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 やはり、弾くなら自分の手によく合うギターが一番良い。ギターを始めたばかりの頃から手が割と小さめの僕はネックが細いストラトキャスターを弾いている。譜面を見ながらギターを弾いていたら、いきなり着信があった。

「え?」

 主はうえの姐さんだった。何かあったのだろうか?僕はギターをベッドに仮置きすると、スマホを取って通話を開始させた。

「はい」
【めいちゃん、うち来れる?】
「え、僕今日出でしたっけ?」
【ちゃう、話があんねん】
「え?僕に?」
【せや、早う来たってや】
「え?だってまだ昼間ですけど」

 プツッ

 通話が切られた。僕はなんとなく嫌な予感がしていた。今まで弾いていたらギターをスタンドに立てると、パーカーに袖を通して身支度をした。

「なんだよ、どうしたのかな?」

 LINEを見てみた。今日はまだアンナさんからメッセージは来ていない。ポケットにスマホを仕舞い、部屋を出た。割と繁華街に近い場所にある僕のアパートからキッチンカーが見えた。人気店らしいが、何故か僕はその店のクレープは食べた事がない。若い女の子がやたら並んでいるからである。なんだか恥ずかしい。僕はそれを横目にチャリンコに跨った。



「お、来た」
「めいさん、えっ?」

 昼間の【居酒屋一銭】には勿論客はいない。開店前だからだ。にしても何故アンナさんがいるんだろう?バッチリメイクを決めたアンナさんと、いつものナチュラルメイクの姐さんが並んでいる。いち姉はいない。

「どうしたんです?姐さん」
「めいちゃんよ。あんたにはちゃんと訊いててほしいねんけどな…」
「ど、どうしたんで…」
「アンナさんって言うたな」
「えっ、はい」
「あんた、めいちゃんを騙すつもりはない言うたよね?」
「勿論ですよ」
「ふぅん、あんさん女やないのに?」

――えっ?姐さん、今何て言ったんだ?

「何、何を仰るんで?」
「確かにあんたは美人や、ちょっと声はハスキーやけど、女となんも変わらんくらいや。」
「そうですよ、な、何を言うんですか姐さん…」
「せやけど、隠せへんのは手や。なんで手袋取らへんねん?」
「?」
「あんさん、多分手がでかすぎんねんな。それがバレたら自分が男やてバレてまうねんやろ」
「…」
「ほんでな、ちょっと常連の倭同はんに、アンナさんの写真見せてん。ほならすぐ言いよったで、知り合いの劇団員やて、男の」
「!」
「どないつもりやねん?」

 アンナさんは下を向いたままだ。姐さんはつと仁王立ちしたまま、眼下に見下ろすようにアンナさんに言っている。

「バレちゃ、しょうがないな」
「えっ?」
「ごめんなさい、貝原さん。許してください」
「そんなぁ…」
「あんさんの正体、話さへんのか?」
「…」
「ほなら、アタシが言うたる」
「姐さん、アンナさんは…」
「めいちゃん、元彼女さんはなんて名前やったっけ?」
「り、りおなちゃんです」
「そのりおなはんの、弟や」
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