状態なら電磁波を発さないようだ。周囲への影響はまだない。
「あれを取り出されたらおしまいだ。あれをどうにかできるのは、大輝しかいない」
「…強硬手段に出るしかないのか?」
「悪いな」
「…ホントだよ」
大輝は柑奈との距離をそっと縮めていく。バッグをひったくるしかないのか…
「きゃっ!」
「あ!」
柑奈の脇を黒いキャップを被った男が走っていった。その瞬間柑奈のバッグはその男の手に渡った。
「ひっ、ひったくり!」
大輝は咄嗟に裏通りに入った。これはある意味好機だ。大輝は集中した。体内の特殊金属がスパークをはじめる。
「…変身」
大輝は電人ジャンクに変身した。通りに戻ると、ひったくり犯はまだ見える距離にはいるようだ。大輝はひったくり犯の頭上の看板に放電した。磁力を帯びた看板は大輝を引き寄せる。
「あっ!」
「あれは!?」
歓声のような悲鳴のような声が上がる。ひったくり犯との距離が若干詰まる。看板を蹴るようにして大輝は跳躍し、ひったくり犯の前に着地した。男は若い、痩せた髭面だ。
「返してもらう」
「やっ、やなこった!」
「そうか、なら仕方ないな」
男はナイフを持っているようだ。大輝はナイフに向けて放電し、ナイフを奪い取った。
「あっ!」
「観念しろ」
ナイフを金属の球に変えると、それを男に投げつけた。金属の球は男の鳩尾にめり込む。膝から崩折れた男から大輝はバッグを取り返す。
問題は、そこからどうやってペンダントを奪うかだ。柑奈との距離は段々近づく。
「悪いな」
男の陰に隠れるようにして、大輝はこっそりとペンダントを奪い取った。小さな声でごめんよと呟きながら。
「でっ、電人ジャンク?」
「災難だったな。気をつけるんだよ」
大輝は頭上に向けて放電した。ビルの屋上の手すりを磁石に変えると、大輝は自らを引き寄せ脱出した。
「助かったぁ…」
「…よ、お見事だったな」
そこには、椎葉リョウの姿があった。涼しげなその顔は心なしか歪んでいる。憎々しげに吐き捨てる。
「お前だけは、さっさと殺しておくべきだったかもね」
「…ツヴァイ…」
「お前、一人だよな」
ツヴァイは変身した。その姿はスズメバチの怪人だ。
「ここで葬ってやる」
大輝は構える。ツヴァイは跳躍し、大輝の顔面に向けて左のフックを見舞った。ドライとは違い、重さのあるパンチ。大輝は躱すように身を翻し、右の拳で頬を捉える。
「がふっ!」
体勢を崩したツヴァイに蹴りを放った。ツヴァイは蹴りをもろに受け、隣のビルの屋上に吹き飛んだ。
「ちっ!」
そのままツヴァイは羽を広げ、空に跳ね上がる。右手を針に変えると、大輝に向けて突進して来た。凄いスピードだ。
「くっ、、、」
大輝は身体を反転させ、針の猛襲を躱した。ツヴァイを吹き飛ばした時に折れた手摺に向けて放電した大輝は、それを引き寄せ、一本の剣に変えた。
「ははは、ケッサクだな。それで俺に勝てると?」
「よく喋るな、お前」
「へっ、減らないな、口は」
ツヴァイの針は剣と鍔迫り合いのように打ち合う。金属音が響いた。大輝は擦り上げて針を躱すと、下から切り上げた。ツヴァイはひらりと空に逃げた。
「逃げるな!」
「逃げる?馬鹿か貴様は」
空から直滑降のように突進するツヴァイ。針は大輝を掠めた。
「ぐっ!」
「甘いな」
ツヴァイは着地し、コンクリートから針を引き抜く。
「俺の針に、毒があるのはわかるな」
大輝の右腕に焼け付くような痛みが走る。
「ぐわぁっ!」
「はははっ!リミットは今日一日だ。それまでにこの血清を打たないと死ぬぞ」
ツヴァイはひらひらと血清のアンプルを見せびらかす。
「それまでに、お前が俺に殺されるだろうがな」
「あれを取り出されたらおしまいだ。あれをどうにかできるのは、大輝しかいない」
「…強硬手段に出るしかないのか?」
「悪いな」
「…ホントだよ」
大輝は柑奈との距離をそっと縮めていく。バッグをひったくるしかないのか…
「きゃっ!」
「あ!」
柑奈の脇を黒いキャップを被った男が走っていった。その瞬間柑奈のバッグはその男の手に渡った。
「ひっ、ひったくり!」
大輝は咄嗟に裏通りに入った。これはある意味好機だ。大輝は集中した。体内の特殊金属がスパークをはじめる。
「…変身」
大輝は電人ジャンクに変身した。通りに戻ると、ひったくり犯はまだ見える距離にはいるようだ。大輝はひったくり犯の頭上の看板に放電した。磁力を帯びた看板は大輝を引き寄せる。
「あっ!」
「あれは!?」
歓声のような悲鳴のような声が上がる。ひったくり犯との距離が若干詰まる。看板を蹴るようにして大輝は跳躍し、ひったくり犯の前に着地した。男は若い、痩せた髭面だ。
「返してもらう」
「やっ、やなこった!」
「そうか、なら仕方ないな」
男はナイフを持っているようだ。大輝はナイフに向けて放電し、ナイフを奪い取った。
「あっ!」
「観念しろ」
ナイフを金属の球に変えると、それを男に投げつけた。金属の球は男の鳩尾にめり込む。膝から崩折れた男から大輝はバッグを取り返す。
問題は、そこからどうやってペンダントを奪うかだ。柑奈との距離は段々近づく。
「悪いな」
男の陰に隠れるようにして、大輝はこっそりとペンダントを奪い取った。小さな声でごめんよと呟きながら。
「でっ、電人ジャンク?」
「災難だったな。気をつけるんだよ」
大輝は頭上に向けて放電した。ビルの屋上の手すりを磁石に変えると、大輝は自らを引き寄せ脱出した。
「助かったぁ…」
「…よ、お見事だったな」
そこには、椎葉リョウの姿があった。涼しげなその顔は心なしか歪んでいる。憎々しげに吐き捨てる。
「お前だけは、さっさと殺しておくべきだったかもね」
「…ツヴァイ…」
「お前、一人だよな」
ツヴァイは変身した。その姿はスズメバチの怪人だ。
「ここで葬ってやる」
大輝は構える。ツヴァイは跳躍し、大輝の顔面に向けて左のフックを見舞った。ドライとは違い、重さのあるパンチ。大輝は躱すように身を翻し、右の拳で頬を捉える。
「がふっ!」
体勢を崩したツヴァイに蹴りを放った。ツヴァイは蹴りをもろに受け、隣のビルの屋上に吹き飛んだ。
「ちっ!」
そのままツヴァイは羽を広げ、空に跳ね上がる。右手を針に変えると、大輝に向けて突進して来た。凄いスピードだ。
「くっ、、、」
大輝は身体を反転させ、針の猛襲を躱した。ツヴァイを吹き飛ばした時に折れた手摺に向けて放電した大輝は、それを引き寄せ、一本の剣に変えた。
「ははは、ケッサクだな。それで俺に勝てると?」
「よく喋るな、お前」
「へっ、減らないな、口は」
ツヴァイの針は剣と鍔迫り合いのように打ち合う。金属音が響いた。大輝は擦り上げて針を躱すと、下から切り上げた。ツヴァイはひらりと空に逃げた。
「逃げるな!」
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「ぐっ!」
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「ぐわぁっ!」
「はははっ!リミットは今日一日だ。それまでにこの血清を打たないと死ぬぞ」
ツヴァイはひらひらと血清のアンプルを見せびらかす。
「それまでに、お前が俺に殺されるだろうがな」
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