40 / 59
40話
しおりを挟む
「え? 誰だ?」
そう問われた漆黒は固まってしまった。
どう見ても結婚式の真っ最中であるし、裏柳は知らない人を見る顔である。
記憶が…… 消えてしまった。
察した漆黒はどうしたら良いのか解らなくなってしまった。
自分を忘れ、白亜と結婚しようとしている裏柳。裏柳の幸せを願うなら、このまま白亜と結婚させてやるべきかもしれない。そう思ってしまったのだ。
連れて帰っても、裏柳との子供は望めない。裏柳が妊娠してしまったら手放さなければならない。その葛藤の中関係を続けても、自分も辛いだけでは無いかと。
一瞬固まってしまった間に、白亜が剣を抜く。
「貴様! 裏柳から手を離せ!!」
そう言って斬りかかってくるのを紙一重でかわした。
「……っ」
兵士達が駆け寄って来るのが見える。
駄目だ。裏柳は連れて行けない。
ならば……
漆黒は視線を動かす。
来賓客の中からΩを一人選び、手を掴むと直ぐに瞬間移動する。
捕まえたΩは悲鳴を上げる暇も無かった。
漆黒は涙を飲む。
裏柳には幸せになって欲しかった。
捕まえて来たΩを小部屋に閉じ込める。
犯すだけなので、ベッドしかない部屋である。
閉じ込められたΩは「イヤァァーー出してーー」と泣き喚いていた。咄嗟にでも繁殖能力の高いΩを選んだ漆黒。良く見ずに掴んだが多分、雌だろう。タイプでも無いし、抱けそうにない。モノが立ちそうに無かった。
裏柳を迎えに行ったはずの漆黒が、見知らぬΩを連れ去って来た上に、部屋に閉じ込めるだけ閉じ込め、自分も自室に閉じこもってしまった。羊達はもう意味が解らない。
どう言う事だと問い詰めたいが、漆黒は意気消沈しており、誰も話しかけて来るなオーラを放っている。
ペットの烏だけが近づいて、パサパサ飛び回り、ツンツン突っついたりしていた。
「そう怒るな。お前も裏柳を気に入っていたからな連れて帰れなくて悪かった」
そう烏に謝る。
だが、裏柳は本来結婚する相手だった男と無事に結婚出来るのだ。
白亜は白の王国の王である。幸せにしてくれるはずだ。
裏柳は自分が出来損ないのΩであり、妊娠も出来やないかも知れないと恐れていたが、妊娠出来るならばΩの本能としても妊娠したい筈なのである。
ここに置いておくならば避妊させなければならないし、万が一妊娠してしまったらと漆黒は常に不安だっただろう。妊娠させて貰えない裏柳は常に不満を抱える事になる。
裏柳が居ると言うのに他のΩを孕ませる為に抱くと言うのも、やはり気が進まないだろうし、裏柳にも嫌な思いをさせてしまう。
どっち道、何処かで破綻してしまっていた。
そんな薄氷の様な脆い関係を続けても、お互い幸せになれる筈は無かったのだ。
これで良かった。
それで良かったんだ。
そう問われた漆黒は固まってしまった。
どう見ても結婚式の真っ最中であるし、裏柳は知らない人を見る顔である。
記憶が…… 消えてしまった。
察した漆黒はどうしたら良いのか解らなくなってしまった。
自分を忘れ、白亜と結婚しようとしている裏柳。裏柳の幸せを願うなら、このまま白亜と結婚させてやるべきかもしれない。そう思ってしまったのだ。
連れて帰っても、裏柳との子供は望めない。裏柳が妊娠してしまったら手放さなければならない。その葛藤の中関係を続けても、自分も辛いだけでは無いかと。
一瞬固まってしまった間に、白亜が剣を抜く。
「貴様! 裏柳から手を離せ!!」
そう言って斬りかかってくるのを紙一重でかわした。
「……っ」
兵士達が駆け寄って来るのが見える。
駄目だ。裏柳は連れて行けない。
ならば……
漆黒は視線を動かす。
来賓客の中からΩを一人選び、手を掴むと直ぐに瞬間移動する。
捕まえたΩは悲鳴を上げる暇も無かった。
漆黒は涙を飲む。
裏柳には幸せになって欲しかった。
捕まえて来たΩを小部屋に閉じ込める。
犯すだけなので、ベッドしかない部屋である。
閉じ込められたΩは「イヤァァーー出してーー」と泣き喚いていた。咄嗟にでも繁殖能力の高いΩを選んだ漆黒。良く見ずに掴んだが多分、雌だろう。タイプでも無いし、抱けそうにない。モノが立ちそうに無かった。
裏柳を迎えに行ったはずの漆黒が、見知らぬΩを連れ去って来た上に、部屋に閉じ込めるだけ閉じ込め、自分も自室に閉じこもってしまった。羊達はもう意味が解らない。
どう言う事だと問い詰めたいが、漆黒は意気消沈しており、誰も話しかけて来るなオーラを放っている。
ペットの烏だけが近づいて、パサパサ飛び回り、ツンツン突っついたりしていた。
「そう怒るな。お前も裏柳を気に入っていたからな連れて帰れなくて悪かった」
そう烏に謝る。
だが、裏柳は本来結婚する相手だった男と無事に結婚出来るのだ。
白亜は白の王国の王である。幸せにしてくれるはずだ。
裏柳は自分が出来損ないのΩであり、妊娠も出来やないかも知れないと恐れていたが、妊娠出来るならばΩの本能としても妊娠したい筈なのである。
ここに置いておくならば避妊させなければならないし、万が一妊娠してしまったらと漆黒は常に不安だっただろう。妊娠させて貰えない裏柳は常に不満を抱える事になる。
裏柳が居ると言うのに他のΩを孕ませる為に抱くと言うのも、やはり気が進まないだろうし、裏柳にも嫌な思いをさせてしまう。
どっち道、何処かで破綻してしまっていた。
そんな薄氷の様な脆い関係を続けても、お互い幸せになれる筈は無かったのだ。
これで良かった。
それで良かったんだ。
1
お気に入りに追加
518
あなたにおすすめの小説
傾国の美青年
春山ひろ
BL
僕は、ガブリエル・ローミオ二世・グランフォルド、グランフォルド公爵の嫡男7歳です。オメガの母(元王子)とアルファで公爵の父との政略結婚で生まれました。周りは「運命の番」ではないからと、美貌の父上に姦しくオメガの令嬢令息がうるさいです。僕は両親が大好きなので守って見せます!なんちゃって中世風の異世界です。設定はゆるふわ、本文中にオメガバースの説明はありません。明るい母と美貌だけど感情表現が劣化した父を持つ息子の健気な奮闘記?です。他のサイトにも掲載しています。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
虐げられた兎は運命の番に略奪溺愛される
志波咲良
BL
旧題:政略結婚させられた僕は、突然現れた運命の番に略奪溺愛される
希少種であるライラック種の兎獣人のオメガ・カノンは、政略結婚により、同じライラック種のアルファ・レイに嫁ぐが、いわれのない冷遇を受け、虐げられる。
発情期の度に義務的に抱かれ、それでも孕むことのないその身を責められる日々。
耐えられなくなったカノンは屋敷を出るが、逃げ出した先にはカノンの運命の番である虎獣人のアルファ・リオンがいた。
「俺と番になって、世界一のお尋ね者になる勇気はあるか?」
肉食と草食。禁断を超えた愛の行方は――
☆感想もらえると、非常に喜びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる