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13話

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 パーティーの会場は学園の大広間である。レオンにエスコートされながら会場入りするリリー。
 先に来ていた生徒の視線を集める。

「リリー様もレオン様も本当に素敵」
「お似合いですわね」
「理想のお二人ですわ」

 等と小声で噂されているのがレオンの耳にも届き、レオンはフフーンと鼻が高くなる。
 見ろ、リリーは僕の将来の花嫁さんだぞ!
 と、言う感じだ。

「一曲踊ろうか」

 早速、レオンはリリーを誘い、舞台の中央まで行く。
 こう人目を集めるのはリリーは苦手である。
 毎回緊張してトチッてしまうが、自然な流れでレオンが誤魔化してくれる。
 周りからは綺麗に踊ってる様にしか見えず、何人かは見惚れて夢見心地の様な表情で、レオンとリリーのダンスを見つめるのだった。

「ごめんなさい、足を何度か踏んでしまいましたね」

 緊張のダンスを終え、ホッと一息つくリリー。

「良いよ。リリーに足を踏まれるとちょっと興奮しちゃうんだよね僕」
「変な事を言うのは止めてください」

 何を言っているんだこの皇子は。

「レオン様ーー!」

 中央からはけたリリーとレオンだが、誰かがレオンの手を掴んで引き止める。
 こんな事をするのはマリナしか居ないが……

「手を掴まないでくれるかい?」

 とんだ無礼者である。
 レオンはキッとマリナを睨んだ。

「あ、申し訳ありません私ったら」
 
 テヘヘっと笑いながら手を離すマリナ。
 レオンは無視してこのままリリーを連れて立ち去りたかったが、リリーは無言の圧力で(話しかけて来た女性を無視するのは失礼です)と言っている。
 先に失礼してきたのはマリナであると言うのに理不尽だ。

「あの、レオン様」
「何?」

 君に名前を呼ぶ事を許可していないのだけど。大体、自己紹介もしてないし、されていないのだけど。

「私と一曲踊って頂けませか?」
「は?」
 
 身の程知らずもここまでくるとめでたいな。
 レオンは呆れて言葉も出ない。
 周りがザワザワしだす。 
 レオンがパーティーでリリーとしか踊らないのは皆知っている事である。それに禁止されている訳ではないが、女性から声を掛ける事は稀であるし、友人関係ならともかく、見知らぬ赤の他人が誘う事など先ず無い。
 前代未聞の騒ぎであった。
 レオンは断りたかった。
 だが、リリーの目が(女性に恥をかかせる気ですか?)と、言っている。
 学園では身分の差は無いことになっているし、女性が男性をダンスに誘っても悪くは無い。
 誘って断られたらそれは恥ずかしいだろう。
 だからリリーの言いたい事は解るのだけど……
 だってここでマリナの手を取ってダンスしたらリリーだって他の男性に誘われたり誘ったりしてダンスを踊るだろう。
 それが嫌だ。
 リリーとダンスして良いのは未来の旦那である僕だけなのに!
 レオンは凄い葛藤の末、僕は皇子だ! 断っても良いはず!
 そう決断を出した。

「悪いけど、僕は……」
「どうぞ、行ってらしてください。さぁ手を繋いで」

 レオンの言葉は続けられず、遮ったのはリリーであり、無理矢理手を繋がされ背中を押される。
 リリー!! 君がリリーで無ければこんな事許されないぞ! 
 僕、皇子様なんだぞ!! 
 リリーに笑顔で送り出され、レオンは涙目になりそうだった。
 
「わー、嬉しい。レオン様。楽しみましょう」

 そう言うマリナに引かれ、ステージの中央に行く。
 皆、ハラハラとした視線をよこしている。
 早く一曲終わってくれとレオンは願うのだった。
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