(完結)魔王と従者

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30話

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「裏柳、大丈夫か?」
 漆黒は心配そうに裏柳の羽根を撫でていた。
 無事に城まで戻って来た裏柳と漆黒。疲れてしまってベッドに入った。
 寝ている内に漆黒は元の姿に戻れたが、裏柳はまだフラミンゴのままである。
 少し熱っぽくダルい様子で息も荒くなっていた。
 漆黒は心配になり、直ぐに鹿を連れてくると、裏柳を見せる。
 鹿は熱を計ったり、聴診器を当てたり色々検査した結果、どうやら薬がなかなか抜けていない様で、元に戻れるのは明日の朝頃になってしまうだろう事と、裏柳は発情してしまった様だと言う事である。
 取り敢えず、様子を見ると言う事で、鹿は部屋を出ていった。
 漆黒は心配で裏柳に着いている。
 発情した裏柳の香りが漂いはじめ、漆黒もクラクラするが、何とか誤魔化して様子を伺っていた。
「漆黒……」
「気がついたか? ごめんな」
 まさかフラミンゴにしてしまったせいで発情し、苦しませてしまうとは思いも付かなかった。漆黒は申し訳無い。
 だが肉食魔物を選んでしまうと、本能に負け、鳥の長や他の草食魔物に襲いかかってしまう恐れも万が一だが有った為、草食魔物にするしか無かったのである。
「あ、俺…… 発情してる?」
 目を開けた裏柳は涙を目に浮かべながら漆黒を見つめる。
「ああ、発情しやすい鳥の影響が出たのかも知れない」
「今、セックスしたらどうなるんだろうな」
「うむ、解らないが…… 多分、他の生物間と人間では構造が違いすぎて子供は成せないはずだ。何も出来ないと思うぞ」
 まぁ、哺乳類だった場合は万が一も有るかも知れないが、流石に哺乳類と鳥類や爬虫類では流石に何も出来ないだろう。
「そうなんだ……」
 ふーんと、何かを考える様子の裏柳。
 なんでこんな話をするのだろうか、漆黒には意味が解らないが、ただでさえ発情中の裏柳の香りに耐えていると言うのに『セックスしたら』等と明け透けなセリフを聞いてしまうとどうも下半身がその気になってしまう。
「ヤッてみない?」
「何をだ?」
「セックス」
「え?」
 裏柳の申し出に固まってしまう漆黒。 
「鳥だから嫌なのか?」
「いや、良いよ! 鳥の裏柳も可愛いよ!」
 そう言う問題じゃない。
 裏柳が鳥だからとか、どうでも良い事である。
「ねぇ、お願い。体が熱くて……」
「だけど……」
「俺達、夫婦だろ? 夫婦って夜の営みするもんだろ? なんで何もしないんだよ!!」
 裏柳はイライラした様子で布団を投げ飛ばすと、起き上がり、漆黒を睨みつけた。
 愛し合う夫婦が一つのベッドで寝るのだから、そう言う展開になる事もある筈である。だが漆黒は裏柳が発情してしまったあの日以降、抱いてくれない。
 一緒に寝るだけである。
 自分はそんなに魅力が無いのかと、流石の裏柳も悲しくなった。
 番にもしてくれないし、結局、何も教えてくれないし、やっぱり俺の事なんて嫌いなんだーー!
 負の感情が押し寄せる裏柳は寂しくて泣き出してしまった。
「泣かないでくれ裏柳」
 ヨシヨシと頭を撫でて、優しく瞼にキスする漆黒。
「キスは唇が良い」
 そう、拗ねた様に言う裏柳。
 正直可愛い。
 漆黒は困った様に微笑み、裏柳の唇にキスをする。
 口付けをしてしまうともう止まらない。
 気づけばベッドに押し倒してしまっていた。
 以前手を出してしまったのも裏柳が発情した時であった。
 だから次は平常時に、優しいゆっくりした甘いセックスをしたいと思っていたのだ。
 激しくなるとうなじに噛み付いてしまいそうになるのも怖い。
 だが、はじまってしまえば止められない。
 困った事に漆黒はヘタレであるので、平常時に上手くセックスにお誘い出来ないでいたのである。
 漆黒がモタモタしていたら、こんな事になってしまった。
 あーあ。
 俺はどうしてこんなにもヘタレのだろうと嘆くが、どうしようもない。
 もう、止まれなくなってしまった。 
 もう、ただただ裏柳が可愛くて、エッチで堪らない。
 今すぐ孕ませたい。
 番にしてしまいたい。
 そんな衝動に駆られる。
 理性と本能に揺さぶられつつも、何とか理性を繋ぎ止め。
 出来るだけ優しいセックスを心がけ、噛まない様に注意するのだった。
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