電人ジャンク

回転饅頭。

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第一章 覚醒

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「なんか懐かしいな、こうやっていきなり話したいからって…」
「先生は、やっぱり歳が近くて相談しやすかったからかなって思うんです」

 大輝はよく、島津に色んな相談をしていた。勉強のことも、それ以外の事も…

「お前、結構惚れっぽい男だったからな」
「またそんな…」
「あははは!冗談だよ!」

 河原に座る。人は誰もいない。だだっ広い草むらにただ水の流れる音と、遥か向こうの車のヘッドライトがちかちかとしている。

「ねぇ、先生」
「ん?」
「ちょっと、聞きたいことがあるって、俺言ったじゃないですか?」
「だな」
「…俺の家の事件のこと、言ってましたよね」
「あぁ、まぁ不謹慎だったかもしれないけどな…」
「あん時、連続殺人って言ってましたよね」
「あぁ」
「何で分かったんです?」

 大輝はちらりと島津に目をやった。島津はこっちを見ていない。ただ流れる川の水面に反射する光を見ていた。

「家は確かに壊された。でもあれがここ最近の怪人による事件だなんて公表はされてないはずです」
「?違うのか?」
「…惚けるなよ」

 大輝の目付きが変わった。背後から足音が聞こえてくる。

「大輝!そこを…」
「分かってるんだ虎之介!」

 虎之介はパワードスーツで武装している。島津はすっくと立ち上がり、小さく溜息をついた。出来の悪い生徒に匙を投げるように、やれやれと肩を竦めながら。

「三条、やっぱりお前は、ちゃんと殺しとくべきだったよ…」
「…あんただったんだな」
「そうさ、馬鹿な奴だな。こんな所に呼び出して…みすみす殺されに来たんだろ?」

 島津の右手は既にカニのハサミに変わっている。

「離れろ、大輝から」
「おや、御坊ちゃまか。こりゃあいい」
「覚悟しやがれ…」
「育ちのよろしい御坊ちゃまらしからぬ発言ですこと…そんなコには、お仕置きしなきゃな」

 島津はカニの甲羅のようなアーマーを纏った姿に変身した。振り上げたハサミを虎之介に振り下ろす。虎之介は身を躱してそれをいなした。

「大輝!離れろ!」
「でも…」
「まだお前はコンセントレーションがうまくとれていない!今は特にだ!」

 酒も飲んでいる。変身するには意識の状態が些か不安定であるという。大輝は悔いた。いつもなら、簡単に変身できるというのに。

「何のことだ、あ?」
「無駄話はあとだ。行くぞ」

 虎之介は右脚を振り上げ、怪人の横っ面に当てた。怪人はよろめく。そこにもう一発蹴りを放った。ダメージはそこそこ。怪人はよろめいた。

「小癪な」
「これでも、食らえ!」

 義手による通電パンチ。アーマーの弱い腹部に向けてボディブローのようにぶち当てる。怪人はよろめいた。そこに重ねて撃ち込むが、簡単にカニのハサミに薙ぎ払われた。吹き飛んだ虎之介は大輝もろとも川に落ちた。

「うわっ!」
「ははっ、どうした御坊ちゃまよ」
「ちっ!」

 川から上がった虎之介は怪人に果敢に向かって行った。水に濡れてしまった状態での通電パンチは自殺行為だ。懐に潜ると、怪人に肘を叩き込む。
 その頃、川に沈む大輝…
――俺は…一体…
 ゆっくりと目を開く。状況は最低だが、その目には水面を通し満天の星と街明かりが見えた。
――あんな奴に、好き勝手されてたまるか。
――俺は、電人ジャンク
――電人ジャンクだ!

 水を跳ね上げ、大輝は立ち上がった。びっしょりと濡れた身体にぴたりと服が貼り付いている。

「死に損ないが。またやられたいのか?」
「いや、ありがとうよ。水に落っことしてくれて」
「大輝…」
「おかげで頭はシャッキリした」

 大輝は集中した。白いスパークが掌から走る。

「虎之介、ありがとう」
「大輝、お前…」
「もう、いけるよ」

 大輝の全身に熱い力が迸る。準備はできている。

「……変身」

 かっとスパークが走る。大輝の全身を光が包み、濡れた身体は一気に熱を持ちながら武装した。シルバーの金属質の特殊金属のアーマー。

「お前だったんだな?」
「あぁ」

「俺は、電人ジャンクだ」
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