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第一章 討伐騎士団宿舎滞在編

13 フライドポテトは神の食べ物

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 ルーに怒られた。

 人前であんまり魔法を使ってはいけないと言われた。何故ー!?何故なのーー!?何故なのよーーー!!

 ルー曰く、私の事情を知らない人はこの騎士団にはほとんど居ないらしく、レベルとかもバレてるんだって。
 それなのに、幼児と同じレベルの人があんなふうに魔法を使ってたら有り得なすぎて大騒ぎになる、と。しかも私の浄化やコンロの蓄積された魔力の質から言って只者では無いのは明らか……という事だ。

 しかも調理場は新品の頃のようにあらゆる物が綺麗に蘇っていたらしい。
 ルーの手配ですぐさま箝口令が通知されたのでこのことは見習い騎士以外知らないし、王宮には報告しない、と決めたそう。
 うう……迷惑掛けてしまった……。

「普通は、魔石に魔力をこめて魔力をコントロールする所から始めるんです」

 ……だ、そうです。反省。

「ごめん、ルー……忙しそうだったから、自分で出来るかな……ってやっちゃったら出来たんだよー」
「もういいですよ、ケイ様。僕も戻ってきたら教えようって後回しにしちゃったのが悪かったので」
「ルー……優しい子!!」

 相変わらず優しくて可愛い!

 忙しいルーはその後、見習い騎士達に呼ばれて急いで調理場へと戻って行った。
 私もその後を追って調理場へ。

 よしっ、気を取り直して自分の為の晩御飯、作りますか!ルーにもお裾分けして、迷惑掛けてしまったお詫びをしようと思ってる。

「んーと、基本の野菜はあるとして……余ってる塩味スープも貰ってきたし……作りますか、カレー!」

 そう、わたしはカレーを作るのだ!
 キャンプ行く道でこの世界に来たからね、もうずーっとカレーが食べたくて食べたくて!
 元々、キャンプ場でカレーを食べる為にキャンプ行ってたんだもん。
 丁度余りまくってるスープがあるってなら作るしかないよね。

 そして今回はズボラにスープカレーにしちゃうー!

 一から煮込んだりするのがめんどくさいから、野菜は素揚げしようと思う。人参とじゃがいもは軽く茹でておく。その方が早いからね、時短は大切だよ!
 そして玉ねぎはスープにも入ってるけど、私が玉ねぎ大好きだからいれちゃう。これは4分の1にカットしておくよ!
 野菜が茹だるまで、もう少し野菜を、と思って食料庫へ。
 
 見た目かぼちゃっぽいのと、キノコと……おお!大根みたいなものもあるね!お芋系はそこそこあるし、根菜類が豊富にあるな。やっぱり保存の関係とか?
 日本にあった野菜に似ているものはわかるけど、異世界です!って見た目のものはまだよくわからないので、今回はパス。
 乳製品だって豊富にあるから、これももらっちゃう。

 食料庫からかぼちゃとさつまいも、キノコ、あとバターとチーズも貰ってきた。
 キノコは石づき――……木に接触してた部分のこと――を落としてから、軸ごと薄くスライス。しめじっぽいものは房からバラバラにして食べやすく。
 あ、このキノコ、エリンギっぽいから多分エリンギ!さけるチーズみたいでたのしいし手でちぎっちゃう。
 キノコはバターソテーにして軽く塩ふっておくよ。

 ……バターの匂い、いい匂い。

 ふわふわと香る匂いにつられて見習い騎士達が私の方を遠巻きながら見ている。
 うんうん、わかるよその気持ち。

 そんな視線はなんのその。
 私は私、ごーいんぐまいうぇい!

 さあ、ボスであるかぼちゃの下ごしらえだ!
 日本だとカットされたものが売られてるからこの硬いかぼちゃと戦わずして勝利を納めてきたもんだけど、ここは異世界。便利なスーパーやレンジという裏ワザは効かないのである。
 しかも私の装備は愛刀のNo.9……この丸ごとかぼちゃを前にしてなんと貧弱な装備……っ!!

「女神チートですぱっ!なんて事が……起きましたね」

 言いながらかぼちゃにナイフを当てたら切れました。
 ……こわ!!こっわ!!!
 何この切れ味!正気ですか!?
 何となくいつもと切れ味がちがーう、なんて思ってた時代が確かにありましたけど!じゃがいもも人参も玉ねぎもスパッと切れてたもんね!
 もともとこの折り畳みナイフは切れ味が凄いことで有名だけど!それにしても切れすぎだ。
 これが、女神チートか……気を付けないと自分の指も持っていかれるぜ……!

 確かもう一つ薪割り用のモーリナイフもあるけどあっちはもっと凄いんだろうな、と思いながらかぼちゃとさつまいもを難なくクリア。

 かぼちゃの一部はカレーの付け合わせ用にスライスして、あとは賽の目に切る。
 マヨネーズを作ったし、かぼちゃとさつまいものコロコロサラダを作るのだ!
 カレーにはマヨネーズ系のサラダが必須です!

 丁度人参とじゃがいもを茹でてた鍋がいい感じなので中身を引きあげたらそのまま賽の目にしたかぼちゃとさつまいもを茹でるのに使っちゃう。
 ……時短です。

 水から茹でるのが本当だけど、私はズボラ人間。
 野菜を素揚げしてる間に煮立ってるでしょ。柔らかくなればいいのだから気にしないし、関係ない。

 こちらもサクッと素揚げというか焼き揚げ完了!
 使う油が少ない方が時短だしね。
 ここらでちょっとつまみ食い。
 揚がったじゃがいもをぱくり。うーん、ポテトフライ!簡単に美味しいジャンクなもの!最高!
 
 ポテトフライを自宅で作る時、冷凍のものもいいんだけど私は丸ごと茹でたあとに手で一口サイズに割ったものを揚げる方が好きなんだよね。 
 この、包丁を使わず手で一口にするってのがポイント!
 手で割いてるから割れ目がボソボソしてて、それがサクサク感アップになってるし、揚げる時間も少ないし、茹でてる分油吸ってないからヘルシーな気がして。

 だからその分ソースにカロリーを費やせるのだ!
 ケチャップもいいんだけど、このほくほくじゃがいもとスパイスコレクションが合わさるとビールが止まらないんだよねえ。
 マヨネーズに砂糖と醤油を入れて某ハンバーグ屋さんのマヨネーズにしてつけて食べても美味しいんだ。
 
 今はスパイスボックスがあるから、適当に選んだスパイスでつまみ食い……やっぱり美味しいっ!

「ケイ様……それは……?」

 私がつまみ食いしていたら、ルーが後ろから声をかけてきた。
 お?忙しいの終わったのかな?

「ルーも食べる?」
「いいんですか!?」
「いいよー?……ほいっ、熱いから気をつけてね」

 適当に選んだスパイス……ほりかわをかけたポテトフライをひとつ摘んでルーのお口の中にぽいっ。
 気をつけて、なんて言ったくせに不意打ちで口に食べ物がはいったルーは、はふはふと熱そうにしながら食べている。ちゃんと口の中の食べ物が見えないように手で口を隠してるのがとても可愛い。

 ごくんっ、と無事に飲み込めたらしいルーは、マヨネーズの時と同じように満開の笑顔。
  
「ケイ様ーー!これっ、これ……これぇ!」

 わかる、わかるよルーくん。
 君くらいの年齢は好きだよね、ジャンクなもの。
 私もこの歳になっても好きだもん。

 食欲旺盛なルー位の年齢なら尚更こういうのすきでしょ。

「ふふふ……いっぱい作ったからね……たんとお食べ……」
「いいんですか……?」
「ついでに周りで見てる見習い騎士さんにもね?みんなで食べてよ」
「はいっ!」

 私の了承が聞こえた他の見習い騎士が「ケイ様最高!」とか「お料理聖女様!」とか言ってたけどスルー。
 私は聖女じゃないっての!それは女神様もお墨付きなので否定しておく。

「うわ、これ……これは神の食べ物だ……」 
「サクサクほくほくしてるぅ」
「このかかってる塩はなんだ?いつもの塩じゃないぞ!」
「食べる手が止まらない!」
「あ!お前そんな食うな!ずるいぞ!!」
「早い者勝ちだよお!」

 後ろで喧嘩が始まっている……。
 美味しいものは分け与えようぜ、みんな……。

 あとこの世界の人、神の食べ物作り過ぎ。
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