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84話
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体がザワザワして気持ち悪い。
沢山の蔦に体を這われ、腕や足を縛り上げられ、怖いし痛いし気持ち悪かった。
近くで、ジュノさんの悲鳴が聞こえている。
霧が深くてよく見えなかったけど、ジュノさんは大きなキノコに襲われている様子だった。
ジュノさんはキノコ何をされているの?
苦しそうな声が聞こえる。
誰か助けて!
笑美さん! 笑美さん!
「翠さん!!」
名前を呼ばれ、気づくと笑美さんが俺を抱きしめてくれていた。
俺は嬉しかった。
ジュノさんより先に自分に駆け寄って助けてくれた事が……
俺はジュノさんを心配していたのに……
ジュノさんの方がきっと酷い目にあっている。
自分より早くジュノさんを助けてあげてと思うのに、体は笑美さんを強く抱きしめて離してあげられなかった。
俺はなんて酷い奴なんだろう。
ジュノさんは良い人で、笑美さんの大事な人で、俺にとっても先生であり、友人の様な人なのに……
それなのに、俺はジュノさんより笑美さんが自分を優先してくれた事に喜んで、抱きついて離さなかったのだ。
俺はきっと根っからの性悪で、本当に最低野郎だ。
きっと内心、笑美さんも俺に呆れてる。
ほら、気づけばまた自分の心配ばかり。
俺って、本当にどうしようも無いクソ野郎だ。
フッと、視界が開ける。
フカフカで温かい。
ここは笑美さんが与えてくれた俺のベッド?
誰かの胸元が目の前にある。
視線を上げた。
綺麗な寝顔の笑美さんが見えた。
笑美さん?
俺の事抱きしめててくれたの?
ずっと?
ジュノさんの所に行かないで、ずっと俺の側に居てくれた。
それか嬉しくて、翠はまた自己嫌悪に陥る。
笑美さんにとってジュノさんは大事な人だけど、それより俺を大事にしてくれているの?
俺はジュノさんの代わりじゃないの?
笑美さんにとって俺って何?
色んな感情が入り混じって翠の頭はパンクしそうである。
「ん……」
笑美が小さい声を漏らす。
目が覚めたのかもしれない、翠はつい寝たフリをしてしまった。
笑美は優しく翠の頭を撫でる。
起きて、俺の頭撫でてくれるんだ!
そう思うと翠はまた嬉しくなる。
クスクス
笑美の控えめな笑い声が聞こえた。
「何故、寝たフリをしているんです?」
そう聞かれて恥ずかしくなった。
狸寝入りがバレバレだった。
「お、おはようございます。隣で笑美さんが寝ていてビックリしたんです」
「寝るつもりは無かったんですけどね」
フフっと綺麗に笑う笑美。
「夕食にしましょうか。それともこのまま朝まで寝ちゃいます?」
「んー、ホットココアが飲みたいです」
あんな目にあったばかりで、とても食欲は無かった。
笑美のホットココアを飲んだら少し落ち着ける気がした。
「解りました。入れて来ますね」
笑美は、ベッドを降りる。
「あっ……」
急に寂しく感じ、思わず笑美の服の裾を掴んでしまう翠。
「直ぐに戻って来ますよ」
そう言ってまた頭を撫でてくれる。
ジュノさんの所に行かない?
ずっと俺の側に居てくれる?
「……直ぐに戻って来て下さいね」
念を押すように言う翠。
笑美はフフと微笑で頷く。
翠が裾を離してくれたので、部屋出ていった。
きっと笑美さんはジュノさんより僕の方が幼げでか弱いから側に居てくれるだけなんだ。
そうに決まっているけど、俺が今、笑美さんの一番側に居て、特別扱いしてくれるのが凄く嬉しい。
笑美さんとジュノさんは何千年も生きてずっと側に居られるのだから、ほんの逸時だろう自分の生きている間は側に居てくれるだろうか。
でも、笑美さんはずっと今の若々しいままだけど、俺は直ぐに歳を取ってしまうから、可愛がってくれるのはほんの数年かもしれない。
そもそも笑美さんに飲ませてあげられる精液だってどのくらいまでまともな物が出せるか解らない。
俺、もう29な訳だし……
35ぐらいまでは一緒に居てくれるかな?
こうなったら笑美さんに飽きられるまではとことん甘えてみようかな。
いつまで笑美さんの一番で居られるか解らないけど、きっと今は一番可愛がってくれてるのは俺の筈!
「おまたせしました~。えっと、何故ガッツポーズを決めてるんですか?」
思いっきりガッツポーズを決めてしまっていたらしい。
戻って来た笑美に見られ、恥ずかしくなる翠だ。
「いえ、あ、ホットココア有難うございます!」
ホカホカのホットココアを笑美から受け取る翠。
部屋のソファーに座って一緒に飲む。
やっぱり笑美さんの入れてくれるホットココアは心が安らぐ。
それに隣に座った笑美さんがニコニコ微笑んでくれているから、もっと気持ちが安らいだ。
先の事を考えるのは止めよう。
鬼に笑われるらしいから。
笑うのは笑美さんが良い。
ホットココアを飲みながら、笑美鑑賞を楽しむ翠と、そんか翠鑑賞を楽しむ笑美だった。
沢山の蔦に体を這われ、腕や足を縛り上げられ、怖いし痛いし気持ち悪かった。
近くで、ジュノさんの悲鳴が聞こえている。
霧が深くてよく見えなかったけど、ジュノさんは大きなキノコに襲われている様子だった。
ジュノさんはキノコ何をされているの?
苦しそうな声が聞こえる。
誰か助けて!
笑美さん! 笑美さん!
「翠さん!!」
名前を呼ばれ、気づくと笑美さんが俺を抱きしめてくれていた。
俺は嬉しかった。
ジュノさんより先に自分に駆け寄って助けてくれた事が……
俺はジュノさんを心配していたのに……
ジュノさんの方がきっと酷い目にあっている。
自分より早くジュノさんを助けてあげてと思うのに、体は笑美さんを強く抱きしめて離してあげられなかった。
俺はなんて酷い奴なんだろう。
ジュノさんは良い人で、笑美さんの大事な人で、俺にとっても先生であり、友人の様な人なのに……
それなのに、俺はジュノさんより笑美さんが自分を優先してくれた事に喜んで、抱きついて離さなかったのだ。
俺はきっと根っからの性悪で、本当に最低野郎だ。
きっと内心、笑美さんも俺に呆れてる。
ほら、気づけばまた自分の心配ばかり。
俺って、本当にどうしようも無いクソ野郎だ。
フッと、視界が開ける。
フカフカで温かい。
ここは笑美さんが与えてくれた俺のベッド?
誰かの胸元が目の前にある。
視線を上げた。
綺麗な寝顔の笑美さんが見えた。
笑美さん?
俺の事抱きしめててくれたの?
ずっと?
ジュノさんの所に行かないで、ずっと俺の側に居てくれた。
それか嬉しくて、翠はまた自己嫌悪に陥る。
笑美さんにとってジュノさんは大事な人だけど、それより俺を大事にしてくれているの?
俺はジュノさんの代わりじゃないの?
笑美さんにとって俺って何?
色んな感情が入り混じって翠の頭はパンクしそうである。
「ん……」
笑美が小さい声を漏らす。
目が覚めたのかもしれない、翠はつい寝たフリをしてしまった。
笑美は優しく翠の頭を撫でる。
起きて、俺の頭撫でてくれるんだ!
そう思うと翠はまた嬉しくなる。
クスクス
笑美の控えめな笑い声が聞こえた。
「何故、寝たフリをしているんです?」
そう聞かれて恥ずかしくなった。
狸寝入りがバレバレだった。
「お、おはようございます。隣で笑美さんが寝ていてビックリしたんです」
「寝るつもりは無かったんですけどね」
フフっと綺麗に笑う笑美。
「夕食にしましょうか。それともこのまま朝まで寝ちゃいます?」
「んー、ホットココアが飲みたいです」
あんな目にあったばかりで、とても食欲は無かった。
笑美のホットココアを飲んだら少し落ち着ける気がした。
「解りました。入れて来ますね」
笑美は、ベッドを降りる。
「あっ……」
急に寂しく感じ、思わず笑美の服の裾を掴んでしまう翠。
「直ぐに戻って来ますよ」
そう言ってまた頭を撫でてくれる。
ジュノさんの所に行かない?
ずっと俺の側に居てくれる?
「……直ぐに戻って来て下さいね」
念を押すように言う翠。
笑美はフフと微笑で頷く。
翠が裾を離してくれたので、部屋出ていった。
きっと笑美さんはジュノさんより僕の方が幼げでか弱いから側に居てくれるだけなんだ。
そうに決まっているけど、俺が今、笑美さんの一番側に居て、特別扱いしてくれるのが凄く嬉しい。
笑美さんとジュノさんは何千年も生きてずっと側に居られるのだから、ほんの逸時だろう自分の生きている間は側に居てくれるだろうか。
でも、笑美さんはずっと今の若々しいままだけど、俺は直ぐに歳を取ってしまうから、可愛がってくれるのはほんの数年かもしれない。
そもそも笑美さんに飲ませてあげられる精液だってどのくらいまでまともな物が出せるか解らない。
俺、もう29な訳だし……
35ぐらいまでは一緒に居てくれるかな?
こうなったら笑美さんに飽きられるまではとことん甘えてみようかな。
いつまで笑美さんの一番で居られるか解らないけど、きっと今は一番可愛がってくれてるのは俺の筈!
「おまたせしました~。えっと、何故ガッツポーズを決めてるんですか?」
思いっきりガッツポーズを決めてしまっていたらしい。
戻って来た笑美に見られ、恥ずかしくなる翠だ。
「いえ、あ、ホットココア有難うございます!」
ホカホカのホットココアを笑美から受け取る翠。
部屋のソファーに座って一緒に飲む。
やっぱり笑美さんの入れてくれるホットココアは心が安らぐ。
それに隣に座った笑美さんがニコニコ微笑んでくれているから、もっと気持ちが安らいだ。
先の事を考えるのは止めよう。
鬼に笑われるらしいから。
笑うのは笑美さんが良い。
ホットココアを飲みながら、笑美鑑賞を楽しむ翠と、そんか翠鑑賞を楽しむ笑美だった。
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