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夏樹と思いがけず付き合い始めた未智だが、恋愛なんて生まれてこの方してこなかった。
恋バナを聞く様な事もなく、雑誌なんかで研究したり、漫画を読んで胸をときめかせたりなんかもして来なかった為、何をして良いやら解らない。
夏樹も初心な未智に合わせてゆっくりと身体を寄せたり、軽くキスをする程度に留めている。
下手したら小学生レベルの恋人関係である。
未智もこのままでは良くないとは思うが、相談出来る相手も居ない為、どうする事も出来ないでいるのだ。
そんなこんなしている内に例のパーティも近づいて来た。
ドレスが出来たと言うので夏樹と一緒に取りに行く。
試着をしてみると丁度いい。
深緑色のドレスは綺麗だが、膝丈なのと胸元か空きすぎな気がして恥ずかしい。
こんな大胆な服は、着たことがない。
「すごく似合ってる」
そう、夏樹が褒めてくれる。
それは嬉しいが、夏樹も自分のタキシードを用意させていたらしく試着していた。
それがあまりにカッコよくて気が引ける。
安易に付き合い始めてしまったが、やっぱり私と夏樹では釣り合いが取れていない。
恥ずかしい。
「俺には何も言ってくれないのか?」
ちよっと拗ねた様に言う夏樹。
「すごくカッコいいですよ」
そう思ったまま伝えると、夏樹は素直に喜んでいた。
「夏樹は良いとして、問題は未智ね」
ヒョイッと突然姿を見せたのは美穂だ。
「美穂さん!」
驚く未智。
「教えた化粧、ちゃんと出来てて偉いわね。でもパーティのメイクはそれじゃ駄目なのよ」
「そうなんですか!?」
「当日は私が色々とセットしてあげるから。特別よ?」
パチッとウィンクしてくれる美穂に照れる未智だ。
「いや、美穂以外の女性従業員で頼む」
「はぁ? 何でよ」
「普通に恋人を異性に触らせたくないだろ」
「付き合う事になったの? 教えてよね。夏樹の痛い片思いだと思っちゃった」
未智を引き寄せる夏樹に笑う美穂。
異性?
「美穂さんて女性では?」
「コイツは女装好きの男」
「心が女性という?」
「心も男の女装好きの男」
「男性の方だったんですね。夏樹の恋人かと思ってました」
「「は?」」
未智と言葉に夏樹と美穂が声を揃える。
「いや、俺は未智一筋だよ!」
「好みで言えば私も未智が好きね」
「おいこら!」
「脈なしなら狙おうかと思っちゃった」
「ぶん殴るぞ?」
残念、という表情の美穂に、拳を握る夏樹だ。
「美穂と俺が恋人だと思ったなら、なんで何も言わずに俺の恋人になったんだ?」
夏樹は疑問を未智にぶつける。
「一番、二番とか? よく解らないけど、正妻と妾の様なものなのかなって」
「そんな訳あるか」
天然にも程が有ると呆れる夏樹と、笑いが止まらない様子の美穂。
未智は自分は二番とか、沢山の恋人の一人にしてもらえたと思っていたので、ビックリして顔を赤くしてしまう。
夏樹は私だけの恋人だったんだと、今更実感して緊張なのか何のか、急に気分が悪くなってきた。
「なんか、吐きそう」
「なんでだよ!! えっ、大丈夫か!?」
「なに、もうそういう感じなわけ? 出来ちゃた的な?」
「まだキス止まりだよ!」
「もう駄目、出る」
「袋、袋!」
慌てる夏樹に、未智は自分の鞄からビニール袋を出す。
結果的には気持ち悪くなっただけで、吐く事は無く、事なきを得た。
夏樹はしばらく心配して未智の背中を撫でていた。
未智は夏樹のお陰で落ち着きを取り戻し、やっぱり好きだなと実感するのだった。
恋バナを聞く様な事もなく、雑誌なんかで研究したり、漫画を読んで胸をときめかせたりなんかもして来なかった為、何をして良いやら解らない。
夏樹も初心な未智に合わせてゆっくりと身体を寄せたり、軽くキスをする程度に留めている。
下手したら小学生レベルの恋人関係である。
未智もこのままでは良くないとは思うが、相談出来る相手も居ない為、どうする事も出来ないでいるのだ。
そんなこんなしている内に例のパーティも近づいて来た。
ドレスが出来たと言うので夏樹と一緒に取りに行く。
試着をしてみると丁度いい。
深緑色のドレスは綺麗だが、膝丈なのと胸元か空きすぎな気がして恥ずかしい。
こんな大胆な服は、着たことがない。
「すごく似合ってる」
そう、夏樹が褒めてくれる。
それは嬉しいが、夏樹も自分のタキシードを用意させていたらしく試着していた。
それがあまりにカッコよくて気が引ける。
安易に付き合い始めてしまったが、やっぱり私と夏樹では釣り合いが取れていない。
恥ずかしい。
「俺には何も言ってくれないのか?」
ちよっと拗ねた様に言う夏樹。
「すごくカッコいいですよ」
そう思ったまま伝えると、夏樹は素直に喜んでいた。
「夏樹は良いとして、問題は未智ね」
ヒョイッと突然姿を見せたのは美穂だ。
「美穂さん!」
驚く未智。
「教えた化粧、ちゃんと出来てて偉いわね。でもパーティのメイクはそれじゃ駄目なのよ」
「そうなんですか!?」
「当日は私が色々とセットしてあげるから。特別よ?」
パチッとウィンクしてくれる美穂に照れる未智だ。
「いや、美穂以外の女性従業員で頼む」
「はぁ? 何でよ」
「普通に恋人を異性に触らせたくないだろ」
「付き合う事になったの? 教えてよね。夏樹の痛い片思いだと思っちゃった」
未智を引き寄せる夏樹に笑う美穂。
異性?
「美穂さんて女性では?」
「コイツは女装好きの男」
「心が女性という?」
「心も男の女装好きの男」
「男性の方だったんですね。夏樹の恋人かと思ってました」
「「は?」」
未智と言葉に夏樹と美穂が声を揃える。
「いや、俺は未智一筋だよ!」
「好みで言えば私も未智が好きね」
「おいこら!」
「脈なしなら狙おうかと思っちゃった」
「ぶん殴るぞ?」
残念、という表情の美穂に、拳を握る夏樹だ。
「美穂と俺が恋人だと思ったなら、なんで何も言わずに俺の恋人になったんだ?」
夏樹は疑問を未智にぶつける。
「一番、二番とか? よく解らないけど、正妻と妾の様なものなのかなって」
「そんな訳あるか」
天然にも程が有ると呆れる夏樹と、笑いが止まらない様子の美穂。
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夏樹は私だけの恋人だったんだと、今更実感して緊張なのか何のか、急に気分が悪くなってきた。
「なんか、吐きそう」
「なんでだよ!! えっ、大丈夫か!?」
「なに、もうそういう感じなわけ? 出来ちゃた的な?」
「まだキス止まりだよ!」
「もう駄目、出る」
「袋、袋!」
慌てる夏樹に、未智は自分の鞄からビニール袋を出す。
結果的には気持ち悪くなっただけで、吐く事は無く、事なきを得た。
夏樹はしばらく心配して未智の背中を撫でていた。
未智は夏樹のお陰で落ち着きを取り戻し、やっぱり好きだなと実感するのだった。
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